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    kisaragikirara

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    kisaragikirara

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    ミレ霧です。謎軸、クロエが遊びに来ます。アルテナが変態。

    ハロウィン 2024 ぴんぽん。ミレイユと霧香の暮らす一室に、若干音割れしたベルの音が響いた。子供たちはもう寝静まる、大人と酒の時間。二人はそろそろお風呂に入ろうとしていた頃で、ミレイユは不機嫌そうにドアへと向かう。霧香は胸元に手を差し込み、壁の後ろに隠れた。
    「はい、どうかしましたか」
    「ごめんください」
    「きゃっ」
    聞き覚えのある声とミレイユの可愛らしい悲鳴。霧香は警戒を解いて小走りで玄関へ走った。
    「あ、どうも お邪魔してます」
    「クロエ……」
    霧香を見るなり待ってましたという風ににっこり笑うクロエ。
    「……あんた、何しに来たのよ。こっちはもう寝るところだけど?」
    「トリックオアトリート」
    「は?」
    イライラモードのミレイユの頭にこてん、とはてなマークが落ちてくる。霧香もぽや〜っとしていて、よく分かっていないようだった。
    「お菓子くれなきゃ、いたずらですよ」
    「……今日はハロウィンだったわね」
    はろ、うぃん……そう霧香が復唱すると、クロエはまた嬉しそうに言った。
    「はい、ハロウィン」
    「ちょっと!」
    それからどこからか個包装のクッキーを取り出し、霧香に握らせる。ミレイユの制止は華麗にかわした。ふふ、とクロエは満足気に笑う。
    「ありがとう…」
    「毒でも入っていないでしょうね」
    「まさか!これはアルテナが私にくれたんだもの」
    ちっとも理由になっていない。はぁ、とミレイユがついたため息に紛れ、さくさくという音が聞こえてきた。
    「霧香…」
    再び、ため息。まるでハムスターやリスのように、早速クッキーをちびちび食べている。
    「……美味しい」
    「それはどうも」
    この子ってば、私がいないときっとすぐ食中毒になるわ……。ミレイユはこの十六歳児にこれから食育を徹底することに決めた。
    「ところで、トリックオアトリート」
    「何よ」
    次はクロエがじっとミレイユを見つめる。霧香とはまた違うタイプのじっとりした困る視線だった。
    「お菓子くれないんですか?いたずらしますよ」
    「……ハイハイ、いいわよ どうせお菓子なんて今ここにはないんだから」
    ミレイユは嘘をついていない。本当に今この家には何の食べ物もなかった。今日で食べ尽くしてしまったのだ。もういいから早くお風呂に入りたい。だんだんそういう気持ちになってきて、半ばいたずらを諦める。
    「じゃ、これ着てください」

    「あんたねぇ……」
     顔を真っ赤にして、今にもクロエに殴りかからん勢いだった。普段から露出の激しい太ももがさらに晒され、頭には悪魔の角、背中には蝙蝠の羽、腰にはぬらぬら動くしっぽ。
    「さぁ……私の趣味じゃありませんよ、アルテナに持たされたものなので」
    「このやろ……!」
    クロエは全くミレイユのことを見ない。ミレイユは怒り心頭だった。本当にくだらない!しかし、霧香もクロエもお子ちゃまで、ミレイユの超・Hな仮装についてはまったく何の感想も抱かなかった。ただ霧香がぽつりと、寒そうだね、とだけ。
    「あんたもあんたよ!お菓子もらうだけもらって!」
    せめてどちらかに笑ってもらえれば良かったものの、きょとんと見つめられては霧香に八つ当たりしなきゃやっていけない。
    「他にもありますよ」
    霧香がなんとかミレイユのサキュバス攻撃を避け続ける中、にんまり笑ってクロエがまたマントの中を漁る。

    「あんたねぇ……!!」
     今度は胸ぐらを掴まれている。
    「これ…クロエだよね?」
    「はい」
    アルテナは私たち二人が真のノワールであると言いましたから。そう言ってクロエのひらひらしたマントとぴちぴちのスーツを身につけた霧香の頬をさする。さながらマーキングであった。
    「気持ち悪いわね!ちょっと…出なさい!」
    どかっ。
    「きゃあ」
    羞恥心と怒りで瞬間的にクロエの能力を上回ったミレイユ。クロエはたちまち放り出され、空に瞬くお星様となったのだった……。

    「アルテナ、ただいま」
     ぼろぼろになったクロエが荘園へ帰る。マントは破け木の枝が刺さっており、奇しくも仮装のようだった。
    「無事に渡せたみたいね」
    マントの土埃やら葉っぱやらを払いながら、クロエを寝室へ押しやるアルテナ。
    「あの子とあの子のお友達、どうしているでしょう」
    「……クロエはもう寝る時間よ」
    分かりました、としょんぼりしてクロエがいう。最後にアルテナをそっと見つめて、最後の抵抗をする。
    「……おやすみなさい、アルテナ」
    「おやすみ」
    そうしてクロエが眠ったあと、アルテナは秘密の部屋に駆け込む。大きなテレビをつけると……そこには、愛を育む霧香とミレイユの姿。
    「苗木には光を、水を、そして、媚薬入りのクッキー……」
    うっとり微笑むアルテナなのであった。

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    kisaragikirara

    DOODLE※本編後&同棲続行中
    冬服を買いに行く二人のお話。
    冬服を買いに行こう!(ミレ霧) 水色のキャミソール、穴の空いてしまった白いパーカー、デニムのノースリーブワンピース。
    「霧香、あんたってほんとに冬服持ってないわけ?」
    クローゼットに頭を突っ込んでミレイユは話す。ん、といって霧香はちょっとだれてしまったピンクのニットとクリーム色のニットをミレイユの前に突き出した。
    「これ以外は?」
    そうミレイユが詰めると霧香はさながらしょんぼりした子犬のようになって、だめ……?というふうに上目遣いで見つめてくる。ミレイユはこの目に弱い。
    「……駄目!駄目よ!」
    霧香に、というよりかは自分自身への叫びだった。一昨日、霧香の冬服がないんじゃないかというのに気がついたミレイユにより提案されたお買い物。霧香はどうやら寒いのがあんまり好きじゃないらしく、それから今日までやだやだと渋っている。こんなにかわいくおねだりされると、どうせ家から出たくないだけなのだけれど、もしかしたらあたしと家でいちゃいちゃしたいのかなとか、今日はそういう気分なのかなとか考えてしまって、耳の端が熱くなってくる。頬まで真っ赤になる前に慌てて妄想をかき消した。
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    kisaragikirara

    DOODLE※最終話から二年後、二人で同棲&お付き合いしてます
    いい夫婦の日に合わせて書いたけどぜーんぜん間に合わなかったやつです。
    苺の花言葉は「幸福な家庭」だそうで、相互さんに紅茶の色々教えてもらったのですが上手く活かせずしょんぼり……
    というか全然夫婦とかじゃないかも。そーいうことに興味が出始めた学生カップルみたいになっちゃいました。ミレイユが左かも怪しいです。
    いい夫婦の日(ミレ霧) 冷たい風が強く窓ガラスを叩く昼下がり。霧香は頬杖をついてカタログをぺらぺらと捲る。その横に湯気の立ちのぼる紅茶が置かれた。苺の甘い香りが冬の冷たさと混ざり合う。
    「霧香、そこはあんたにはまだ早いわよ」
    霧香が見ているのは有名なアクセサリー店の結婚指輪特集だった。ベビーピンクの幸せなページにシルバーの輪っかが所狭しと並んでいる。霧香はその中の一つ、小ぶりで細身のものを指さした。
    「これ可愛い」
    「ふうん、なかなかいいデザインじゃない」
     あれから二年の月日が経った。二人にはもう暗殺以外の道なんて残っていないから、まだ相変わらず銃を握る日々が続いている。けれど、霧香は前よりよく笑うようになったし、ミレイユはどこか丸くなった。本棚には世界の名作が分かりやすく書き直された児童書の一角ができ、食器棚には猫の絵が入った皿やマグカップが増えた。
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