竜の鱗 マトリフは魔王軍との戦いの後、療養のためにパプニカに滞在していた。暫くの間はベッドから動くなと言われ、退屈な日々を過ごしている。
そのマトリフの退屈をどこかで見ていたように、見舞客がやってきた。それはカールに帰ったはずのアバンで、ドアからではなく窓からやって来た。目を丸くさせるマトリフに、アバンは無作法ですみませんと小さく頭を下げた。
「なんだよ、もうルーラができるようになったのか」
「ようやく、です」
正面から城を訪ねれば過剰な接待に合うとわかっていたアバンは、ルーラを使ってこっそりとマトリフに会いに来たという。
ちょうど部屋にはマトリフしかいなかった。久しぶりの話し相手につい口が軽くなり、マトリフはとりとめなく言葉を交わした。暫くそうしてから、これは枕の下に隠している魔導書を渡す良い機会だと思った。
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