❏設定❏
・イベント「願いは、いつか朝をこえて」で、まふゆが東雲家に泊まりに来る話が元ネタ
・イベントではまふゆがお風呂から上がってすぐに絵名が入る流れになっていますが、話の都合により流れを変更しています
❏本文❏
~脱衣所~
まふゆ「……」
まふゆ:脱衣所で服を脱ぎながら、夕飯の時の出来事を思い出している
まふゆ(どうしてだろう、あの時の胸が軽くなる感じが、まだ残ってる……)
まふゆ「……」
まふゆ:脱ぎ終えた服を丁寧に畳むと、バスタオルなどが入っているチェストの上に置く
まふゆ(お風呂、一番に入らせてもらってるし、早く入ってすぐに上がらないと……)
~数十分後~
まふゆ(今日のことを考えてたら、思ったより時間がかかっちゃったな……)
まふゆ:浴室から脱衣所に戻り、濡れた体をタオルで拭いている
まふゆ(結局、私の家と違って絵名の家では冷たい感じがしない理由は、分からなかった……)
~彰人の部屋~
彰人「……げっ、もうこんな時間かよ。珍しく勉強しようと思ってたのに、寝ちまってた」
彰人:教科書を開いた瞬間から、記憶が飛んでんな……などと思いながら時計を見つめ、独り言を呟く
彰人「……つーか、なんで勉強なんかしようと思ってたんだ、オレ」
彰人:寝ぼけているのか、まふゆが家に泊まりにきたことや、赤点ギリギリの成績の話をしたことをすっかりと忘れている様子でそう呟くと、部屋を後にする
彰人「……ったく、絵名のやつ、先に風呂に入るとうるせえからわざわざ呼びに行ってやったのに、なんで寝てやがんだよ」
彰人:廊下を歩きながら不機嫌そうな態度で文句を言い、絵名より先にお風呂に入ってしまおうとお風呂場まで来るとドアを開ける
まふゆ「……!」
彰人「……!」
彰人・まふゆ:はたと目が合うと同時に硬直する
彰人「あ……」
まふゆ「……あ、え、えっと……」
彰人:突然目の前に飛び込んできたまふゆの一糸まとわぬ姿に頭が真っ白になると、その場に硬直したままの状態でまふゆの体に目が釘付けになる
まふゆ:どういう反応をすれば正解なのか分からず困惑したような作り笑顔を浮かべると、とっさに持っていたタオルで体を隠す
彰人「……!」
彰人:ハッと我に返ると同時に、お風呂場のドアを勢いよく閉める
彰人「あ、あの……朝比奈さん……その、本当にすみませんでした……!」
彰人:すぐにこの場を離れるべきかと思いながらも、ドア越しに謝罪する
まふゆ「い、いえ……もうお風呂から上がっていると思われていたんですよね、きっと……だとしたら、つい長風呂をしてしまった、私がいけないので……」
彰人「それは……」
彰人:まふゆが家に泊まりに来ていたことをすっかりと忘れていたことを正直に話すか迷っていると、うたた寝から目を覚ました絵名がいつまで経ってもお風呂から上がってこないまふゆを心配して様子を見に来た場面に遭遇してしまい硬直する
絵名「あ、彰人、あんた……もしかして、まふゆのお風呂を覗いたの!? サイテー!」
彰人「……はあ!? 違っ……い、いや……じ、実際は違わねえ、けど……」
絵名「やっぱり覗いたんじゃない!」
まふゆ「あ……え、えっと……絵名……わ、私は、その……大丈夫、だから……」
絵名「まふゆ、あんたね……全然大丈夫じゃないでしょ!」
絵名:彰人を突き飛ばすと、お風呂場のドアの前に立つ
絵名「まふゆ、もう服は着てるの?」
まふゆ「まだ……」
絵名「そう……だったら、彰人は私が追い払っておくから、早く着て出てきなさい」
まふゆ「うん……」
彰人「……」
絵名「……」
絵名:どうしたらいいか分からない様子で呆然と立ちつくしている彰人を振り返る
絵名「彰人、あんたがわざと覗いたわけじゃないのは分かってるけど、多分まふゆはショックを受けてるだろうから、今はそっとしておいてくれる?」
彰人「あ、ああ……」
~数時間後~
彰人「……」
彰人:まふゆのお風呂を覗いてしまってから、自己嫌悪に陥っている様子で数分おきに溜息をついている
彰人(例えわざとじゃなくても、同年代の男に風呂を覗かれるなんて、絶対にトラウマだろうな……はあ、ったく……絵名とは仲良くしてるみてえだし、今後も会う機会があると思うが……その時、オレはどうしたら……)
彰人:突然まふゆの体を思い出して、かあっと顔を赤くする
彰人「くそ……キッチンに行って、飲み物を取ってくるか……」
彰人:自分の部屋から出る
彰人・まふゆ「……!」
彰人・まふゆ:廊下でバッタリと遭遇してしまい硬直する
彰人・まふゆ「あ……」
彰人・まふゆ:お互いに何かを喋ろうとして口を開くも、すぐに口をつぐんでしまう
彰人「……」
まふゆ「……」
まふゆ:気まずそうに視線をそらしてしまった彰人をじっと見つめるも、すぐに作り笑顔を浮かべる
まふゆ「あの、さっきのことは気にしないでください……」
彰人「……!」
まふゆ「覗くつもりはなかったって、ちゃんと分かっていますから」
彰人「あ、ありがとうございます……その、今は、なんで廊下に……?」
彰人:まふゆが言うように決して覗くつもりはなかったものの、気まずさに耐えかねて黙り込んでしまった自分と違い精一杯フォローしようとしてくれていることや、先ほどまふゆの体を思い出して赤面してしまったことに対して罪悪感を覚えると、誤魔化すように話を変える
まふゆ「え、えっと……お手洗いを借りようと思って……」
彰人「……!」
彰人:お風呂の時の話題を避けようとして問いかけた質問に対して、別の意味でデリケートな返答が返ってきてしまい、今のはまずい質問だったかと表情を硬くする
まふゆ「……」
彰人「……」
まふゆ:再び訪れた気まずい沈黙の中で、うっすらと微笑みを浮かべると口を開く
まふゆ「あの、絵名は寝てしまったので……こんな時間ですけど、一緒に勉強をしませんか?」
彰人「は? ……勉強、ですか?」
まふゆ「はい、夕飯の時に話しましたよね」
彰人「……」
彰人:夕飯の時に勉強の話になり、母親が絵名達にも教えてもらえないかしらとまふゆに言っていたことを思い出すも、なぜ今そんなことを言い出すのかと怪訝な表情を浮かべる
まふゆ:彰人が考えていることが分かったのか、困ったような笑顔を浮かべる
まふゆ「すみません、急に変なことを言い出して……でも、このままお別れすると、この先ずっと気まずい感じになっちゃいそうなので……」
彰人「ああ、なるほど……すみません、本当はオレがフォローするべきなのに、逆にフォローされてしまってばかりで……」
まふゆ「ふふ、大丈夫ですよ。じゃあ、お手洗いに行ってくるので、少しだけ待っていてくださいね」
彰人「分かりました」
~数分後~
まふゆ「ここは、さっき教えた解き方で大丈夫ですよ」
彰人「なるほど……教え方が上手いっすね、朝比奈さん」
まふゆ「そんなことは……」
まふゆ:謙遜をしながら、はにかみ笑いを浮かべる
彰人「いや、本当に……」
彰人:先ほど教えてもらった解き方が書かれているノートを見ようとまふゆの手元に視線を向けるも、自然とまふゆの胸に目がいってしまい、一瞬で赤面すると同時にパッと顔を背ける
まふゆ「……」
彰人「……」
まふゆ「あの……」
彰人「朝比奈さん、すみません……やっぱり、勉強はまた今度……」
まふゆ「……」
まふゆ(絵名の弟だから、このまま放置するのは良くない……と、思う。だけど、一体どうすれば……)
まふゆ:彰人が顔を背けたことで無表情に戻るも、すぐに何かを思いついたような表情に変わると、再び作り笑顔を浮かべる
まふゆ「彰人くん、今から凄く失礼なことをするから、先に謝っておくね……ごめんなさい」
彰人「……は?」
まふゆ:彰人が着ている部屋着の裾を掴むと、一気に首元まで捲り上げる
彰人「!?」
まふゆ「……」
まふゆ:無表情に近い表情で彰人の素肌をじっと眺めてからニコリと笑い、すぐに彰人の服を元の状態に戻すと、両手で掴みしわになった部分を丁寧に手で伸ばす
まふゆ「突然、すみません……でも、私の体を見てしまったことが、ずっと気になっているみたいなので……これで、おあいこ……じゃ、駄目ですか?」
彰人「……」
彰人:しばらく呆気にとられたようにぽかんとしてから、状況を呑み込めた途端に怪訝な表情を浮かべる
彰人「朝比奈さん、なんか一瞬キャラが変わりませんでした?」
まふゆ「いいえ、そんなことないですよ」
彰人「……」
まふゆ「……」
まふゆ:キッパリと言いきりながら、ニコニコと笑い続ける
彰人:怪訝な表情を浮かべたまま、警戒した様子でまふゆの顔を見つめ続ける
絵名「……」
絵名:夜中に目を覚まし、まふゆが部屋にいないことに気がついて廊下に出てみると、彰人の部屋から話し声がすることに気がついて、部屋の前まで来て中の様子を伺いながら愕然としている
絵名(えっと、どういう状況……?)
~終~
まふゆが東雲家に泊まりに来るイベントを読んだ時に、彰人がうっかりとまふゆのお風呂を覗いてしまう絵を描きたいなと思いながらも一枚絵だとどうにも筆が乗らず、そうだ会話文にしようとなって書き始めたものなので、たいした落ちもなく色々とgdgdになりました。(反省)