Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    @t_utumiiiii

    @t_utumiiiii

    ・オタクの二次
    ・文章の無断転載・引用・無許可の翻訳を禁じています。
    ・Don't use, repost or translate my Fanfiction Novel without my permission. If you do so, I ask for payment.

    ☆quiet follow Yell with Emoji 🍰 🎈 🎁 🍮
    POIPOI 148

    @t_utumiiiii

    ☆quiet follow

    人目を忍んでお付き合い♡してるエマエミと何も知らないクリーチャー・ピアソンさん

    口紅の色(エマエミ+泥棒)「ち、ちょっと、っこ、濃いんじゃないか?」
     「おい、なあ、ウッズさん。」と聞こえるように呼びかけられてしまったので、仕方なくエマが振り向くと、振り向きざまに、痩せて骨ばった、それでいて指の節に毛の絡んでいる不衛生な印象の男の手を出し抜けに伸ばされていて、そのまま頬に触られそうになっていたので、普段から浮かべている習い性の微笑みも、思わずひくりと引き攣った。
     不幸中の幸いにも、それは混沌試合の試合待機席についていたときのことで、エマがそれとなく身を躱して、隣り合った席から身を乗り出して、思いの外近くまで伸ばされてきていた男の手から少し距離を取ったところで、それは全く自然な動きであったし、自分たちを除いて他に六人の環視があるところで声を荒げるほど、彼は度胸がある人じゃない。エマは、そういうことをきちんと心得ていた。

     触れそうなところまで近づけた手をわざと避けられたことは察したのか、彼女を呼び止め、その頬に触ろうと手を伸ばしていたピアソンは、いかにも不機嫌そうな様子で露骨に顔を顰めて見せたものの、エマの読み通り、声を荒げるほどのことはしなかった。彼はその代わりに、猿の威嚇めいて、黄ばんだ歯を剥き出して見せるような醜い笑い顔を見せながら、「こ、ここが」と言いつつ、自分の口元を指差す。
    「ま、まあ、わっ、悪くはない、と、おお、思うぜ、お、女らしくて……っで、でもさ、それは、その、っと、年増の色だろ? あ、あんたには、もっと、うす、薄い、い、色のほうが……」
     ピアソンさんが何かよくわからないことを言いだす、というのは、今に始まったことじゃない。けれど、(この人、今日も何を言っているのかよくわからないなあ)と思いながら、エマが自分の顎に手をやって首を傾いだところで、ひとつ思い出して、エマはつい、「あっ」と声を漏らしてしまった。そうやってひとつ思い出してしまうと、ますますそのことしか考えられなくなって、自分の頬が勝手に熱くなっていくのがわかる。
     そうして、彼が何を言っているのか、どうして自分がそんなことを言われたのか今はっきりと理解したエマは、その原因を指摘してきた男の前に晒しているのもきまりが悪いものの、敢えてそれを拭ってしまうのも惜しいと思いながら、両手で自分の口元をぱっと隠しながらもじもじとしてしまう。それを見たピアソンさんは、何とも厭らしい感じに細めた目でニヤッと猥りがわしく笑って、また何か、エマにとっては嫌な、下品で、何か汚らしいことを言って来ようとした雰囲気があった。けれど結局、彼が何か言ってくるよりも先に試合が始まったので、エマは開始早々、心からほっと胸を撫でおろしたのだった。


     その試合は、参加したサバイバー全体としては負けてしまったけれど、脱出には成功した。いつもと同じ、晴れの気配が微かにうかがえる白っぽい曇り空の荘園に戻ってから、エミリー先生の部屋で手当てを受けている最中、試合前にあったことを、エマがエミリーにひっそりと教えてあげると、彼女は白粉を綺麗に塗った顔をぽっと赤くしてから、蒼褪めた額にほっそりとした柳眉を寄せて、いっそう困った顔をしながら(だから駄目と言ったでしょう!)と言いたげなとがめだてする眼差しを、エマの顎のあたりに向けたけれど、彼女が続けて言葉にしたのは「……日中は、そういうことを控えるべきね……」という、柔らかい言葉でしかなかった。彼女はそう言いながら、まるで何かを思案している風に目を細めて、自分の顎に片手を宛てているけれど、本当は自分の顔を覆って、その場でおろおろと足踏みしながら、外聞もなく恥じ入りたいと思っているのを我慢して、それとなくそっぽの方を向いている。
     考え事をしているフリをしているときの先生の、きれいに口紅を塗られたくちびるが少し尖って見えるのが可愛いと思って、エマがそこに顔を寄せて口付けようとすると、エマが近づいてくるのを予想していなかったみたいなエミリーは、驚いたように身体をぎくりと少し硬くしながら、患者さんが座る椅子から少し腰を上げて、彼女にキスをするために顔を近づけたエマの肩に触ると、手の平で軽く押してくる。まるで、(駄目よ)って言うみたいに。でも、彼女のやさしいブラウンの瞳をエマがじっと見つめながら、「だめかな?」と尋ねると、彼女は息が上手く吸えなくなるような苦しそうな顔をしてから、エマを止めたがる手を下ろしてくれるのを、エマはちゃんと知っている。だから、良いの。先生はエマを嫌がっているんじゃなくて、エマのために、いろんなことを考えてくれているだけだもの。

     柔らかくて少しひんやりしている先生の唇に唇を押し当てて、そのかたちを確かめ合ってから、ぽかぽかした気分でエマが離れると、エミリーはすぐに、テーブルの小物入れに入れていた綺麗なガーゼを、急ぎだからと指で抓んで取り出してくると、慌てたようにガーゼを取り出してくる彼女に少し驚いて、ぽかんとしているエマの唇をきゅっと拭う。
    「あ~っ!」
     勿体ない! と、エマが思わず残念がってあげた声をよそに、先生は口紅のついたガーゼを机の下にある小さなゴミ箱にそっと捨てると、それからすっかり恥じ入るように、両手で顔を覆ってしまった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ☺☺☺
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    @t_utumiiiii

    DOODLE公共マップ泥庭

    ※日記のないキャラクターの言動を背景推理等から捏造
    ※捏造荘園設定
    一曲分(泥庭) 大勢の招待客(サバイバー)を招待し、顔も見せずに長らく荘園に閉じ込めている張本人であるのだが、その荘園主の計らいとして時折門戸を開く公共マップと言う場所は、所謂試合のためのマップを流用した娯楽用のマップであり、そのマップの中にもハンターは現れるが、それらと遭遇したところで、普段の試合のように、氷でできた手で心臓をきつく握られるような不愉快な緊張が走ることもないし、向こうは向こうで、例のような攻撃を加えてくることはない。
     日々試合の再現と荘園との往復ばかりで、およそ気晴らしらしいものに飢えているサバイバーは、思い思いにそのマップを利用していた――期間中頻繁に繰り出して、支度されている様々な娯楽を熱狂的に楽しむものもいれば、電飾で彩られたそれを一頻り見回してから、もう十分とそれきり全く足を運ばないものもいる。荘園に囚われたサバイバーの一人であるピアソンは、公共マップの利用に伴うタスク報酬と、そこで提供される無料の飲食を目当てに時折足を運ぶ程度だった。無論気が向けば、そのマップで提供される他の娯楽に興じることもあったが、公共マップ内に設けられた大きな目玉の一つであるダンスホールに、彼が敢えて足を踏み入れることは殆どなかった。当然二人一組になって踊る社交ダンスのエリアは、二人一組でなければ立ち入ることもできないからである。
    5388

    @t_utumiiiii

    DOODLE※日記のないキャラクターの言動を背景推理等から捏造
    ※捏造荘園設定

    マーサが香水使ってたらエブリンさん超怒りそう みたいな
    嫌いなもの:全ての香水の匂い(広義のウィラマサでエブマサ) チェス盤から逃れることを望んだ駒であった彼女は、空を飛び立つことを夢見た鷹の姿に身を包んでこの荘園を訪れ、その結果、煉獄のようなこの荘園に囚われることとなった。そこにあったのは、天国というにはあまりに苦痛が多く、しかし地獄というにはどうにも生ぬるい生活の繰り返しである。命を懸けた試合の末に絶命しようとも、次の瞬間には、荘園に用意された、自分の部屋の中に戻される――繰り返される試合の再現、訪れ続ける招待客(サバイバー)、未だに姿を見せない荘園主、荘園主からの通知を時折伝えに来る仮面の〝女〟(ナイチンゲールと名乗る〝それ〟は、一見して、特に上半身は女性の形を取ってはいるものの、鳥籠を模したスカートの骨組みの下には猛禽類の脚があり、常に嘴の付いた仮面で顔を隠している。招待客の殆どは、彼女のそれを「悪趣味な仮装」だと思って真剣に見ていなかったが、彼女には、それがメイクの類等ではないことがわかっていた。)――彼女はその内に、現状について生真面目に考えることを止め、考え方を変えることにした。考えてみれば、この荘園に囚われていることで、少なくとも、あのチェス盤の上から逃げおおせることには成功している。
    8097

    @t_utumiiiii

    DOODLEクリスマスシーズンだけど寮に残ってる傭兵とオフェンスの象牙衣装学パロ二次妄想ですが、デモリー学院イベントの設定に準じたものではないです。
    the Holdover's Party(傭兵とオフェンス ※学パロ) 冬休み期間を迎えた学園構内は火が消えたように静かで、小鳥が枝から飛び立つ時のささやかな羽ばたきが、窓の外からその木が見える寮の自室で、所持品の整理をしている――大事に持っている小刀で、丁寧に鉛筆を削って揃えていた。彼はあまり真面目に授業に出る性質ではなく、これらの尖った鉛筆はもっぱら、不良生徒に絡まれた時の飛び道具として活用される――ナワーブの耳にも、はっきりと聞こえてくる程だった。この時期になると、クリスマスや年越しの期間を家族と過ごすために、ほとんどの生徒が各々荷物をまとめて、学園から引き払う。普段は外泊のために届け出が必要な寮も、逆に「寮に残るための申請」を提出する必要がある。
     それほどまでに人数が減り、時に耳鳴りがするほど静まり返っている構内に対して、ナワーブはこれといった感慨を持たなかった――「帝国版図を広く視野に入れた学生を育成するため」というお題目から、毎年ごく少数入学を許可される「保護国からの留学生」である彼には、故郷に戻るための軍資金がなかった。それはナワーブにとっての悲劇でも何でもない。ありふれた事実としての貧乏である。それに、この時期にありがちな孤独というのも、彼にとっては大した問題でもなかった。毎年彼の先輩や、或いは優秀であった同輩、後輩といった留学生が、ここの“風潮”に押し潰され、ある時は素行の悪い生徒に搾取されるなどして、ひとり一人、廃人のようにされて戻されてくる様を目の当たりにしていた彼は、自分が「留学生」の枠としてこの学園に送り込まれることを知ったとき、ここでの「学友」と一定の距離を置くことを、戒律として己に課していたからだ。あらゆる人付き合いをフードを被ってやり過ごしていた彼にとって、学園での孤独はすっかり慣れっこだった。
    5375

    @t_utumiiiii

    DOODLE象牙衣装泥庭二人とも怪我してるみたいで可愛いね🎶という趣旨の象牙衣装学パロ二次妄想(デモリー学院イベントの設定ではない)です
    可哀想な人(泥庭医 ※学パロ) 施設育ちのピアソンが、少なくとも両親の揃った中流階級以上の生徒が多いその学園に入学することになった経緯は、ある種“お恵み”のようなものであった。
     そこには施設へ多額の寄付したとある富豪の意向があり、また、学園側にもその富豪の意向と、「生徒たちの社会学習と寛容さを養う機会として」(露悪的な言い方になるが、要はひとつの「社会的な教材」として)という題目があり、かくして国内でも有数の貧困問題地区に位置するバイシャストリートの孤児院から、何人かの孤児の身柄を「特別給費生」として学園に預けることになったのだ。
     当然、そこには選抜が必須であり、学園側からの要求は「幼児教育の場ではない」のでつまりはハイティーン、少なくとも10代の、ある程度は文章を読み書きできるもの(学園には「アルファベットから教える余裕はない」のだ)であり、その時点で相当対象者が絞れてしまった――自活できる年齢になると、設備の悪い孤児院に子供がわざわざ留まる理由もない。彼らは勝手に出ていくか、そうでなければ大人に目をつけられ、誘惑ないしだまし討ちのようにして屋根の下から連れ出されるものだ。あとに残るのは自分の下の世話もおぼつかないウスノロか、自分の名前のスペルだけようやっと覚えた子供ばかり――兎も角、そういうわけでそもそも数少ない対象者の中で、学園側が課した小論文試験を通ったものの内の一人がピアソンだった。
    12853

    recommended works

    @t_utumiiiii

    DOODLE #不穏なお題30日チャレンジ 1(2).「お肉」(傭オフェ)
    ※あんまり気持ちよくない描写
    (傭オフェ) ウィリアム・ウェッブ・エリスは、同じく試合の招待客であるナワーブと共に、荘園の屋敷で試合開始の案内を待っていた。
     ここ数日の間、窓の外はいかにも12月らしい有様で吹雪いており、「試合が終わるまでの間、ここからは誰も出られない」という制約がなかろうが、とても外に出られる天候ではない。空は雪雲によって分厚く遮られ、薄暗い屋敷の中は昼間から薄暗く、日記を書くには蝋燭を灯かなければいけないほどだった。しかも、室内の空気は、窓を締め切っていても吐く息が白く染まる程に冷やされているため、招待客(サバイバー)自ら薪木を入れることのできるストーブのある台所に集まって寝泊まりをするようになっていた。
     果たして荘園主は、やがて行われるべき「試合」のことを――彼がウィリアムを招待し、ウィリアムが起死回生を掛けて挑む筈の試合のことを、覚えているのだろうか? という不安を、ウィリアムは、敢えてはっきりと口にしたことはない。(言ったところで仕方がない)と彼は鷹揚に振る舞うフリをするが、実のところ、その不安を口に出して、現実を改めて認識することが恐ろしいのだ。野人の“失踪”による欠員は速やかに補填されたにも関わらず、新しく誰かがここを訪れる気配もないどころか、屋敷に招かれたときには(姿は見えないのだが)使用人がやっていたのだろう館内のあらゆること――食事の提供や清掃、各部屋に暖気を行き渡らせる仕事等――の一切が滞り、屋敷からは、人の滞在しているらしい気配がまるで失せていた。
    3412