アイオープナー長い時を過ごしてきた。
鬼である自分のものに比べて人の命はとても儚く、散っては咲き誇ることを繰り返す花のようにも思えた。それでいて彼らは花よりも温かく、ヴォックスが慈しめばそれに応えた。時折人ならざる己を恐れ離れようとする者もいたが、そのときは手折ることにしていた。
愛情深き鬼はそうして人間たちと心を通わせてきたのだ。
そんな命たちの煌めきを見続けて400年。
世の中とは予想もつかぬ面白いもので、ヴォックスは配信者として活動していた。Luxiemの一員としてデビューし、同胞も先輩もできてとても刺激的な毎日だった。
天真爛漫なマフィア、頼りがいのある呪術師、愛らしくお人好しな文豪、そして──刺激的な探偵。
その探偵、ミスタは不思議な男だった。デビュー前の物静かで人見知りな男は初配信でその姿を脱ぎ捨て、見る者のシナプスを焼き切るようなエンターテイナーとなった。ゆっくりと花の散るさまを眺めていた自分にとって、いつ何をするかわからないミスタは花火のようであまりに鮮烈だった。しかし、しばらく見ていれば彼が才能と努力の上に立っていることも、ただの不器用で寂しがり屋な坊やであることもわかった。
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