地下には直接は降りしきる雨も、掻きむしるように鳴り響く雷も関係ない。
でも、家に帰るまでには、その激しさを身に受けるしかない場面もある。
帰宅した頃には、上から下までびしょびしょ。
冷えた身体はシャワーで温めましょう。温かいカフェオレも。
温めましょう暖めましょう。
暗いはずのベッドルーム。
窓からは雷と激しい雨粒のコントラストがシーツに映る。
嵐の音が大きいはずなのに、密着した双子の鼓動はより大きく感じる。
冷たかった身体が茹だるように熱くなっていく。
子供の頃に確かに二人で嵐の日にシーツに包まり、楽しい話をして気付いたら寝て、嵐も去っていた。
今は、シーツの中で二人は狂おしいほどに激しく動く。温かさでは無く、蒸しかえる様な熱を孕んで。
親愛は情愛に。楽しさは悦楽に。安楽は快楽に。嵐が全てを呑み込むように、またはシーツで被される様に、過去は今に塗りつぶされていく。
重ねた所が融けていく。どちらがどちらか分からないほどに。
あの頃の、嵐の心細さを二人で温める事はもう無い。今となっては嵐は自分達の中にもあった。
満ち足りぬ渇望の流れ、激しい欲望の渦。
打ち付ける雨音のように雷鳴のように、重なる二人の声や吐息や音が、一定のテンポで寝室に響く。
熱と欲を吐き出し、意識は遠退く。
窓の外もまた、雨足は弱まり、雷雲は遠くに去っていった。
二人といえば、子供の様にすやすやと眠るばかりで、嵐が遠ざかったのを知るのは明るくなった頃であろう。
シーツに映るコントラストは、静かに暗闇に消えていった。