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    @conishi524

    地雷がある方は閲覧しないでください。

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    524

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    イチゴイチエはイッショーのエン現パロ
    地雷がある方は読まないでください。


    ワーワーキャーキャー、大ハシャギのガキ共が校舎からイヌコロのヨウに転がり出てくる。
    シー、ゴー、ロク…………俯いて自分のアシモトに落ちてる吸い殻を数えた。中々の数。ソラそーだ。ショウガッコーの前でやるコトもなく三時間も待たされてるンだもの。コレも経費で出るとイイな~。
    見知った893からのご依頼で、組長の末の娘の護衛を申し付かる。組長はかなりの高齢なので、末娘といってもソコソコの年齢だろうと踏んでテキトーに返事したのが悪かった。
    まさかピカピカの小学一年生とはね……。
    オレはガッコなんてモンには行かされてないから、下校時間というモノがわからなかった。かろうじて給食の存在を思い出し、一年目だし、昼飯食ったら解散くらい?とマア、ヨユウを持って十二時辺りに待ってりゃイイか、ナドとまたもテキトーに考え校門の前で突っ立ってタバコ吸い待ってたら、チャイムがなって校庭で走り回ってたガキ共が一斉に校舎に戻ってシバラク、ダダッ広い校庭を横切りセンコーがコチラに近付いてきた。

    「お父さん?お兄さん?小学校の周りでタバコ吸うなよ~~~わかるだろそんくらい」
    「あ~~スマセン……笑」
    「誰の保護者?」

    タバコを銜えながらスウェットのポッケを探り、名刺を出す。

    “関西任侠連合 六代目禪院組 組長 禪院直毘人”

    クチャクチャにヨレた名刺を見せると、センコーは急に黙り込み手で目元を覆って溜め息を吐いた。

    「…………本当に組の人?ソレ、名刺、偽造じゃないだろうね?」
    「オウ」

    ちげエけど。

    「あのね、もし誘拐目的なら手を引いた方がいいよ。命が惜しいなら」
    「ガチだって。連絡してもイイぜ?」

    ウラッ返して走り書きのナンバーを見せてやったが、センコーは、タバコは止めろ、吸い殻も拾っておけと言い残し校舎に戻っていく。

    「あっ、なアー!一年って何時に出てくンのー?」
    「今五時間目で、清掃と、帰りの会までやって十五時半ってとこだあ」
    「アンガト~」

    メシ食ったら解散じゃねエんだ…………。
    スマホの画面を点ける。まだまだ時間がタップリと残されていて、こんなコトなら早めに来るンじゃなかったとイヤんなる。何となく、メールで送られてきた末娘の写真を見返した。
    ニコリともせず可愛げのカケラもナイ、髪の長いガキがコチラを睨んでいる。

    「“あの家”ってカンジだな……」

    センコーに見つからないヨウ、しゃがんでタバコを地面で揉み消す。それから即座に一本火を点け、クチを突き出して煙を頭上に吐き出した。ケータイ代払ってねエから、Wi-Fiがないとヒマツブシも出来ねエ身の上だ。タバコくらいしか楽しみはあるまい。
    そんなこんなで三時間ばかし、門の外に座り込んでいたら、バカデカイチャイムがなって校舎がニワカに騒がしくなり、再度静かになったと思ったらガキの放流が始まったトコロだ。
    出てくるバカソーなガキを選別して、件の娘を探さにゃならん。立ち上がって校庭を走るガキに目をやる。ランドセルが全くフィットしておらず、ガチャガチャガチャと騒音を立ててる。校門からイキオイヨク飛び出したガキは、そのまま前の道路へも飛び出し、向かいに停車してた親の車に飛び込んだ。
    金のある893だけあって娘を通わせてるのは富裕層向け進学校で、今のバカソーなガキも車や親の様子を見るに金持ちのボンボン。何不自由なく暮らしていそうだ。こーゆうのを攫って児童臓物売捌すってのも893のシノギのヒトツなんじゃねエのか。なア、組長さんよ。ココは油断しきった世間知らずのバカガキがイッパイいますよ~笑
    ニヤニヤとガキを一人一人確認していたら、一人だけ。さり気なくコチラにツラを見せないヨウ他のヤツに紛れて移動してるミョーなガキがいた。
    ウメエな。
    カオを伏せず移動しながら立ち位置を選んでツラを隠し、尚且つ自然だ。
    やり慣れてンねエ。
    たかだかガキのお守で外部のニンゲン……ソレもオレなんかにお鉢が回ってくるワケだ。並のヤツらじゃこうやって撒かれちまって護衛になんなねエってコトね。

    「オイ」
    「………………」

    チラチラとガキの間から除く細いツインテールに声をかける。おそらく自分に向けられてるのはわかってるハズなのに、シカトする度胸もイイね。
    でも気配を殺すのはオレに一日の長があるぜ。

    「シカトこいてンじゃねエーよ」
    「!?」

    後ろに回り込んだらさすがに驚いて、振り返りつつも距離をとる。両脇の高い位置で結んだ髪と流した後ろ毛がパサッと波打った。

    ナマイキソーなカオ…………。

    写真で見たよりも気が強く見えるピンと跳ねた目尻。クチはムスリと真横に引き結ばれて一言の弁明もない。

    「え~~……っと、ナオヤ、か?」
    「ちゃうよ」

    ガキらしい稚い声色で即座にウソつくな。

    「シラバックレんな。写真見てンだよコッチはよ。シバラクオレが護衛だサッサと帰ンぞ」
    「オッサン誰?組のモンとちゃうよなあ」
    「…………オニーサンはァ、オマエのパパの知り合いだよオ~~?ホ~レパパからのメールだわかったら黙って着いて来いクソガキ~~~」

    写真の添付されたメール画面を見せてやると、マジマジ見つめてる。瞳の動きからすると、メールアドレスを確認しているヨウだ。納得したのか、ヒトマズの警戒は解かれた。

    「浜口はどうしたん?」
    「知らねーよクビじゃね?」
    「アイツ一回もウチのコト見つけられんかったモンなあ」

    ニコニコと笑顔で楽しそうに浜口の無能を罵るガキの振る舞いは、昨日今日小学校に入学したばかりとは思えない。幼くとも、やはり禪院のニンゲンというこったな。

    「じゃあウチが“たいちょう”ね。オッサン名前は?」
    「オニーサンは、甚爾と言います」
    「ホナトージクンいっくで~~」

    タタターと予備動作もなく駆け出す直哉。
    まだまだガキでゴッタ返しの校庭を、スルスルスル~と抜け出しアッと言う間に校門の手前に着いちまった。
    そしてそのまま振り返りもせず、家とは真逆の方向に曲がる。

    「待てゴラクソガキ!!」

    自分の半分程度しかない無数のガキを蹴っ飛ばさねエように避けながら追いかける。ようやっと校庭を抜けたが、直哉は既にマメツブほど小さい。しかも、歩道にもワラワラとガキが…………。

    「あ~~~~~…………」

    もう帰ろっかな。
    アイツならヒトリでも大丈夫だろ……。

    と思った矢先、明らかにカタギのモノじゃない黒塗りのベンツが直哉の駆けてく方向へ発進した。
    一瞬、一回くらいイタイ目見といたホーがイイんじゃね?と思ったが、オレは一回で終わりだ。保身のためにも何とかしねエと…………。
    ガードレールを飛び越し車道の真ん中を全速力で走る。サンダルだから走りにくいの何の……。
    前方を塞いだベンツからチンピラが出てきて直哉に手を伸ばす。

    「テメエッ」
    「ガッ、アッアッアッ!?アアアア!?」
    「あ!?」

    チンピラが、大きな悲鳴を上げて道路に転がる。傍らでホウホウとソレを眺める直哉。手元には煙をモウモウを出してるスタンガン。
    転がって痙攣してるチンピラにそのスタンガンを更に近付けようとするので、ガードレールを今度は歩道側に飛び越し直哉からソレを取り上げてチンピラのクビネッコ掴み車にブチ込んだ。

    「ああ~~!!ウチのっ、ウチのぉ~~!!」
    「バァカ!!ンだコレどんだけ出力上げてンだ…………殺しちまうだろ~ガッ!!」
    「イイの~~!!コ~ロ~ス~の~~!!」
    「ダァメ~で~すゥ~~!!」

    ドアをバン!!と閉めると車はキュルキュルとタイヤを鳴らし慌てて逃げ出した。
    改造スタンガンのスイッチを切り、地面に放り踏み潰す。

    「アーンウチのオモチャこわしたア!!」
    「こンなモンで遊ぶな」
    「……フン!!」

    むくれて地団太踏んでると思ったらそのままのイキオイでまた走り出した。今度はスグサマ追い掛けられたが、前方からアシモトに向かってランドセルを投げつけられて危うくコケそうに。しかも開けっ放しでブン投げたモンで中身が散乱してバラバラに散らばった。僅かに残った理性でランドセルだけは拾い上げる。中身は歩道に。

    「ニンジャかテメーはッ!!」

    ガキはピューと一直線に進んでいたと思ったのに急にオレの視界からスガタを眩ませた。追いつくとどうやら左折して公園に突撃していったヨウで、早速ブランコでキィコキィコと遊んでやがる……。

    「エ~~加減にせエよこのクソガキ」
    「ブンブンブン♪ハチがトブー♪」
    「帰ェンぞ」
    「オイケのマワリにノバラがさいたヨ♪」
    「………………」

    ア、ソオ。シカトね、シカトシカト……。
    ワキに手を入れて問答無用で持ち上げる。直哉はシッカリブランコのクサリを握って離さなかったからブランコごと持ち上がり、ガシャンガシャンと喧しい音が響いた。

    「ヤァア~~!!人さらい!!」

    バッ!と振り返り公園内を見回す。幸いにして人はいなかったが、周囲は住宅地が広がっていて、しかもかなり立派な一戸建てが立ち並んでいるコトから誰かしら、主に専業主婦などが在宅である可能性が高い。

    「バカッ、デケーコエ出すな!!」
    「おろしてえ!はなしてえ!」
    「わったわった逃げンじゃねエぞ……」

    下ろしはしたが、ブランコは漕げねエようにクサリを掴んでショーメンに仁王立ちする。ガキはフマンソーにホッペを膨らませてツマサキでジャリを蹴っ飛ばした。

    「逃げヘンモン、ウチ、遊ぶから……」
    「遊ぶのも却下。サッサ帰るンだよ。オメーのオヤジにウルサク言われたくナイんでね」
    「………………ウチヒトリでもかえれンのに…………」

    ボショボショ詮無いコトをボヤきつつ、アシをバタつかせてザザザザとスナを蹴り上げる。オイ……オレサンダルなんだけど。アシのユビの間が粉っぽくて気になってきた……。親指を上下して粉を掃う先から砂埃が激しさを増してイタチゴッコだった。

    「…………なア~」
    「ンだよ」
    「先かえってエエよ」
    「ンなコトしたらオメーの父ちゃんにオレが殺されンべ」

    コチャコチャとゴネるクソガキをマトモに相手する必要はねエが、無理くり連れ帰ろうモンならサッキみたく大騒ぎするだろうし…………ア~~クソこんな依頼受けなきゃヨカッタぜ。
    ウンザリとガキのツムジを見てたら、急にそのアタマがピョンと跳ねるヨウに上向き、グリグリの目がガチンとオレを捕らえる。

    「じゃあ~~~………………パンツ見せたる♡」
    「ハイ?」
    「オトコってパンツすきやん。見せたるから先かえってて」

    このガキ……。
    ニヤニヤとしたりガオで、ワンピースタイプの制服のスソをヒラ、ヒラと靡かせてきやがる。じゃがりこみてエな細くて短いユビでピラとギリギリまでスカートを捲ってはスソを離し、捲っては離し…………イッチョ前にオトコを誘うヨウな仕草がバカバカしくて思い切り噴き出した。

    「ちょっとお!!なんでわらうン!?」
    「ブククッ、オメーだってヨ…………ガキがイロケづきやがって…………笑」
    「ーーーッ!!」

    直哉はブランコの上で乱暴に身を弾ませて抗議した。掴んでいたクサリがガシャンガシャン上に跳ねては下に思い切り引かれヒヤリとする。

    「アッブネ!肉挟まるっつの」
    「…………見たナイの……ウチのパンツ」
    「アア?あ~~……見~……………てエワケね~~だろ!!ギャハハ!!爆笑」

    オメーみてエなガキに催すかっつの!!そう笑い飛ばしてやると、直哉は恥ずかしさからかガバッ!とカラダを折り曲げて自分のスカートにカオを埋めジタジタと悶えている。
    ナマイキなガキが……自分のコトをスッカリ大人だと思い込んでるサマがコッケイで大変愉快だった。

    「ア~ハハハ……ワリワリ、笑いすぎたな?一生懸命誘ってくれたのに……プププ」
    「~~~~~~~ッ!!」
    「イデッ!!蹴るなボケ!!ンなにバタバタさせてっとゴジマンのパンツが見えちまうぞ」

    ピタリと攻撃が止んで、直哉はモジ、モジとアシを擦り合わせた。さっきマデ、見せたる♡とかノリノリだったクセに……笑

    「あ~~やっぱ見せてもらおっかな~~」
    「…………ヤ」

    ツンとソッポ向きスネている様子が小気味よくてカオを覗き込む。直哉はスグサマ反対を向いて反抗的だ。

    「な~んで。イイジャン。サッキマデ見せてくれるって言ってたジャン。捲ってみせろよ」
    「やや!」
    「恥ずかしくて出来ねエンならオレが捲ってやろっか~~?」

    意地になってンのか、それともオレが捲らないと思ってるのか、スカートのスソをツンツン引いても黙ってクチをとんがらせてムクれるダケ。こーゆーオトナをナメたガキを一回わからせてやンのも優しさだろ?
    つまんでたスソを真上に持ち上げてハイ御開帳。可愛げのねエタイドとは違いガキらしく厚手の綿パンツがカオを出す。しかもイチゴ。真ん中には赤いリボンが付き。

    「ハッハ!ズイブンガキクセーパンツ履い、」

    シャララララ!!

    「は?」

    油断しきったオレのアゴに、真下からヒザが突き上げられた。仰け反って避けたら、直哉はヒザ蹴りのイキオイのままカラダを一回転させてブランコのウシロに着地し、そのまま公園内に駆け出した。

    今の、ヒザ蹴りされる前、アイツ何やってた?

    「オイ待てガキィ!!」
    「キャハハハハッ♡」

    担いでたランドセルを放り捨て直哉を追い掛ける。障害物の少ない広い公園で、捕まえる寸でのトコロで筒状になってる滑り台に逃げ込まれる。追い掛けて滑ろうとしたらケツが通らなくて、一旦出て滑り台の上を走って飛び降りた。オラ出てこいクソガキ!!
    トコロが待てども待てども直哉は出てこない。日に透けたドームのチョード真ン中らへんに小さく丸いシルエットがあり、どうやら直哉はアシを引っ掛けて途中でピタリと止まっているヨウだった。
    影のマヨコへ行き、ドームの屋根をゴンゴンゴン!と激しく殴りつける。

    「ウルサア~イ!!」
    「出て来ねエと『天国と地獄』の刑な」
    「やあ~~ん~~~」
    「『剣の舞』にすっか?」

    観念した影がユックリツルツルと下りだしたので、今度こそ逃がさないヨウ滑り台の出口に先回りする。
    ヒョッコリ出て来た小さなローファーのアシクビを引っ掴んでズルンと引っ張ったら、直哉はキャッキャキャッキャと喜んでそのまま寝転がった。滑り台に散らばる細く長い金の髪を避けて手を突く。

    「サッキ、何かイタズラしたな?」
    「してヘン!」
    「スットボケてンじゃねエーー!!写真撮っただろーが!!」
    「とった!」
    「消せ」

    制服のポッケからiPhoneを取り出し、スイスイスイと操作して画面をオレに見せる。ソコにはニヤニヤしながら直哉の制服のスカートを捲っているオレのスガタがバッチリと。
    バシリとiPhoneを取り上げてバーストで撮った写真を全て消した。

    「オッマエなア、ザケンなヨ!!こんなモン出回ったら終わるっつの!!」
    「きょうゆうしたよ」
    「ア?」

    直哉は寝っ転がってオレを見上げながら、ニコニコしてる。

    「パパが見られるヨウ、イエのフォルダにシェアした!」

    ゴッ!

    一掴みで砕けそうな小さなアタマを辛うじて避け、滑り台を殴る。

    「…………シェア?」
    「ん!」

    ビビッたヨウスもなく無邪気に見上げてくるツラにクチハシがピクピクと吊り上がった。
    何してくれてンだこのガキーーーッ!!

    「何してくれてンだこのガキーーーッ!!」
    「でもマダ見てヘンよ」
    「あ!?」
    「パパ、今日ゴルフやから」

    そのままお酒呑んでヨッパラッて寝てまう、と直哉が言うヨウに、確かに今日一日用事があるとか何とかで、トラブルを起こさないヨウウルサク言われていたのを思い出す。

    「ウチと遊んでくれたら、消したる」
    「…………オメー、ハナッからそのツモリか…………?」
    「ブランコしよ!」

    直哉はハナシは終わったとばかりにオレの股の下を潜り抜け、サッキ座ってたブランコにタターーと駆け寄って行く。
    持ちッパのiPhoneを操作してシェア先を探そうとしたがドコにもそれらしきアプリやリンクはない。

    「はよぉーーッ!!」

    遠くから喧しいガキのコエが響き、思わず手にチカラが入る。ミチ、ミチミチとiPhoneが軋ンだが、やがてフッと脱力し、諦めてブランコへチンタラ歩き出す。

    一日。

    今日一日コイツのお守をすりゃあ、まとまった金が手に入って、組に借りを作れ、明日からはまたいつも通りのツマンネー日々を送れるンだ…………ガマンしろ、オレ…………。

    「おそいヨォ~~ドンくさいなア~モウ」
    「……………………」

    手始めに、背後に回り込んでヤだと言っても背中を押し続けたらブランコから降りたトキに硬いローファーでスネを蹴られた。

    「シーソーやろ」

    直哉は悶絶するオレの返事も聞かずにシーソーに跨り、ケツをピョンピョコ跳ねさせている。
    不承不承反対側に座るとドンッと直哉側が飛び上がり、コレじゃあ遊びになんねエだろと思ったが本人は急加速が面白かったヨウでキャアキャア喜んでる。

    「あのさア、パンツ見えてますけど」
    「そんなに見たいン?」
    「…………オマエさア、どっからエンギだったワケ?」
    「ネーネ、早くギコギコして!」

    ヒザを伸ばしてケツを浮かせると、グンッと今度は急降下して、重たいアタマが転がるイキオイで仰け反る。
    流石にギョッとしたが、マルッとした手はシッカリ手すりを掴んだままでアタマを振って髪をパサパサ言わせながら地面をダンと蹴飛ばした。しかし当然ながらこの体躯差でマトモに相手が出来るハズもなく。

    「アーン重いよ~!」
    「シツレーなコトゆーな。オメーがチビなだけだろ」
    「チビちゃうモン。ウチガッコじゃイッチバンウシロやで」

    ウレシソーに、身体測定で体重が増えたハナシをし出して止まらない。オンナのクセに、体重が増えてウレシイのか?ガキッてわかんねエ~~。
    直哉の要望通り、ケツを浮かしたり、落としたりしてシーソーを漕いでやる。アシは地面に着いたままなので、スクワットさせられてるみてーだ。最初は地面を都度都度蹴ってた直哉も、今ではアシを伸ばしたままブラブラさせてラクしてやがる。ドンとゴムタイヤに着地するたんびにイチゴパンツが丸見えになってるが全く気にしてるヨウスはない。

    「あきた」
    「じゃあ帰ろうぜ」
    「ジャングルジムやる」

    お決まりの置いてけぼりで、サッサと直哉はジャングルジムに移動した。トコロドコロ、赤や黄や青のペンキが残ってるホトンドウスラハゲのジャングルジムは、オレのタッパじゃあイッポで半分、登れてしまいソーだ。

    「ショーブしよ。テッペンさわったらかち」
    「ショーブってもよ、」
    「ヨイドン!」

    チャチャチャとパンツ丸出しで登り始めた直哉を避けて中段にアシを掛け、手を伸ばしてテッペンの棒を触る。直哉はボーゼンとしてたが、やがて無言で降りた。

    「テッペンに立ったホーのかちね」

    ルールを変えやがった。
    ドンと自分勝手にスタートを切り、またチャカチャカ登って行く。
    同じトコロにアシを掛け、上段に手を伸ばしカラダを片手で持ち上げてイッキにテッペンに登る。ヨッコイセとイチバン上にウンコ座りして見下ろすと、直哉は悔しそうにイーと歯を剥いた。

    「みおろすなや!!」
    「ムチャゆーな」
    「モッカイショーブしよ」

    もしかしてコイツが納得するまで続くのかコレは……。
    モチロン直哉が勝てるハズナドなく、同じ工程で何度もジャングルジムの上から下へ行ったり来たりさせられてオレの感情は死んだ。一生続くと思われたショーブは、直哉のハラのムシが鳴いたコトにより一応の終結を迎える。

    「ウチおなかすいた」
    「じゃあ帰ろーぜ」

    直哉はオレをムシしてブランコの近くに投げッパのランドセルの近くで蹲り、ゴソゴソと中を探る。チイとチャックを開けて二つ折りのサイフを取り出すと、ごく自然にオレにランドセルを持たせた。

    「クレープクレープ!」

    公園を飛び出す直哉をもはや諦めの気持ちで追い掛ける。スグ近くにクレープのワゴン車が止まっていて、直哉は立て看板の前で座り込みウンウン悩んでいた。

    「メシ食えなくなンぞ」
    「食えるモン」

    イチゴ、バナナ、チョコ、オマッチャ、ツナマヨ……迷っているクレープをヒトツヒトツ指差して、結局ドレにしようかなと歌い出した。

    「ド、レ、ニ、シ、ヨ、ウ、カ、ナ、テ、ン、ノ、カ、ミ、サ、マ、ノ、イ、ウ、ト、オ、リ……」
    「……………………」
    「……………………」
    「続きは」
    「ナイよ」
    「ウソつけ!恥ずかしがってンじゃねーよ。キョートじゃ『ぷっとこいて』だろ」
    「ちゃうモン!」

    直哉はオゲヒン!と叫びオレのフトモモをボガッと思い切り殴って店員の元に行き、イチゴチョコバナナスペシャル、抹茶ソーストッピングと言う、ドレにしょうかな無効のチョンボオーダーをしやがった。オマケに勝手にオレの分をツナマヨクレープにし、ホイと手渡す。

    「ぜんぶ食うたらアカンよ?ウチもチョット食べる」
    「オマエそんなに食えンの?」

    イチゴチョコバナナスペシャルは、大量のクリームに言葉通りイチゴとバナナがモリモリハミ出し、加えてアイスもヒト玉マルッと乗っかっている激重クレープだ。オレのコトバナド堂々とムシしてガブガブ噛み付いてるが、そのヒトクチは儚く完食に及ぶコトが想像出来ない。一方でオレにとっちゃハラのタシにもならんテイドで、巻いてある紙をビリリと破きヒトクチ食うと半分近くが消えてしまった。視線を感じて下を見ると、直哉がボーゼンとしていた。自分のクレープに向き合うと、叫ぶヨウに大きくクチを開けてかぶり付く。ブリュリュとクリームが溢れてクチどころではなくハナのアタマにマデ……直哉は気にせずニコニコとウレシソーにクチを動かした。

    「あきた」
    「早エよ」
    「コーカンこ」

    有無を言わさず食いさしのクレープを押し付けられ、持っていたホーは奪い取られる。ポッケから取り出したハンカチでカオを拭くと、オレが食ってチョード具のド真ン中になっていたクレープを食い始めた。

    「おいひい~~」
    「ア、ソオ……」
    「ウチツナすきかも~~」

    小さいクチのでレタスをパリパリ砕き、アッと言う間にムシャムシャと完食すると、オレのウデをグイグイ引いてコーカンしたクレープにも再び噛み付く。

    「モーいらん」

    二度と頼むな……と睨みながらグチャグチャのクレープを二口で食べると、直哉は何故か悔しそうにした。
    ポッケからさっき使ったハンカチを取り出し、オレのウデをグイグイ引いてしゃがませオレのクチモトを拭う。

    「モー、トージクンは赤ちゃんやねエ」

    フフフと楽シソーにクリームを引き伸ばして、更にハナや目も拭かれる。オイ、ついてねエーだろ……。
    直哉が満足してハンカチをしまった後、公園に戻りがてらバラ撒いたままのランドセルの中身を拾う。中を検めさせ全部あるか確認させたが、ハラがクチくなってあからさまに眠気に襲われているため返事がテキトーだった。

    「もーイイだろ。帰ェンぞ」
    「もっとあそぶぅ」
    「オマエ目ェ空いてねエジャン」

    ンンンと不満げに唸りながらも、出口に向かうオレの後にフラフラついてくる。仕方なくランドセルを担いで歩幅を縮めてやると、ブラ下げた右手をキュと掴まれた。

    「……………………」

    短いユビじゃオレの小指と薬指を握るのが精々のヨウで、眠気で脱力したウデの重みがその二本にクゥッと掛かる。ガキの体温はアツくてアッと言う間に汗を掻いた。その内に重たいアタマがボスとウデにぶつかり、むずがるヨウに目元を擦ると直哉は完全にアシを止めてしまった。

    「オイ」
    「…………ン……」
    「マジかよ…………」

    オレがしゃがんだトタンに直哉は当たり前のヨウに肩に手を伸ばし抱き着いてくる。無防備だ。
    オトナが子供を害するコトを知っているハズなのに、人に寄り掛かるコトに躊躇いがねエ。テメーを犯すコトも殺すコトも出来るヤツに全身を委ねて寝コケてやがる。ガキの薄くて柔らかいハラは片手で掴めて、このまま握り潰せそうだった。
    丸いケツに手を回し持ち上げる。直哉はオレの肩にカオを埋めた。細い髪がクビスジをハラリと撫でる。

    「………………汗クセー……」

    ランドセルを持ち直し、公園からガッコのホーへ向かって来た道を戻った。ガッコを通り過ぎて家路へと着く。通り道は金持ちそうな住宅がズラリと並んでいて、コンビニのヒトツもない。モチロン、公園みたいなガキの遊び場なんてモンもない。
    ガキはガキなりにタイクツを感じてンだな……。
    高い塀に囲まれた日本家屋の外門でインターフォンを鳴らす。シバラクして、古臭いガラス戸の開くけたたましい音がし、カコカコカコと駆ける下駄の音がする。

    「遅いっ、一体何をしていたのです!小学校は目と鼻の先ですよ!」

    ババアの女中がイキナリ説教かましてきてウンザリ……。じゃあオメーが迎えにいけよ。
    舌打ちしてランドセルを手渡す。続いて直哉を抱き渡そうとしたら、スウェットをギュウと握り込んでいて離さない。
    女中はオレを睨んだ後、懐から小刀を出してオイオイオイオイ。

    「脱がせなかっただけありがたいと思いなさい。旦那様から今回の給金です。服の一着や二着、買い替えれば済むでしょう」

    ババアは握りしめている首周りの生地をビと切り裂いて握りしめた布ゴト直哉を受け取り、丁寧に抱えてサッサと家に入って行った。
    いつの間にか夕日が差し掛かり、カラスがカアと一声鳴く。オレはクビモトがスウスウするボロを纏って、見合わない金額の入った封筒を握り退散した。

    ハア……長エ一日だったぜ……。

    「……………………何か忘れてるヨウな」















    ワーワーキャーキャー、大ハシャギのガキ共が校舎からイヌコロのヨウに転がり出てくる。
    シー、ゴー、ロク…………俯いて自分のアシモトに落ちてる吸い殻を数えた。中々の数。ソラそーだ。かなり焦ってるンだもの。前回のタバコ代は経費にはならなかったのに。
    あの後、オレも家路に着いたコロ、直哉に写真を消させるのを忘れていたコトに気づき、ヤベーヤベーとアタマを抱えた。今のトコロ、誰からも詰められてないからまだ見つかってナイと思いたい。が、そもそもオレのスマホはWi-Fiがないと連絡つかないからな……。気付いてないダケで大変なコトになってるカモ。
    今日も直哉は他のガキに紛れてシャアシャアと逃げ出そうとしている。声も掛けず背後に回り込むとクビネッコを引っ掴んで持ち上げ、ギャアギャア言われる前に抱きかかえて校門を出た。直哉は意外にも抵抗せず、大人しくオレに引っ付いてる。握られた服に昨日の帰りしなの出来事を思い出し苦いカオになる。

    「浜口カワイソウになア。またパパにケットバされンで……ウフフ」

    どうやら今日の迎えは前任の浜口とやらだったソウで、ソレであるならばもしオレがこうしてコイツを連れ去っていなくとも逃げられていただろう。諦めてケットバされてくれや浜口。

    「で、直哉ちゃあ~~ん……何で連れて来られたかわかるゥ?」
    「サア……何でやろ。ウチがカワイイから?」
    「シャ~シ~ン~を~消~し~て~ね~~~」

    小せエアタマを引っ掴んで前後にグリングリン揺さぶってやると、直哉はキャアキャア言って喜んだ。ガキわかんねエ~~……。

    「キャア~~~!笑」
    「…………ハァ。も、イーからサッサと消してくんない?オトナはヒマじゃねエンだよ」
    「やってサ、きのう、ジブンでけしたやん」
    「シェアしたヤツだよ!ジジイに見られたらメンドクセーコトになンだろーーガッ!!」

    直哉はポケーーとクチを開いたままオレを見つめて、ソレからヒトツ、手を打った。

    「アー!ナイよ!」
    「ハイ?」
    「ウン。おくってナイよ、シャシン」

    ハアアアアアアア?
    直哉はヨウケンはソレだけ?と言いジタバタ暴れてオレのウデから逃れたがった。ローファーのまま躊躇いなくオレのハラをケンケン蹴り、ウーンとアシを伸ばしてキョリをとろうとする。

    「マテマテマテ。何?ウソだったの?じゃあ昨日オマエに付き合ったオレの手間は?」
    「たのしかったア~」

    このクソガキ…………。

    「トージクンもたのしかったやろ?」
    「ンなワケあるか…………」
    「な~ア、」

    直哉はニンマリ笑って、抱えられたままオレのカラダをローファーでイッポイッポ登る。そして肩にカカトを置くと、制服のスカートを捲りヒラヒラと振った。

    「あそんでくれたら、ナカまで見せたる♡」

    黒いパンツにマバラに散ったイチゴ、真ン中には小さな白いリボン。
    そしてパシャリと音を立てるiPhone…………。
    どうやらこの悪縁は、未だシバラクの間続きそうだ…………。































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