甘えたい「ただいま〜…って、もう子供らは寝てるか」
「そうですね」
家に着いた俺達は小声で話しながら靴を脱ぐ。
2人で店を締め、帰りも一緒になった。
仕事中もいつものようにお客の話し相手になりながら酒を呑んだが、今日は俺だけでなく善も呑んでいたようだ。
客の目当てがキャストだけじゃないってことや、俺ら経営側と話がしたくて店に来ていることも分かってはいるが、善が酒を呑む姿を他の奴に見られたくないのが正直な所だ。
そんなふうに思い返しながら自室で首飾りや指輪を外していると静かにノックがされた。
「……若」
「おぉ、なんや善」
「入ってもいいでしょうか」
「おう、ええよ」
「……っ失礼します」
善はそろそろと近くまで来るとなにか言おうとしてたようだが、口を噤んだまま直立している。
「ん……?どうした、善」
「……あの、若がよかったらなんですが……。触ってくれませんか」
「ン、ええけど……それはつまり、そういうことか?」
少しばかり回りくどい言い方になったとは思うが、善はハッとした後、ゆっくりと首を縦に一回振って応えた。
素面の善は、特に紗月と筋肉の話で盛り上がって触り合う光景だって見ているし、弟たちとのスキンシップもそれはあるが、今ここでの「触る」はその手のものとはいえない。
目の前のいじらしい顔に触れ、優しく撫でてやる。すると瞼をゆっくり閉じ、もっとくださいと言わんばかりの顔をする。それがまた可愛い。
このままこの
逞しい身体にも触れたらまた可愛い表情を見れるのだと思うと、今日も逸る鼓動が抑えられない。