状況を整理しよう。
今ここには男が一人に死体が一つ。死体というのは俺のこと。こうやって思考の渦に溺れている所からわかるように正確には死んじゃいない。霧を抜けて妙な所に迷い込んだと思ったら輩に囲まれ、首に鋭い痛みが走った次の瞬間気絶した。なにを打たれたか知らないが、目が覚めてから暫く経つのに体が動かせるようになる気配はみじんもない。眼球をキョロキョロさせて現状を把握しようとすることで精一杯だ。
その俺を担いでいる一人の男。人に似た形をしているがそうではないことを、鮮やかな青い肌が物語っている。でかいなりをしながら物音ひとつ立てず歩を進めていて、その歩みに合わせて長い朱色の尾が揺れている。この場所は人通りがないらしく、目が覚めてから猫とハムスターとでかい羽虫にしか遭遇していない。俺はどこに連れていかれるのか、そもそもここはどこなのか、誰か助けてくれないか。そんな行き場のない問いや嘆きが胸の中で踊っている。
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