幸福な日々放課後、まだ日の高い空には入道雲が浮かび、青々と繁った木々の葉は真下に濃い影を落としている。風は止み、じっとりとした暑さが、テニスコートを包む。地面は照りつける太陽の光で白く輝いていた。
俺は、日陰を見つけて座り込み、奴が現れるのを待っていた。動かずにじっとしていても、汗が頬を伝ってぽたぽたと地面に落ちる。水滴が、土の上に小さな円の模様を描き、いくつも重なりあって大きくなっていく様を、ただ見ていた。
頭上では、ジリジリと五月蝿いくらいに蝉が鳴いている。
「仁王くん、お待たせしました」
振り替えると、お前は居た。皺一つ無いユニフォーム。手入れの行き届いたラケット。眼鏡の奥の鋭い眼光。
「柳生……」
この男は、いつも、どんな時も何一つ変わらない姿で、笑みを浮かべて俺を見るのだ。
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