昨日からの雨で、アカデミーの校庭には点々と水たまりが出来ていた。アカデミーの校庭は定期的に整地されてはいるが、日常的に生徒が走り回っているし、授業では忍術の実演もあるので地面はいつもでこぼこしていた。それが幾つもの水たまりとなり、その水面に今も雨が降り注いでいる。
それでも少し雨が弱まってきたな、とイルカは校舎の一階から雨に濡れる校庭を眺めて思った。分厚い雨雲はまだ空に掛かっていて、昼過ぎだと言うのに薄暗い。
その校庭の真ん中を、小さな影が動くのが見えた。人ではなく、背の低い動物がふらふら歩いている。裏手の林から狸でも迷い込んで来たのかとイルカは思った。ずぶ濡れで泥で汚れていたからだ。
小さな狸は雨で誰もいない広い校庭を、奥の林の方から斜めに歩いて来る。その姿は明らかに疲れ切っていた。それでもよろけながら、何処かへ歩いていこうとする。
3020