ぱろ タン、タン、タン、タン。
左右違いのスニーカーと潮風で傷んだ木材が音を立てる。
「おれ、こんなことしたの初めてだよ」
「俺もだ」
友達、学校、家族、将来、全部から逃げてきて、初めて触れるものばかりだ。こうして、べたつく潮風に吹かれながら海辺の線路を歩くなんて、先生の前じゃ絶対できない。いつ電車が来るか分からないでしょう!って怒られる。ここは見晴らしが良いからいつ電車が来たって十分線路から降りる時間はあるし、おれがそうしたいと選択すれば轢かれたっていいのに。
「うわっ、と」
突然強くなった風に煽られてふらついてしまった。しばらくまともな食事をしていないし、ここまで散々歩いたからだろうか。
あ、転ける―と思った瞬間、右手をグンッと引っ張られた。
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