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    kusatta_ri

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    kusatta_ri

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    パピコルの花吐き病ネタです。
    なかなか自分では気に入っているかも?なお話です。バーッと一気に2、3時間で書いたので誤字脱字や日本語の間違いがあるかもしれませんがすみません。

    花を吐く男。一つテーブルを挟んで、僕は窓側の椅子に。そして、ドラコルルはドア側の椅子。

    窓側は午後だと日が当たって眠くなる。だからといってドア側は人の足音や話し声が響くし隙間風が不快に感じることも。でも、そんなことはもう慣れっこになった。向かい合って話し合ういつもの光景。

    「…ですから、資料にあります通り、この度はAIの搭載をして従来の無人戦闘機による空中戦を更に強化させたいと存じます。これまでの戦闘によるデータを分析して学習機能に…ごほっ、ごほっ…」
    「大丈夫かい?」
    「失礼…それでその予算がっ……ごほっ」

    端正な顔を歪めて苦しそうに何度もせき込むドラコルルの様子は今まで見たことがないほど体調不良を感じさせる。
    いつも部下たちには健康管理をしろだとか言って、自分は平気で二徹三徹、食事抜きが習慣化している。たまに食べている所を見ても、栄養補助食品やレトルト、いわゆる缶飯のようなもので生きているからだと思った僕は顔を顰めた。

    「風邪でも引いたんじゃないか。顔色も悪いし」
    「いえ…お気になさらず……ぅ…」

    ドラコルルは苦しそうなうめき声にも似た声を出して慌てて懐から出したハンカチで口を覆った。嘔吐でもしそうなのかと一瞬焦ったが、口から出たものは吐瀉物ではなかった。

    咳込みと共に口から出たものは、沢山の美しい薄桃の花だった。

    ハンカチで抑えきれなかった分が執務室の臙脂色のカーペットに撒き散らかされ、不謹慎にも臙脂と薄桃のコントラストが美しいと思った。

    「え……花?何でこれが」
    「…ごほっ、申し訳ありません。直ちに片付けます」
    「苦しそうだよ?いいよ、僕が…」
    「ああ、貴方は絶対に触れないでください」

    まだ息が整わないのかぜいぜいしながら床にしゃがんで花を集めるその姿を見て急に不安になる。また何か隠している気がする。まさか、この男に限ってわざわざこんな手品を見せてくれるような愉快な男ではないはずだ。

    「この花を処分してきますので少し席を外させていただいても?」
    「ああ、いいよ。落ち着くまで少し休んでおいで。僕もこの資料に目を通しているから」
    「お気遣いいただきありがとうございます。水を一杯飲んで参りますので」

    ドラコルルは部屋を出て行った。休憩所の自販機にでも行ったのかもしれない。少し離れているし、しばらくは帰ってこないだろう。

    ドラコルルが廊下を歩いて行ったところまでこそっと見届けて、僕はドラコルルの座っていた椅子の下の隙間を覗き込む。
    暗くてよく見えない。重たい椅子だが力を込めて押すと少し動き、やっとその下が拝めた。

    小さな可愛らしい花と、花弁が1枚。いつものドラコルルならしないような手落ちだ。あんなに慎重な男が注意力散漫になるほど体調が悪いのか。

    僕は急いで内線番号を調べて電話をかける。

    「もしもし?私ですが、衛生研究所の研究員の方に頼みたいことがありまして。大至急、調べていただきたいものがあり、電話しました。ええ…はい。それでは…」

    この官邸からすぐ横にある衛生研究所ならこの花が一体何なのかわかるはずだ。
    電話をすると、たまたま官邸に用事があって来ているスタッフがいたのでそのサンプルを渡せば調べてくれるとのことで非常に有難い。
    すぐ近くの部屋にいたようで、その研究員は思ったより早く執務室にやってきた。

    軽くティッシュで包んだそのサンプルとなる花を一つ渡し、研究員が帰ったのを見計らって僕は先程拾った1枚の花弁も同じく紙に大切に包み、自分のデスクの引き出しに入れる。
    すると、ちょうど入れ終わったところでドアを叩く音が聞こえた。

    『大統領、戻りました。失礼します』
    「はーい、入っていいよ」

    ドラコルルの体内から出たその花弁は猛々しい軍人の姿とは正反対の可憐で幼気で、僕の目に焼き付いて離れなかった。


    その日の夕方、僕は研究員の慌てたような声で研究室に呼ばれた。室長が一人で深刻そうな顔で待っていたので僕も少々身構えながら促されて椅子に腰かける。そっと出されたものはシャーレに入った先ほどの花だった。花の名前なのか、小さくゴデチアと書かれている。


    「パピ大統領、この花は一体誰が吐いたものなのですか」
    「え?」
    「これはごく普通の花ではなく、人間の体の中で作られたもの。嘔吐中枢花被性疾患という病によって引き起こされる症状の一つです。通称は花吐き病と言います」

    全く聞いたことのない病名で僕の背筋に冷たいものが走った。難しい病気なのだろうか。ドラコルルは何も言っていなかったがあの分なら自分で気づいていないわけはないし、優秀な彼なら恐らく自分でも調べているはずだ。

    僕は室長に詳細を聞く。

    「花吐き病?それはどのような病気ですか」
    「簡単に言うと片思いをこじらせて苦しくなると突然花を吐いてしまうというものです。昔から流行と潜伏を繰り返していますが」
    「……それなら、その花を吐いた人は誰かに片思いをしているということですか」
    「ええ、まさにその通りです」

    どうやらドラコルルは誰かを恋い慕っているらしい。相手が誰だかなんて見当もつかない。
    あんな仕事人間では遊ぶ時間もないだろうし、ピシア内部の人間だろうか。でも極端に女性のスタッフが少ないのもあるし、末端の人間とそんなに親しくしている様子もないはずだ。
    よく関わる人間も決まっている。一応、僕も含めて。

    1%の期待と、99%のあきらめが僕の心の中にふっと現れた。

    僕の心中を知らない室長は話しを続けた。

    「パピ大統領、この花には触れていませんか?」
    「はい。でもどうして」
    「吐かれた花に触れることで感染しますのでお気をつけて」
    「…治療法は」
    「両想いになることでのみ完治すると言われています。その証拠として最後に白銀の百合を吐けば完治となります。しかし、もともと人間の身体は植物を育てるようにはできていません。身体にかかる負担は相当と言われていて、そのうち衰弱死か花を喉に詰まらせて命を落とすことも多いです」
    「…そうですか。わかりました。ありがとう」

    そんな話を聞いたのに僕はなぜか冷静だった。

    研究室を出て、僕は少し夕日が落ちて薄暗くなった官邸内の廊下を歩き、自分の執務室に戻る。
    一人きりの執務室でなら誰も咎めないし、誰にも邪魔されない。
    僕は椅子に座り、机の引き出しを開け、ティッシュに包まれた花弁を取り出す。やはり綺麗だ。
    何となくタブレットで【ゴデチア】と検索すると、先ほどの花が映される。花言葉が小さく書いてあった。

    「変わらぬ愛、と…お慕いいたします…か」

    あんなずる賢い男からこんな可愛らしい花が、なんて想像すると逆に妖艶にすら感じた。
    そして、この花の意味が彼の心を映す鏡だと思うと苦しくなる。相手はどんなに愛されているのだろう。どんなに大切に思われているのだろう。

    僕はそんな君の変化にすら気付かない。君のことが何もわからない。

    「また一人で苦しむのか、君は。僕にも今度こそ共有させてほしい」

    僕はティッシュから薄桃の花弁を取り出し、唇に付け、口に含んで飲み込む。



    君の苦しみを、僕にも―――



    それから数日も経たないうちに、僕の身体にも変化が現れ始めた。咳込むと、花が出るようになった。とにかく色々な花が出る。
    それも、ドラコルルのことを考えたとき、見かけたとき、他の人から話を聞いたときにいちいち咳込むので業務に支障が出て困っているところだ。
    今なんて、本人が目の前にいるのだからもう咳が止まらない。

    咳込むと鮮やかな濃いピンク色の花がぽろぽろと落ちる。何度か出たことがあるので花言葉はもう調べなくたってわかっている。これはブーゲンビリア。意味はあなたしか見えない、だ。あまりに熱烈すぎる意味に思わず自分でも苦笑いした。

    「ごほっ、ごほっ…」
    「パピ大統領、貴方は」
    「え?」

    サングラス越しに鋭い視線で僕の目が射抜かれる。

    「あれほど気を付けてくださいと申しましたが」
    「何のこと」
    「先日、私が片付けそびれた花があったのでしょう。その不手際は詫びますが、触らないようにとご注意させていただきましたのに」
    「…君の花のせいだって言いたいのか?他の場所で感染したかもしれないじゃないか」
    「嘘が嫌いだと公言している貴方の、この息を吐くように嘘をつく時の顔を民に見せてやりたいですな。げほっ……げほ…」
    「別に僕は嘘を言っていないよ」

    何とでも言えばいい。だって本当のことだ。その辺に花なんて沢山あるからあくまで可能性の話でしかない。

    僕はドラコルルを無視して書類にサインする。
    これで無人戦闘機にAIを搭載する許可を出せた。
    全部のものに付けるとなるとそれなりの時間がかかってしまうのでまだしばらく後になるが、国防に少しでも役立てられるといいと思う。
    戦争なんて起こらないに限るが、やはり星を守るためには武力も必要なのだと先のクーデターから学ばせてもらったばかりなのだから。

    ちなみに、今ドラコルルが吐いた花はカランコエだ。花言葉はあなたを守る、だっただろうか。自分も苦しんでいるのに、相変わらず仕事熱心なところには頭が下がる。

    「はい、サインしたよ」
    「ええ、ありがとうございます」
    「君、また顔色が悪くなったんじゃないか。咳で眠れていないのかい」
    「睡眠時間が少ないのは元からです。貴方こそ、痩せたようだ」
    「…食事どころじゃないよ、胸は詰まったように苦しいしね」

    お互いに同じ病気になり、自分のことではなく相手を心配している辺りは僕たちはどうやら似ているかもしれない。自分の命に執着していない気がした。

    結局、すべての無人戦闘機にAIが導入されるのは半年も先になるらしかった。

    それまで、僕たちは生きているのだろうか?案を通した僕と、提案してきたドラコルルだが僕たちはその結果を見ないでそのころにはもう土の下にいるかもしれない。

    まあ、それも致し方ないが。

    それからというものの僕たちはお互いに顔を合わせるたびに、痩せただの、顔色が悪いだの、今日は何回吐いただの、まるで不健康自慢になった。老人じゃあるまいし、僕らはそんな年齢ではないというのに。でも何となくわかる気がする。体調不良の日が多くなればそんな話題しかなくなるものなのかもしれない。

    それでも、僕はドラコルルとこうやって会話できること、二人の時間を共有できることに一抹の喜びを感じている。だいぶやせ細ってしまったこの手はちょっと頼りないかもしれないけれど、君と悩みを、苦しみを分かち合いたかった。


    更に時が経って、僕が発症してから1か月になるころ。一日休暇がもらえた僕はドラコルルに護衛を頼んで久しぶりの外出をした。

    とはいっても、互いに体力が落ちすぎてしまって動き回るだけの元気がない。
    ちょっとおひさまや風に当たりに行こうと思ってピリポリスの少し離れたところにある湖を見に行ったが、二人で並んでベンチに座ってぼんやりと湖を見ているだけ。いよいよ湖周りをジョギングしている年配者にも今なら負ける自信しかない。

    「大丈夫?君の副官が心配していたよ」
    「はい、なんとか生き延びていますが。あなたこそ大臣が心配なさっていた」
    「そうか…そうだよね」

    隣のドラコルルもあの引き締まった身体はどこへやらで筋肉が落ちたようだ。二回りくらい細くなった気がする。僕も僕でもともとそんなにしっかりした身体つきではないのにさらに痩せたからか普段着ている服も緩くなってしまった。

    そんな状態でまた僕たちは咳と共に花を吐き、人の迷惑になるのでビニール袋に拾っていれるを繰り返している。傍から見たら訳の分からない子供と男の二人組だろう。

    太陽の光を受けてキラキラと輝く透き通った湖はそんな僕たちとは正反対に気力に溢れているように見える。
    木々も風を受けて青々とした木の葉を揺らし、湖の上を水鳥が飛んで小魚を捕まえて大空へと飛び立っていく。そこには確かに「生」を感じるものがあった。

    そんな湖からパワーをもらったのか、二人組の男女はボートに乗っていたが告白に成功したようで手に手を取り合っている。
    僕も本当ならドラコルルと。心からその男女がうらやましかった。

    「ごほっ…」
    「落ちましたよ、アスターが」
    「……ああ」

    花の名前と花言葉に詳しくなった僕たちだ。このピンクのアスターは、甘い夢という花言葉がある。今の僕の心境そのものだ。
    もうこの僕の想いが叶えられなくてもいい。でも、一つくらい綺麗な思い出をもらってもいいじゃないか。僕はドラコルルに話しかけた。

    「ドラコルル」
    「はい」
    「ボートに乗りたい」

    僕がこんなことを言うのは珍しいと思ったのかちょっとその目を見開いていたが、結局僕たちは一緒に乗り場へ向かった。

    小さなボートを借りて、ドラコルルが漕ぐ。でも、痩せたその身体ではきつそうだったが代わると言ってもやっぱり断られた。

    上を見てみると悠々と飛んでいく一羽の鳥が声を上げる。水のせせらぎも耳に優しく入ってきて、こうして湖の上にいると真上にあるおひさまがいつもより近くに感じられた。ボートの揺れも心地いい。でも、身体はやっぱりついてきていない。

    「ごほっ…ごほっ!」
    「大丈夫かい、ドラコルル。花の量が随分と多くなったじゃないか」
    「…この身体も少々ガタがきているようで」

    ドラコルルが吐いたのはアマリリスだった。
    赤くて透き通った花弁が重なった美しい花だ。花言葉は輝くばかりの美しさ、だったはずだ。
    湖がきれいだと思っているからだろうか。それとも、他の誰かを想っているのだろうか。今、僕とこうしている間にも。

    「げほっ!!」
    「大統領、飲み物がありますが」
    「いや、いい」

    今度僕が吐いたのは一瞬バラかと思えば赤いベゴニアだ。花言葉は片思い。
    うん、今の僕の気持ちがそのまま花となって吐き出されたに過ぎない。特段意味はないと思う。
    ドラコルルは本心を口にするようなタイプでもないのでこうやって花が教えてくれるのは有難い反面、時折僕の心を大きく揺さぶる。
    そうなればまた僕はひどく咳込んで花で窒息しそうになる。悪循環だ。

    僕たちの乗っているボートの中はあっという間にカラフルな花だらけになり、底がもう見えない状態になった。
    これが映画の撮影や雑誌のページなら映えるのかもしれないがそんな穏やかでもスタイリッシュでもない。花を吐くたびに僕たちは失恋し、命を削られている。

    ドラコルルが口を開いた。

    「齢10歳の大統領が恋煩いによる奇病で花を吐き、命を落とす最後を遂げるなんて事実は小説より奇なりですな」
    「ふふ、僕は別に後悔はないさ。君と僕のどちらが先にあの世に行くかな?」

    こんな見るからに不健康そうな二人が湖の真ん中で船に揺られ、その中は色とりどりの花で満たされているのだからそんな言葉は洒落にならないだろう。この船を事故物件にしてしまわないか業者が心配するはずだ。

    でも、ドラコルルはそれを聞いて面白そうに笑う。

    「ハハハ、あの世が本当に存在するのなら私が行くのは間違いなく地獄でしょうな。公明正大で清廉潔白な貴方は天国へ。もう二度と会うこともありますまい」
    「僕もその時は君と一緒に地獄に行くよ。君とまだ話したいことがあるからね」
    「そんなこと、今話せばいいのでは。どうせこのままいけば私も貴方も長くない」
    「…じゃあ聞くけど」

    一拍置き、僕は覚悟を決めて口を開けた。

    「…ドラコルル、君は誰に恋をしているの?」
    「貴方にいう必要はありませんな。墓場まで持っていきます」
    「もう最後なんだからいいだろ。話せと言ったのは君じゃないか」
    「…ええ、わかりました。貴方も言うのであれば」
    「うん、わかった」

    ドラコルルがオールを漕ぐ手が止まった。本当に話してくれるのだろうか。今度こそ洒落にならないでこの場所が僕の棺桶になるのかもしれない。身体的に死ぬことより、絶望して死んでいくことが怖かった。

    「ごほっ…」

    僕の口からは二種類の花が同時に出た。

    「ほう、ラベンダーとヒガンバナですか。ラベンダーは期待、ヒガンバナは恐れでしたかな」
    「……ああ」
    「私の想う相手の名を聞いて笑える期待と、自分で想い人を口に出すのが恐ろしいと」
    「…そんなわけないだろ」

    僕は懐からペン二本とメモ帳を取り出してドラコルルに渡す。互いに好きな人の名前を書いて交換ということにした。

    手渡せばドラコルルは静かにペンを走らせる。またこの男のことだから書いているふりをしてごまかすのではないかと思ったがどうやら違ったようだ。

    僕もその様子を見てサッと書いた。紙を折りたたみ、せーの、の合図でお互いの手のひらに交換した紙を手渡す。

    本当なら緊張しすぎて吐きそう。こういう場合も花が出てくるのか。

    吐く前にさっさと見てしまおうと紙を開けば几帳面な字で【教えません】の文字だった。
    またやられた。これで何度目だ。馬鹿だなあ僕は。あーあ、信用するんじゃなかった。もう今更どうでもいいけれど。

    僕が自分自身に呆れているとドラコルルが激しく咳込んだ。

    「ごほっ!ごほ…!」
    「大丈夫かい…ん?これはアイリス…?」

    手に取ってみれば深い青と紫のグラデーションが美しいアイリスだった。確か、花言葉は嬉しい知らせだっただろうか。でも、何故。
    そう考えているとドラコルルは咳込みによる苦しさだけではないのか顔を赤くして僕を見る。

    「貴方のせいでしょう。これで戦死した仲間の元へ行きそびれました」

    ドラコルルが僕に見せたのは先程僕が書いたメモだった。【今、僕の目の前にいる人】と書いたのだ。僕は正直に気持ちを書いたのだが、それが嬉しい知らせなら…。

    「じゃあ……まさか!」
    「っ……!急に立たんでください!」
    「わっ……!」

    僕が勢いよく立ち上がったせいで船体が大きく揺れ、転びそうになったところをドラコルルが受け止めてくれて難を逃れた。

    しかし、その衝撃もあってかひと際強い吐き気がまた出て僕たちはとっさに船の外に顔を向けた。

    「うっ……え?」
    「これは」

    僕たちの口から出たのは大ぶりの白銀の百合。
    そういえば、室長が言っていた。
    両想いになり、成就すれば完治する。その証拠がこの白銀の百合だと。

    どうやら僕たちの命は朽ち果てる前に助かったらしい。

    「…ドラコルル」
    「はい…」
    「……好きだよ」
    「…私もです」

    僕たちは綺麗な花だらけの船の中でしばらく重なったままになる。

    一方、その横で、白銀の百合は湖の上にゆらゆらと輝きながら二つ並んで浮かんでいた。
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