君とケーキと僕と。次の金曜日は僕の誕生日だ。大統領になる前は、毎年姉や大臣が祝ってくれていた。テーブルには2人の手料理が並んで、近しい人間だけのささやかなお誕生日パーティが開かれるのが恒例。その前は勿論両親も一緒に。
しかし、今はもう大統領となった身だ。この地位について初めての誕生日だが、当然公務は休めない。姉も大臣も仕事。それは僕も同じだが、夕方からは何とか時間が取れそうだ。
今、僕は目の前の多忙な男の時間が、少しだけ欲しいと思っている。
「ドラコルル、次の金曜日の予定は?」
「今のところ金曜日は非番ですが」
「じゃあ、夕方から会えないか?」
「ええ、構いません」
官邸内の廊下を歩きながら僕達は話をする。
わざわざ僕の誕生日だとは言わない。別にプレゼントが欲しいとか、祝ってほしいというわけではないからだ。ゆっくり2人で過ごせる時間があればそれでいい。
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