オメガバ忘羨(巣作り失敗編)番になって初めての発情期がきた魏嬰。荒い息を吐きながらせっせと広いベッドに愛しいαの服を掻き集めて巣作りを始める。……うん、初めてにしてはなかなかいい出来なのでは。藍湛に褒めてもらえるかなとムフムフ笑いながら巣の真ん中を陣取る。
ああ、でもまだ足りない。藍湛の濃い白檀と汗の混ざりあったあの清廉ながらも甘く魏嬰を誘い魅惑する香りが足りない。
魏嬰はもそもそ起き上がるとクローゼットの奥に隠していた1つの小さな箱を取り出した。
箱には「線香」と書かれている。藍湛の匂いが好きすぎて本人に何の香水をつけているのか聞いたとき「香水はつけていないが、実家ではよく香を焚いていた」と返され、何の香か聞いたところ白檀だと教わった。その後、大型ネット通販を調べたところ、香は見つからなかったが、手頃な値段で購入できる線香を見つけた。それを買ってこっそり隠していたのだ。藍湛が恋しくなったらこいつを使おう、なんて考えていたが藍湛は四六時中魏嬰の横にいてくれたし、寂しいと思う前に抱きしめていっぱい甘やかしてくれていたから出番がなかったのだ。
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