イドメネオの贖罪(シナリオ)■乗船
あなた達はとあるチケットを持って港へ向かっていた。夏の強い西日が照りつけ、濃いコントラストのついた街の向こうから潮風が吹いてくる。通りを抜けると目前に海が広がった。目的地が近いことがわかるだろう。
『イドメネオの贖罪』今回催される船上美術展のタイトルだ。あなた達はその展覧会に一般抽選枠で参加することになる。
白と金で仕立てられた豪華な船が視界に現れる。船体には「Miss Mary」と記載されている。乗船口では他の乗客と思われる人々が、列になって手荷物検査を受けていた。
あなた達も同じようにそこへ並ぶ。
《目星》
白いスーツの男が歩いているのを見かける。しかし、今彼が現れたのは船の影……海辺からではなかっただろうか?
「まったく、いつまで待たせるつもりザマス!もう良いんじゃなくって!?」
あなた達の2つ前に並んでいた、婦人が手荷物検査に痺れを切らしているようだ。
荷物が多いので時間がかかっているらしい。
「そうカリカリしなさんな、美術展に手荷物検査はつきものじゃよ」
「ンまぁ!私は絵を傷つけることなどしないザマス!」
「フォフォフォ……」
「ンもう!あーたももっとシャキシャキするザマス!」
「すんません」
婦人の荷物を検査が終わり、老人のたった風呂敷ひとつぶんの荷物はさっさと見られ、あなたたちの番がやってくる。先程の婦人のせいか、警備員はずいぶん疲れているようだ。
「検査に協力、お願いします」
あなたたちの荷物に金属探知機を掲げながら軽く中を掻き回して警備員はチェックを進める。しかし、順調にピピピと穏やかな音を鳴らしていた探知機が突然プツリと音を失ってしまった。
「……あれ」
軽く振っても小突いても探知機は返事をしない。
「……あー、すんません、故障かな」
「まあ、あらかた見終わってたし……じゃあ、お返しします。どうぞ」
あなたたちの荷物は無事返された。
「今晩のオープニングセレモニーにはぜひご出席を。楽しんで」
乗船口を示され、そのままあなた達はメアリー号に足を踏み入れる。
ザプン
ほんの一瞬、アルコールの匂いを乗せた、水気を含む重たい風に全身を撫でられた気がした。
■オープニングセレモニー
《目星/アイデア》
あのピンクの服を着た婦人が見当たらない
オードブル(前菜)も食べ、落ち着いた頃ホール内の照明がゆっくり落とされる。
主催者からの挨拶が行われるようだ。
コツコツ。静かな会場に、壇上へ歩を進める男の革靴の音だけが響いた。
「ご乗船いただいた紳士淑女の諸君、ごきげんよう!」
「この度はこの麗麗一郎主催、『イドメネオの贖罪』クルーズへお越しいただきありがとうございます!
本展ではヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの美しいオペラ、イドメネオにあやかり、海の神ネプチューンにまつわる絵画を多数用意いたしました。
皆様にもイドメネオ王のように、ネプチューンからの寵愛がありますよう願っております!
それでは、良い船旅を!」
優雅に一礼してみせた彼に拍手が送られる。美しいクラシック音楽が流れ始め、照明も明るく戻った。本格的な食事の始まりだ。
「こんばんは!一般抽選にて来て頂いた皆様だね?はじめまして、主催の麗麗一郎だ!食事の方は満足いただけているかな?」
「それは良かった!ここで出会うのもまた運命、ぜひクルーズを心ゆくまで楽しんでもらいたい!」
「このメアリー号も美しい船だ。美術展だけではなく、全ての思い出に、最愛のメアリーと甘美な時間を!」
《情報》麗一郎が教えてくれる事
・イドメネオ
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトによって作られた名作オペラ。主人公イドメネオが海の神ネプチューンに救われた際、対価として陸で一番初めに会う人間を生け贄にと違うが、イドメネオが陸に上がっていちばんに会ってしまったのは息子だった。イドメネオは最愛の息子と神との約束に挟まれてしまう。
最後にはネプチューンが二人の愛に感動して許してくれるというハッピーエンド
・メアリー号
最近リニューアルされたばかりの大人気客船。繊細で優美な内装に非常に穏やかな揺れしかない点などを賛美され「最愛の妻メアリー」と呼ばれている。
・メイン絵画『贖罪』
今回の展覧会でメインの油彩画。チケットにもデザインされている。
アベル・フォスダイクによって描かれた荒れ狂う海の絵。
ネプチューンの心を描いたと言われているが、そこに表現されている感情はなんなのか議論を呼び続けているという。
「僕は……あれは怒りだと思うがね。やはり海の神とは尊大なものだよ、我々人間よりずっと……ね」
そう言って笑っている。
すると警備員がひとり、麗一郎に駆け寄った。
「麗一郎さん、ちょっと」
「む?なんだね」
「……」
「ふむ、それは……」
2人は小声で何かを話し合ったあと、麗一郎はあなたたちににっこりと笑ってみせた。
「失礼したね、では僕もこのへんで。素敵な食事を!」
《聞き耳》
・「サラ・エリザベス・ブリッグス様が……だそうで……展示……消息……」
・(成功)麗一郎から香水とは違う海の香りが少しする
・(失敗)変わった香水の香りがした
《夜行動》
・バー
・娯楽室
・甲板
・客室
夜行動
「フォフォフォ……お若いの、楽しんでおるかえ?ワシは独り者でのう、ちとこの老人に付きおうてくれんか?」
「いやな、さっき面白い噂を聞いてのう、話したくてまらんのじゃ」
「あんた、最近このへんの海が人を呑むというのを聞いたかね?」
「まだ極秘らしいんじゃがな、どうも……人だけが呑まれるらしいんじゃよ。
海に思いを馳せた人々を乗せた船が出航するとな、夜まではじっくり、じっくり餌を吟味して待つのじゃ。
そして月が雲に隠れた瞬間!
船を波が丸呑みにする!甲板をすべり、扉を壊し、羅針盤も時計も何もかもじゃぶ、じゃぶと食む。そのまま船全体をびっしょりと濡らして……そうしたらメインディッシュじゃ。忽然と人の姿だけを消し去り、船を海上にほっぽりだすんじゃよ」
「どうじゃ?怖かったかのう」
■2日目昼
・客室
・展示室
・レストラン ご飯時のみ
・甲板 青空と海が最高!
・娯楽室
・シアター
・カフェ
・シアター
10:00〜 人生ドキュメンタリー映画
12:00~ オペラ「イドメネオ」
14:00~ 王道ラブコメ映画
18:00〜 アクション映画
自由に映画を見れる イドメネオを見ればその内容がわかる
・カフェ
ホールスタッフが1人しか居ない 疲れている
どうしてこんなにスタッフが少ないのか?などと問うと
「いや、こんな予定ではなかったのですが……ハハ、お客様にする話でもありませんよ」
あの老人のものと思われる風呂敷が机の上に忘れられている
老人のために持っていっても良い
《ヒント》
イドメネオ 神は気まぐれ 世は情け 愛する人は犠牲に出来ぬ
・レストラン
朝ごはんと昼ごはんの時間にオープンする
人が減っているかも描写はする
RPも好きにしていい
・甲板
解放的なつくりの甲板だ。何人かはパラソルの下でドリンクを楽しんでいる。潮風がさぞかし気持ちいいことだろう。
「うわぁーーん!!」
突如、大きな鳴き声が響く。見ると、クマのぬいぐるみを抱えた少女が柵の近くに座り込み泣いていた。
《情報》親の見つからない女の子
・ひとりで船を冒険していた ここで落ち合う約束の親がいつまでも来ない
・両親は芸術家。絵に興味を示していた
少女を落ち着かせる、または無視しているとひときわ強い風がふく。それにあおられ、彼女が持っていたぬいぐるみが宙を舞った。
「くまさん!」
女の子も柵から身を乗り出す。危ない!あなた達がそう言うより1歩早く、影が目の前をよぎった。一瞬遅れて、脱げた帽子が空を舞いあなた達の足元に落ちる。
「……危ないスよ」
少女を抱きとめ、柵の向こうでぬいぐるみをキャッチした警備員の青年が一言、そう言った。
「ありがとう、警備員さん」
彼女はそう言って手を振りながら甲板を後にした。
少女に手を振る警備員の手がずるむけ、血を流しているのが見えるだろう。
「え、……あー 慌ててたんで 不注意でしたね」
彼はそう言って制服のパンツで適当に血を拭った。
《目的》颯真を信頼させる
「警備員ス、武相颯真っていいます」
「や、気にしなくていいス。マスターキーでいろんな部屋横切っちゃえばスタッフルームまですぐなんで」
「まあ、絆創膏くらいしかないスけど」
・展示室
麗一郎が居る「どうぞごゆっくり!」
絵画『贖罪』 アベル・フォスダイク作
その絵は一見、グレーの絵の具がまだらに塗り付けられただけのように見えた。しかし、眺めていればいるほど、そこが荒れ狂う海だと理解させられる。
訪れる嵐、ギシギシと軋む船体、飛び交う悲鳴、怒号。まさに荒波のように、あなたたちの頭の中へ命が危ぶまれるような航海のイメージがなだれ込んでくる。
そこに現れたのは、それは名状しがたい、神……だったのだろうか。
《SANc 0/1d3》
《POW対抗ロール》
POW12との対抗ロール
失敗するとその場にぼんやりと立ち尽くしてしまう。絵を見ているのに、自分がどこを見ているか何を考えているかもわからなくなるだろう。
麗一郎がじっとこちらを見ている
部屋の隅で怯えるスタッフ
「あああ……俺も、俺もきっともう消されるんだ!どうか俺の顔を覚えていてくれ、いなくなったことがわかるように!」
「スタッフが全然足りないんだ、最初はもっと乗ってたさ!客もどんどん居なくなってる、あんた達も気づいてるだろ!?」
「無人で帰ってくる船の噂は本当だったんだ!警察も全然歯が立ってないって!」
「それに!あの絵!あの絵を見ると記憶が飛ぶんだ!最初はあんな絵じゃなかったのに!呪いだ、ネプチューンの呪いなんだ!」
「触るなぁ!触らないでくれ……!!」
■2日目夜
(颯真が麗一郎を問い詰める
様子はおかしいと思っているが入れ替わりには気づいていない
麗一郎は颯真も殺してしまおうとする)
・殺人事件の発覚
「キャーーッ!」
少女の悲鳴が響く。どうやら展示室から聞こえたようだ。にわかに船内が騒がしくなる。バタバタと展示室へ向かう人々に次ぎ、あなた達も悲鳴の元へ向かうだろう。
バタン!
勢いよく扉が開く。猛烈な鉄の匂いが潮風を蝕んで鼻に突き刺さる。
視界を占拠する赤。赤赤赤。
壁に天井に、絨毯に!赤黒い血が染み付いて部屋を覆い尽くす。
見覚えのある老人だった。彼は口からまだ生ぬるい血を吐き零し、濁った瞳は虚空を見つめもう瞬きをしない。
彼を抱きとめて呆然としているのは。
警備員の制服を真っ赤に汚した、武相颯真だった。
「何事だね!」
人混みの後ろから麗一郎が現れる。彼は颯真を見ると驚いたように目を見開いた。
「これは……どういうことだ?君は……」
「何か言うことは無いのかね」
「……」
「……そうか……」
「仕方がない、拘束させてもらおう」
麗一郎の合図で慌てて2人ほどの警備員がやってくる。
彼らは戸惑いながらも颯真を拘束し展示室を連れてでる。
颯真はただじっと黙り、唇を噛み、大人しく彼らに従って歩いた。
心理学/目星1/2/アイデア1/2
颯真はすれ違う時麗一郎を見ていたが、
何かを迷っているようだった
「展示室は閉鎖させてもらおう。皆さまお引取りを!」
麗一郎はそう言って立ち去った。人々もまばらに踵を返し、展示室からいなくなっていく。
《情報》目星
・おびただしい量の血
・窓枠に引っ掻き傷が3つ 人の爪でできたもの
《情報》アイデア
・被害者が1人で有り得る血の量ではない
《情報》医学/目星の半分
・傷口はナイフ
あんた達も気づいているんだろ!?と顔面蒼白に迫ってきた彼の様子を思い出す。そういえば、彼の姿は見えない。
まさか、本当に自分たちも?
いやでもそうよぎる頭は、窓の外に見える真っ黒な海の情報に支配されていた。
■3日目昼
あなた達が部屋を出て歩いていると、突然ドン!!と大きな音が鳴る。
「関係者以外立ち入り禁止」の扉からだ。鍵だけではなく、つっかえ棒のようなものがしてある。一間を置いて再び音が鳴る。扉が僅かに揺れていた。
「……誰かいるんスか」
それは昨夜拘束された颯真の声だった。
「出してほしいス。俺、どうしても確かめたいことがあります」
「……俺、犯人知ってます。……でも、まだ言えないス」
「お願いします」
あなた達がつっかえ棒を取ると離れて、と声をかけられる。大人しく下がると一度、二度と大きな音ともに扉が震え、三度目には革靴が勢いよくそれを蹴破り視界に現れた。
「……あざす」
颯真はそう言って軽く頭を下げた。
もう血まみれの服は着ていない。血が滲んでいるのは、昨日あなたたちが包帯を巻いてやった拳だけだった。
「俺、麗一郎さんの部屋に行きます」
「あんたらの事助けるとか、約束できないス」
「でも、何も知らず全部目を瞑るなんて絶対しねぇ」
・麗一郎の部屋
颯真のカードキーで扉を開ける。
麗一郎の部屋は拍子抜けするほどおかしな様子はなかった。まるで、ただそこで生活をしているだけのように。
・トランク
・ベッド
・テーブル
・金庫
・ベッドの下
何かがギラリと鈍く光る。
気をつけて取りだしてみると血がべっとりと着いたナイフだった。
刃先は錆びており、切れ味は相当悪くなっているだろうと予想が着く。
しかし、その刃先は丸まっており、まるで鈍器のように何度も使用されたかのような様子だった。
・トランク
日記
「○月✕日
次の標的の船が決まった。航行主催も馬鹿そうな金持ちで、計画に修正も警戒も必要ないだろう。
もうそろそろ生贄の数も十分だろうか。胸が高鳴る。今回の船では美術展を催すらしい。魔床も絵にしてしまえばいいだろう。絵を傷つける鑑賞客など居まい」
「○月✕日
まったく、ただのボンボンかと思ったが意外と手こずった。成り代わりが当日になってしまったが、まあいいだろう。
魔床もいつもより効率よく人の気を集めている。それにインドアの文化人サマばかりがお客ときた。仕留めるのも簡単だろうな。知能のある人間の方が、あのお方も食べがいがあるだろう。」
「○月✕日
あの警備員の男、俺に気づいているのか?処分した方がいいな」
・金庫
颯真が番号を知っている
彼が真っ先に探索するのもここ。
中には適当に折りたたまれ傷んだ美しい絵画がある
穏やかにきらめく海が親子ふたりを祝福する見事な絵画だった。
「……あの人が、絵をこんな扱いするわけ、ないスよね」
・テーブル メモ
"Ph'nglui mglw'nafh Cthulhu R'lyeh wgah'nagl fhtagn"
(死せるクトゥルー、ルルイエの館にて、夢見るままに待ちいたり)
■3日目夜
絵画を壊す
・ライターは持ち込み禁止
・探索者しか持っていないにしたい
「待て!」
上品さとは縁もない怒号が響く。
髪を振り乱し、息を荒らげた"麗一郎"がそこにはいる。目が鈍く光り、見え隠れする歯は尖っていた。
「その絵は俺のものだぞ、触るな!」
"麗一郎"が1歩踏み込み手を伸ばす。しかしそれもあなた達には届かない。
ぬいぐるみが空を舞った時と同じだ。あなたたちの前を影が横切る。
バシ!
乾いた音を立てて、颯真の手が"麗一郎"の腕を掴んだ。
今の隙になら、あなた達はたったひとつなんでも行動を取れる!
「やめろ!やめろおお!!」
ライターの簡素な着火音がいやに大きく聞こえた。
暗い部屋に火花が明滅する、僅かな熱気があなたたちの手元に宿る。
どろりどろりと熱を浴びた絵の具が溶けていく。いや、それは果たして絵の具だったのだろうか?鼻をつんざく臭いは潮か、鉄か、あなたたちの知る限りオイルの匂いではない。
燃え上がる音は海鳴りにも、人の呻きにも、"何よりもおおいなる者"の怒声にも聞こえた。許さまい、許さまいと嘆き唸りその怒りが天井を焦がす。
黒煙に包まれるあなた達の気道を侵したのは確かな「負の感情」だった。
SANc(1d3/1d10)
「許さん!許さんぞ、お前たちのような下賎な人間ごときが……!!」
"彼"を中心に黒煙がうずまく。あなたたちの頭上に漂っていたはずの煙は台風のように彼へと吸い込まれていった。
バリバリ、バリと"彼"の皮膚がひび割れていく。その隙間へ隙間へと負が染み込む。
そのまま彼はあなた達へ襲いかかってくる!
麗一郎
HP:14 MP:
STR:10 DEX10
キック25% こぶし50%
呪文
萎縮 MPの数だけダメージを与える
深淵の息 1R 体を海水で満たし溺れさせる
POWロールに失敗すると1d8
麗一郎が偽物であることをちゃんと颯真に話していた場合戦力になってくれる
話さないばあでも盾にはなってくれる
エンディング
・絵画を燃やし、"麗一郎"を倒した
「ああ、ああ!そんな、馬鹿な!」
"彼"はよろめき、後ずさってそのまま甲板へと身を乗り出す。月の光が、その姿を照らしだした。
パキパキと割れていた肌が、少しずつ、暗く、暗く色づく。ひび割れは深くなり、波紋のようにひろがって、まるで鱗のように変化していった。
「う"ああ!ああ!かは、ひゅ」
耳がバキバキとその骨をのばし、皮膚を食い破り新たにエラが生える。頭を抑える手は醜く肥大し、指と指の間に薄く血色のない膜が貼られていく。
折り曲げた背は膨張し、人間の皮膚よりもずっと分厚く、青白く染まる。ゴリ、ゴリゴリと内部で骨が動く音がする。
「あ"あ"あ"ーーっ!!」
"彼"が唸り空を煽る!その月光が反射し、ぎらりと鈍く光る瞳!もはやそれは人のものではなかった。
ペタリ、ペタリ、ペタリ。1歩ずつ、1歩ずつよろめく。
最後に"彼"が手を伸ばしたのは果たしてどこに向かってだったのか。
柵を乗り越え、"彼"の姿が視界から消える。
ぼちゃん
重い水の音が、"彼"は海に飲み込まれたことを思い知らせた。
その後、それ以上人が消えることはなく、船は無事帰港した。
港の近くでは本物の麗麗一郎が気を失って倒れているのが見つかったそうだが、彼も命に別状はないという。
今回のことを、颯真は素直に警察に話したが、誰も信じてはくれなかったと言っていた。
海はただ穏やかに、夏の陽射しを受け煌めいているだけだった。
END 「イドメネオの祝福」
生還報酬
SAN回復1d10
・絵画を燃やさなかった/颯真、"麗一郎"のいずれかが戦闘不能になった
ずぞぞ、ゾゾゾ…… 黒い靄が"彼"の周りを蠢き続ける。
ゴキ!ゴキゴキ!
それは骨の音なのか肉の音なのか、得体の知れない音が鳴り響く。
「くく、ふははは……!!」
「無駄なあがきを!全く、笑わせてくれる!」
ぬらり。人のものではなくなっていく彼の皮膚が水に濡れたように光る。
いやでも視界に突き刺さる、彼の体に浮かぶ鱗が、生えるエラが、大きくなる体躯が!
「我が主にこの世界を!」
高らかに彼が笑うと同時にごぽり、と音がした。
一体どこから?なぜ、今あなたの胸は重く苦しいのか?どうして、気道が痛いのか?
なぜ、貴方は船の上なのに、溺れているのだろう。
苦しさに地に伏すと口からばしゃりと水が飛び出る。鼻に通るのは強い潮の匂い。
揺蕩う水面を眺めるように、生理的な涙が幕を張った視界に、"彼"はまだそこに立っていた。
END 「イドメネオの懲罰」