君の好き嫌いを克服させる、唯一の小気味いい咀嚼音が二人分。それと、一冊の本がごくゆっくりと捲られる音だけが部屋に響く。
外はよく晴れているにも関わらず、年頃の少年二人――行秋と重雲は、使用人の出入りすらない行秋の自室で遅い昼餉を摂っていた。
乱雑に置かれた本の山を避けて作ったスペースに用意したテーブル、大した数もない皿が決して大きくないその卓上に所狭しと並べられており、どの皿にもスティック状に刻まれた新鮮な野菜が盛り付けられている。
今朝、石門の茶屋で行秋と待ち合わせの約束をしていた筈の重雲が、どういう訳か璃月とは真逆のモンド方面から、大量の採れたて野菜を手に石門へ到着した。アカツキワイナリー所縁の者から半ば押し付けられるように頂戴したという。
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