しおんMAIKINGシネマスターとスパイの渉英〜〜〜の進捗(終わるのか?)かつん、かつんと踵を鳴らしながら一人の男が廊下を進んでいる。 高い天井と長さも相まって音は反響し、廊下の奥から帰ってきた音は男の耳を楽しませた。 男に同調するように歩く度にホルスターのベルトも音を鳴らす。恐らくベルトが緩んでしまっているのだろう。通常時なら直ぐに直すところだが、自身を追いかけるように鳴るベルトに気分がいい。男はベルトをそのままに、より複雑な音を鳴らしながら廊下を進んでいく。 質の良い絨毯の端、大理石が剥き出しになっている部分をこうして歩くのは、この広い屋敷を探してもこの男しか居ないだろう。そもそも、ただの廊下をさながらブロードウェイの大舞台の上のようにステップを踏みながら歩く人間はこの広い街でもなかなかいないかもしれない。 度々男の上司や同僚には落ち着きを持つようにと呆れられていたが、元来じっとしていられない質のためまともに聞き入れたことは未だなかった。 時折絨毯の上へ舞い降りたり、気まぐれにターンをしてみたりしながら廊下を移動─いや、もはやショウを行っていた男だが、廊下の終着にたどり着きついにショウはフィナーレを迎えた。 ガラス張りの廊下を抜けて、 899 1