雨あがりの番傘「うわ、また雨か」
蕎麦屋から出るなり髪を濡らした水滴に私はげんなりして声を漏らした。
スメールへ向かう日が決まるまで稲妻に滞在することとしたのだが、どうやら"梅雨"が訪れたらしいのだ。このジメジメした鬱陶しい気候はひと月ほど続くそうで、想像しただけで嫌気が差した。
慣れた様子で歩く稲妻人を見る。着物とやらは一見、さぞ暑かろうと思える格好なのだけれど。
『涼しいでござるよ、先人の知恵が詰まっておる』
のほほんとした、とある少年の台詞が蘇った。
稲妻での長旅に大いに関わりがあった男の子だ。年齢の割にどっしりと構えていて、剣の腕も頭脳も右に出る者はそういない。
とても頼りになる……が、時折真顔で嘘をつきからかってくる為油断は禁物だ。
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