時任の誕生日話(リハビリ) 20XX年、夏の終わり。午後6時。東京都某所某ビル。
家から職場に出勤してくる時間ですら汗をかくほどにはまだまだ気温が高い。データを集めるためなら、ガジェット開発のためならいくらでも外へ出ていくけれど、基本的にはどこまでもインドア派の湧にとっては地獄のような季節である。
それでも季節は確実に進んでいる。 その証拠に、大葉が俺の生誕祭だなんだと豪語していた頃にはしつこいほどにいつまでも明るく、ギラギラと照り付け部屋の温度を上げていた西日は、すっかり影を潜めていた。
時任の努力でゴーストスナイパーズはプレハブ小屋などではなく、ビルの一角に事務所を据えることこそできているものの、周りはさらに高いビルに囲まれている区域だ。窓から見える空は狭い。冷房が必要以上に効いた部屋、窓の外ではビルが黒く染まりつつあった。
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