ふわりと意識が浮かび上がって目を開く。電気の消された室内。肌に馴染んだシーツ。そこにある熱の名残。
身を起こせばスプリングが軽く軋んで、私はベッドから足を下ろした。
先ほど見ていた夢の中。何かとても大事なものを、忘れてしまった何かを、私はさも当然のように知っていた気がするけれど、それは霞のように溶け消えて既に形をなさなかった。
夢の内容を反芻しながら、先ほどまでいたはずの彼の行く先に考えを巡らせる。
結論は出ないまま足早に廊下へ向かう。角を曲がったところで月の光に照らされた青く輝く冠に惹き付けられた。
「オベロン...!」
振り向いた彼の顔を見て、その明らかに皺の刻まれた眉間を認識して私は足を止めた。飛び跳ねていた心が急速に冷えていく。
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