みずふぉびあ 絞首恐怖症 ネクタイが、怖い。
というより、首を絞め付けられるのが怖い。ワイシャツはまだ良いのだが、さらに何か身につけようとすると、なぜか抵抗感が出るのだ。脂汗を流し、勝手に体が震えて呼吸が荒くなる。
以前はそんな事はなかったが……いつからなのかもはっきりしない。もしかしたら、あの村に行ってからかもしれないが、あの時の事はよく覚えていないのだ。
俺はあれから家に戻ってくる事ができたが、前はバリバリこなしていた仕事が手につかなくなっていた。書類に目を通したり営業に行ったりしても、いつの間にかぼんやりする事が多くなっている。
ふと自分の机を見ると、お茶がなかった。両側の同僚達の前には置いてあるのに。
「あの、」
事務の女の子に声をかけても、知らんぷりしている。仕方がないので自分でお茶を入れた。
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