Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    魔法少女俺氏

    @uta__syachiku_

    アナログがメイン
    倉庫みたいなところ

    リスイン方法は固定ツイにて

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💜 💛 🎡 📱
    POIPOI 41

    魔法少女俺氏

    ☆quiet follow

    人狼のような、そうでもないようなもの
    ちょっと喘いじゃったし、ちょっと吐かせちゃった

    思いついたから書いた拙いもの

    🎈🌟(人狼…)その日はいつもと違った

    何度目かの夏休み、決して栄えているとは言えない村で
    いつも通り、街に入院した病弱な妹の為に両親が出稼ぎに行き
    いつも通り、家にひとりのオレは森へと暇つぶしに遊びに行き
    いつも通り、心配させない為に両親が帰ってくる前に家路につく


    …そんな、オレにとってのいつも通りの日常


    だが、今日は違った

    最近は夜に動物達が山から下りてるとかなんとか?とりあえず物騒だからという理由で村長さんから“夜に出歩くな”と回覧板が届いた
    遊びに行くなら両親に早めに帰ってくるんだよ、と釘を刺された



    森の奥――そこがオレの秘密の遊び場である――そこは自然豊かではあるが、あまりにも森の奥過ぎて多くの動物達も居た
    そのために村の大人達は“危ないから”と子供達を近づけさせなかった
    そんな秘密の遊び場に、オレより少し背が高く、オレとあまり歳の離れていなさそうな、…美しい顔立ちの、美しい髪の色をした、村では見かけない格好をした子供が居た
    「…なに、を…しているんだ。…ここは、あぶないんだぞ…?」
    「……?」
    首をコテン、と傾げるだけで、その子供はオレをじっと――いつか妹と見た、黄金色の、綺麗な夕陽の色をした瞳で見つめている
    おそらく“そんなあぶない所に来てるお前も大概だろう”とでも思っているんだろう

    …はぁ…まぁ、たまには妹や村の誰か以外と遊ぶか
    そのうち病気を治したさきへの思い出話になるしな!

    「おまえも、ひとりなのか?だったらオレと遊ぼう!安心しろ、ここらのことは何度も遊んでいるからな。えぇと、“おおぶね”?にのった?つもりで来い!」
    いつか、妹に見せるための、昔村にやってきた“さぁかす”のかっこいい人のしていたポーズの真似をする
    そんなオレを見て、やっとその子供は“ふふっ”と笑った

    「…ぼ、ぼく、は、るい。」
    「―?る…い、ルイと言うのか!良い名前だな!オレの名前はツカサだ!よろしくな、ルイ!」
    辿々しく言葉を紡ぐルイは、その夕陽色の瞳をゆっくりと細めて―背筋がぞわっとするほどに―「よろしくね、ツカサ君。」と言った

    とっぷりと陽が暮れるまでルイと遊んだ
    とても充実した一日だった
    帰るのが惜しい程に…だが、もう帰らなければ
    オレの少しボロい…動きやすい服と違って、ルイは街で見かけたような綺麗な服を着ていた
    にもかかわらずオレと一緒に山を駆け上がり木々を跳び移った

    「ルイ、すごいな!さっきの木を登るコツ!あれならさきにも…妹にも教えられるぞ!」
    「フフッ…それは良かった。ツカサ君の身体能力も飲み込みの速さも…凄いね、よくついてこれたね。」
    村への帰り道、ぱちぱちと手を叩き、ルイはオレを撫でた
    少し恥ずかしいが…久しぶりに撫でられたな……父さんも母さんも、さきにかかりっきりだから…
    「なぁ…ルイ、もっと撫でてくれないか…?なんだか心地が良いんだ。」
    「うん?フフッ…良いよ、お安い御用さ。」
    おいで、といったルイの腕の中に飛び込む
    大きな腕で包まれると同時に、ふわっとルイの匂いにも包まれた
    森の中を駆け回った為に少し汗臭くて…少し…ケモノ、臭くて……?

    ――ガリッ

    「―いっ」
    いま…首、噛まれ…
    「あ…すまない、ツカサ君。」
    痛みからバッとルイの腕の中から離れたオレの目に、ルイの少し悲しそうな顔が映った
    ―いわく、この“首をあまがみする”?という行為はルイの住んでいる集落においての一種の甘え行為なのだそうで―
    「…なんだ、別にオレのことが嫌いなわけではないのだな?」
    ホッとした、きらわれたのかと…
    どうやらこの一日でオレの中のルイへの評価は最高レベルになったようで
    そんなルイに嫌われるのが、とても、怖く、て…
    「もちろんだよ、ツカサ君。僕がツカサ君のこと嫌いになるわけないだろ?」
    オレを見つめるルイの目が…瞳が、にっこりと細められて、まるで、獲物を見つけた獣のようで、ルイの、瞳が…あか、い…?
    「ル、イ…?」
    「嗚呼、ツカサ君!どうやら僕はツカサ君の事が好きになってしまったようだよ。ほら、鼓動がこんなにもはやくなって、どこにも、誰にもツカサ君の事を渡したくない。ねぇ、ツカサ君。僕はツカサ君を愛している。どうしようもなく、とてつもなく、ね。ツカサ君の為ならなんでもできる。なんだってするさ。…だから、ツカサ君。」
    僕の手を取って?
    僕と、俺と一緒に、僕の住む集落に行こう?

    ギュッと抱きしめられて、甘く、耳が蕩けるような声で、急に饒舌になるルイの顔は興奮してるのか、頬が朱くて、息遣いも少し荒かった
    ルイに噛まれた首が、いつの間にか熱をもっていた

    「オレ、オレは…」
    ルイとの一日は楽しかった
    本当に今日初めて会ったのかというくらいに
    このまま居たなら、どんなに楽しいだろうか

    「すまない、ルイ。少し、考えさせてくれ…」
    「うん、待ってる。待ってるよ。それに…」

    ――それに、もうすぐ、俺のところに、来てくれるはずだし、ね?


    またね、と挨拶を交わし、ルイと別れた
    顔のいろんなところが熱い
    まるでオレ自身が湯たんぽになったようだ
    熱すぎるほどだが…この熱さは嫌いじゃないな
    ふんふんと鼻歌を歌い、家に帰り、まだ帰って来てなかった両親の為に夕食を作る
    ―今日は…シチューにするか
    そのうち両親も帰って来て―さきはまだ居ないが―いただきます、と食と神に感謝し、シチューをいただく
    もぐもぐと頬張り…うむ、今日のシチューもうまくできたな、と独りごちる
    いつでもさきに振る舞えるな!父さんにも母さんにも褒められてしまったぞ
    上機嫌で後片付けをして、湯に浸かり、ベッドに眠る
    ―ルイにも、ぜひとも食べてもらいたいな……そう思っているうちに、夢の中に堕ちていく





    ――♪―――♫♪―

    …ん…うた…きれい、な…うた…?こんな、よるおそくに…?あれ…?いまって…よる?これは、ゆめ…?ゆめ、かな…?

    空が、窓の外が本来の空の色をしていなかった
    月もこんなに大きく、そしてこんなに紅くはなかったはずだ
    心なしか、身体もふわふわしていた
    だからこれは夢なのだと
    そう、思った

    歌を、綺麗な歌をもっと近くで聴こうと家の外に出た
    外に出て気がついたが、歌の他に甘い香りがしていた
    父さんに街で買って貰ったお菓子のお土産より、母さんに作って貰ったおやつより
    もっと、ずっと甘い、その香りだけでお腹が空いてしまう程に魅力的で…

    夢の中の家並みは村と同じだった
    夢の中だからこんなものだろう、わかりやすくて良いな
    隣の家にお邪魔してみた
    ……街で見かけた、人型の、じんじゃーまん?クッキー?がベッドで寝ていた
    現実にはもともとその家には、四人家族が居た
    確認したところ、この家にも四人…四枚のクッキーが、それぞれのベッドで寝ていた
    …どうやら甘い香りはこのクッキーからするようで……

    ――ゆめの、なか、だから、これ、は…オレ、の…?

    その家の中で一番小さめのクッキーが寝ているベッドの前に立ち

    「―いただき、ま、す。」

    ――サクッ…サクッ…サクサク…

    おいしい、このクッキー、すごく、あまくて、なんまいでも、たべられそう
    もっと、もっと、

    フラフラと、夢遊病の人のように、何かに惹き寄せられるように部屋を出ては入るを繰り返す
    そうしてツカサはその家に居たクッキー達を食べきった
    何故か身体中があかいナニカで汚れていたから、その家の汲み置かれた井戸水を借りた
    口をゆすぎ、服の汚れも落ちた頃にはもう、不思議な色をした空の向こうが白んでいた

    そろそろ、あさ…?かえらな、きゃ…?おこられるまえに、かえらなきゃ…


    隣の家から自分の家へ、自分の部屋へ
    ベッドの中に潜り込み、明日は何をして遊ぼうか、と想いを馳せながら眠る



    窓から射し込む朝日に目をしかめてると、外が騒がしかった
    井戸端会議に参加していた両親の話によると
    曰く『うちの隣である四人家族全員が、寝ている間に獣らしきものに無惨にも喰い荒らされていた』という
    隣家故に父さんも母さんも警戒していた
    …今日は森に遊びに行けなさそう、だな…

    ルイに、会いたかったな…

    普段なら朝ごはんを迎える為に空いてるお腹は、不思議と空いていなかった

    その日は勉強や、体力作りなどをして過ごし、危ないからと一日家に居てくれた母親の手料理を久しぶりに味わった
    …久しぶりだった為か、以前とは味が違っていた気がした

    急にさきの様子が変わったと街の医師から連絡を受けたようで、父さんと母さんは出かけて行った
    留守番も慣れたものだ、安心してさきの所に行ってくれ、と心配そうな両親に笑う
    眠る時にどこからか視線を感じたけれど、頭を酷使した為か、すんなりと睡魔に身を任せてしまった
    もう、噛まれた首筋は痛みも痕もなかった


    「フフッ…そろそろ、かな…?」


    また、ゆめを、あのゆめを、みた、みていた
    またベッドの中に居て
    また空の色は不思議なままで
    またあの甘い香りはふんわりと漂っていて
    まだあの綺麗な歌が聴こえている

    きょうは、あの、うた…ききに、いきたい、な…

    ふらふらと外に出て、静まった隣家を通り抜け…
    「――」
    外に、あの人型のクッキーが出歩いて居たのだ
    大小二人組…二枚組?どちらにせよ、今のツカサのお腹は夕飯をたらふく食べてぱんぱんの筈なのに
    く〜きゅるる、と空腹を伝えていた

    まずは…おおきい、ほうから
    あたまのぶぶんに、ねらいをさだめて、かたを、つかんで、おおきな、おくちで
    「―いただき、ます。」
    …サクッ…サク、サク…

    『ーッーーー!ーーーーーー!!!』

    隣に居たクッキーが何かを叫びながらツカサにむかってポカポカと殴ってくる
    夢の中のはずなのに、ちゃんと人に殴られているようで…?
    「…いた、い…?…い、たい、やめて、よ……!」
    食べかけのクッキーを地面に放り――その際に“ドチャッ”っという音がした――いまだツカサを殴り続けているそのクッキーの腕を

    ぱきり

    『…ー…ーーーッ』

    なにか、しゃべって、る…?
    「―あは、くっきーが、しゃべってる、おかしい、の」
    だって、オレに、たべられるために、そこに、いたんでしょ?
    「ちゃんと、キミも、たべて、あげるから。」
    だから、そこで、まってて?

    にっこりと笑って、地面に放ったクッキーを持ち上げようとして――
    「やぁ、ツカサ君。こんばんは、良い夜だね。」
    「…?る、い…?るい…!」

    クッキー達のことなど最初から居なかったように見向きもせず、月に照らされた―紅い瞳をしている―ルイに飛び付く
    「るい、このへんにきれいなうたがきこえて…!…る、い?」
    「どうして今日は森に来てくれなかっ……うた?あぁ、これらの叫び声のことかい?それとも、最近僕が歌っていたことかなぁ?後者だと嬉しいなぁ…!」
    うっとりと笑うその姿はとても―恐ろしい程に―幻想的で、なにより、

    「…るい?あたまの、ふあふわ…?して…?」
    ―それに、腰にはしっぽのような…?
    「うん?…あぁ、これかい?それなら…」

    ツカサ君にも、立派なのが、生えているじゃないか

    「――え…?」
    オレは、にんげんだから、そんな、いぬみたいな、

    「あ、れ…?これ…?」
    「フフッ、アハハ!おはよう、そしてようこそ!ツカサ君!」
    これでようやく僕のものになってくれる、とルイが恍惚の笑みを浮かべてツカサを抱きしめ、確認するように撫で回す
    今まで気が付かなかったその耳に、尻尾を触られて
    「んっ…ふぁ、…ん、は……や、ぁッ…!や、やめ、る…ぃ、…ぁんッ」
    ゾクゾクっと、未知の感覚が身を駆け回る
    撫で回されて立てなくなったツカサを、そのままいとも容易くひょいっとルイは抱き上げる
    朦朧とした表情で顔を赤らめ、肩で息をしているツカサの口にひとつ、触れるだけのキスを落とし
    「―ここだと…目立ちそうだねぇ…」
    これだけ騒いだんだ、深夜とはいえ誰かしらが出てきてしまう
    いまだ騒ぎ続けている“クッキー”を、まるで異物を見るような表情を浮かべながら“グシャッ”と踏み潰した

    「る、い…?どこ、に、いくん、だ…?」
    「ん〜?とりあえず、森、かなぁ…川でその汚れを落とさなきゃね?」
    「よご、れ…?」
    「…あれ、まだ寝ぼけてるのかな?かわいいなぁ、ツカサ君は。……だって―」
    ―だってツカサ君、すごく血で汚れているし、その姿はとてもじゃないけど“ニンゲン”には見えないよ?
    それでどうやって帰るつもりだい?と問われ、ようやく意識が覚醒した
    「…え、血…?なん、で――ッ!うぐェッ!!」
    急に口の中が血の味で溢れ、おもわず吐瀉してしまった
    「おや、無意識だったのかい?素晴らしいよツカサ君!ツカサ君には才能があるよ!」
    「ぜぇ…はぁ…はッ、さい、のうって、なん、だ…!それに、ルイ…!おまえは…ッ!」
    一体、何者なんだ、と
    オレはどうなってしまったんだ、と生理的に発生した涙目で訴える
    「僕かい?…うーん、ニンゲン共の言葉を借りるなら…」

    ――僕は“人狼”だよ
    そしてツカサ君もさ、とにこやかにオレに笑いかける
    「僕がツカサ君を人狼にしたんだ。一目見たとき、ぜひとも番に、僕の伴侶に迎えたくてね、…あぁ、大丈夫さ。別に子供が欲しいわけじゃないよ?いや、居ても嬉しいんだけど…僕が欲しかったのはツカサ君だから。」
    そう饒舌に語るルイを、どうしてか、恐ろしいはずなのに、逃げなければいけないのに、
    “ツカサ君、好きだよ、愛してるよ、ツカサ君”と、黄金色の夕陽から真っ赤に染まった夕陽色になったその瞳で、興奮したような、うっとりした表情で生まれたての狼の耳元で囁くルイを

    とても、愛おしく思えてしまって――

    「…ルイ、オレも、オレも、ルイのことが、好きだ。今日、森で、会えたら、オレを、連れてってくれって、頼もうと…ンむぅッ」
    涙によって辿々しく紡がれた告白は、悲しいかな、ルイの唇で押さえ込まれてしまった
    「―ん…は、ぁ、嬉しいよ、ツカサ君!これで僕らは番だね!」
    「〜~ッ!!ルイのばか!!最後まで言わせろ!」



    ルイと出会った時からもう、オレはおかしくなってしまったのだろう
    あの不思議な夜に食べていたものは…人間だ
    危険な獣は、オレだったんだ
    もうここには居られないだろう
    …すまない、さき
    …すまない、父さん、母さん
    ……すまない、村のみんな、食べてしまった人達も

    ――けれど、今はなにも感じないんだ
    …ただの食料だと、そう、思ってしまう
    ハハッと乾いた嘲笑いを一つ、零して


    少し先で待つ、愛する伴侶の元へと駆け出した
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    🌋🌋🌋🌋🌋🌋🌋🌋🌋🌋
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works