やさしいおかあさま おかあさまはずっとずっとずうっと昔からメリニにいらっしゃるそうです。
僕のおじいさまのおじいさまのおじいさまのおじいさまの……とても古くからメリニで顧問魔術師をなさっています。
メリニの王族の子たちはみな、おかあさまを乳母として育ちました。
僕には弟が二人と妹が一人いますが、乳飲み子の妹を寝かしつけるおかあさまの歌声が聞こえるたびに、僕もああしておかあさまにうたを歌って寝かしつけていただいたことを思い出すのです。まだおかあさまに甘えたい気持ちはありますが、僕は長兄なので、弟に譲ってあげます。
僕にとって実の母である、今の王様、お父様のお后は、妹を出産してしばらくして亡くなってしまわれました。
おかあさまはとても嘆いて、国の誰よりも泣いていたのを覚えています。僕も上の弟もつられて、たくさん泣きました。下の弟はまだ幼く、死んでしまうということが理解できないようでした。妹は無垢な顔をしていました。時折むずがっては泣きましたが、おかあさまが泣きながらもあやしていました。
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