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    C100既刊(C101でも配布予定です)
    【吸血鬼すぐ死ぬ夢小説】ロナルド×女夢主
    サイズ:B5(コピー本)、ページ数:16、配布価格:300円
    ※サンプルの形式と実際の書式は異なります

    【注意事項】
     夢主→名前、容姿などの設定は特になし、ロナルドの妹と同い年。
     キャラ崩壊、解釈違いなどについては一切責任を負えません。

    #夢小説
    dreamNovel
    #C101
    #サンプル
    sample
    #94プラス
    94Plus
    #94夢
    94Dreams
    #ロナルド
    ronald.
    #お品書き

    【冒頭サンプル】今はまだ、名前のない関係出会い Side.she

     星ひとつない曇空と眼下に広がる真っ黒な水面。境目まで曖昧でジィーっと見ていると吸い込まれて消えてしまえそうな気がした。
    「……ぁ……いっ! なぁ! 大丈夫か?」
     欄干に手をかけてぼんやりとしていた私にその人は声をかけていたみたいだった。
    「……ぁ」
     街頭だってろくに無いのに、その人の周りだけキラキラ輝いて見えた。白銀の髪が隠れている月のようで、私を現実に引き戻していく。
    「——あの」
     不安げに揺れる宝石みたいに綺麗な瞳に私が映っていた。
    「身投げなんて良くないですよ! 何か悩みがあるなら、僕で良かったらお話くらい聞きますし!」
     端正な顔を歪めて必死に言い募る彼に思わず笑ってしまった。
    「身投げなんてするつもりないですよ、ただ私も真っ黒になって消えちゃえたらなぁって思ってただけです。消えてなくなっちゃいたいなぁってたまに考えませんか?」
     クスクス笑いながら告げると、その人はさらに慌て出した。


    「えーっと、自殺する気はないけど消えちゃいたかった……ってことか?」
     困惑した様子の彼は私の言葉をなんとか咀嚼しようとしているようだった。しばらく眺めていると一瞬遠くを見つめてウン、と大きく頷く。深く考えるのをやめたらしい彼は、ゴホンと一つ咳ばらいをした。
    「ぁーーっと。とりあえず! こんな夜中に女の子が一人でいたら色んな意味で危ないですよ」
     色んな意味、という言葉に脳内で痴漢・不審者・露出狂・ストーカー等の単語が目の前の彼を中心に盆踊りをはじめる。サァっと血の気が引いて、刺激しないようにゆっくり後ずさった。
    「ちっ違う! そうだけど! 違う! 俺が言いたかったのは吸血鬼とか不審者とかで!」
     慌て出すところが余計に怪しくて、脳内の盆踊りが二倍速になる。
    「俺一応ちゃんとした吸血鬼(バンパイア)退治人(ハンター)だから! 怪しいものじゃないから! ほらっ」
     眼前に差し出されたスマホを見ると“吸血鬼(バンパイア)退治人(ハンター) ロナルド”の検索結果と彼の顔が映し出されていた。


    「疑っちゃってごめんなさい。退治人(ハンター)さんだったんですね」
    「いやいや、不安にさせるようなことを言ったのは俺の方だし」
     困ったように笑う彼からは善人オーラが漂っていて、さっき脳内で不名誉な盆踊りで囲ってしまったのが申し訳なくなってきた。
    「じゃあ、行こうか」
     しゅんとしていると、眼前に大きな手が差し出された。
    「え」
    「送ってくよ」
    「……ありがとうございます」
     差し出された手に手を重ねると、それまでスマートだった彼の様子が一変した。顔は一瞬でゆでだこみたいになって視線が泳いで目が合わない。ギギギと歩き出す姿は不出来なロボットを彷彿とさせた。
    「あの、どうしたんですか?」
     尋ねずにはいられなくて、顔をのぞき込むと彼は大きく飛びのいた。
    「い、ぃやぁ……、カッコつけてエスコートしようとしてみたけど、女の子と手を繋いだことなんてなくてぇ」
     消え入りそうな声で告げられた内容を反芻する。
    「え、嘘ですよね?」
     悲しげな瞳が嘘ではないと告げていた。
    「あ、ごめんなさい。ロナルドさん、モテそうだから意外で! でも、私も手を繋ぐなんて慣れてないから、大丈夫ですよ」
     私とこの端正な顔を同軸に並べるなんてそっちの方が失礼だったかな
    「そ、そう?」
     あ、大丈夫みたい。
    「はい、じゃあとりあえず雑談でもしながら行きましょうか」
     なんとなくロナルドさんが気にしそうな気がしたから、立場が逆転してしまったことには気付かなかったことにした。


     道中、妹さんと同い年だとわかると、ロナルドさんの表情が一気に和らいだ。その様子から、妹さんのことが好きなのだと伝わってきた。
    「妹さん……ロナルドさんみたいなお兄さんがいてうらやましいです」
    「そ、そう?」
     ぎこちない笑みを浮かべて伺うように視線を寄越す彼に笑って頷く。いかにも褒められなれていない反応がおかしくて、笑っちゃいけないと思うのに堪えきれない。
    「なっ! 笑わなくてもいいだろ!」
    「ふふ、ごめんなさい」
     本当におかしな人だ。派手な顔立ちとは裏腹に、繊細で優しい人。
     こんな素敵な人がお兄ちゃんだなんて本当に妹さんが羨ましい。


     ロナルドさんの話は面白くて、気が付くと前方に見慣れた赤茶色の屋根が見えた。
    「あ、あそこの二階が私の部屋です」
    もう着いちゃったんだ。
    「じゃあな、こんな深夜にもうフラフラすんなよ」
     すっかり砕けた口調の彼は妹にでも注意するかのように、ポンポンと優しい手つきで頭を撫でて笑う。
    ゆっくり離れていく手が、向けられた背中が、“寂しい”と感じた。
    「わっ」
     気づいたら、赤いジャケットの裾を思い切り引っ張っていた。
    「ど、どうした?」
     のけぞったまま振り返る彼に我に返った。
    「あ、ごめんなさい」
    パッと手を放すと、ロナルドさんが腰をさすっているのが視界の端に映った。
    忙しい退治人(ハンター)さんを引き留めて、しかも腰にダメージを与えてしまった。なんとなく、なんとなく寂しいと思った勢いで! 寂しかったから、なんてしょうもない理由で引き留めたなんて恥ずかしくて言えそうもないし。どうしよう、なんて誤魔化せばいいかな 慌ててる時に限って思考速度は落ちるもので、ロクな言葉が浮かんでこない。
    「ぁ、ぅ」
    かろうじて口から出たのはうめき声みたいな何かだった。
    あああ、どうしよう。困ってるよ、ロナルドさん! はやく、はやく何か言わないと!
    「あ。そうだ、何か悩みがあるんならいつでも事務所に遊びに来いよ」
    「え」
    「明るかったからすっかり忘れてたけど、女の子が深夜にあんなところにいるなんてよくないだろ?」
    「……はい」
     想定外の言葉に、すーっと気持ちが落ち着いていくのがわかった。
    「……っと、悪い。何か言いかけてたよな?」
    「もう、いいんです。大丈夫です」
     私はロナルドさんとこれっきり会えなくなるのが、嫌だったんだ。
    「そうか? 何かあったら遠慮なく言えよ」
    「はい。……あの、腰大丈夫ですか?」
    「ん? あぁ、びっくりしただけだから何ともないぜ」
    「よかった、いきなり引っ張っちゃってごめんなさい」
    「ははっ、そんな顔しなくても大丈夫だから」
     眉尻を下げて笑った彼はクシャっと頭を撫でた。
    「っ! ……それじゃあ、おやすみなさい、ロナルドさん」
     お辞儀をすると、アパートの階段をそっと駆け上る。まだ階下でこちらを見守ってくれているロナルドさんに手を振ると小さく振り返してくれた。
    口元がパクパクと動いて、それが“おやすみ”なのに気付くころには彼の背中は小さくなっていた。

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