泥酔温周泥酔
「阿絮!」
朝から武庫の外へ出ていた温客行は、息を弾ませ中へと駆け込んだ。
外は相変わらずの雪山ではあるが、季節は春。
麓へ近づけば花は咲き誇り、ここまで流れてくる風すら湿った土と花の香りが混ざるようになっていた。
「阿絮!いるか!?」
「老温、こっちだ」
名前を呼べば、すぐに応えがあり奥から気配がする。
二人で雪山の神仙となり早数年が過ぎた。
氷雪を食べ、鍛錬をして過ごす生活にも随分と慣れて、ゆっくりとした時間を過ごす日々。
周子舒は奥義書や農書を紐解いては楽しそうに読んでおり、そういえば遊ぶより鍛錬の好きな子供だったなと思い出して苦笑する。
「いたいた!阿絮、見てくれ!」
巻物を読んでいたらしい周子舒がくるくるとそれを巻き、棚へ戻す姿を見つけた温客行は子供のように駆け寄り、手に持っていた物を差し出した。
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