ループするこの世界で、美形の当て馬を救えるのはモブである自分だけですか!? 太陽が地平線に落ちて、夜の帳が下りるその瞬間。
沈む瞬間の光が校舎裏の庭園を鮮やかな橙に染める。
庭園には初々しい若葉が茂り、春の花が咲いていた。
どこからか甘やかな花の香りがして、チャスカの花をくすぐる。
見渡す限り人の気配は見えなかった。
ここには自分を呼び出した張本人であるユスラがいるはずなのに。
(……まさか、冗談だった、とか)
もしくは呼び出しておいて約束をすっぽかす、とか。
(そんな人には見えなかったけど……)
先程自分の手首を掴んだ時のユスラの表情を思い出した。
不安や期待、どちらにしても抱えるには重い類の感情がこもっていた。
あれは冗談でできるものではない。
(……もっと奥にいるって考えるのが、妥当か)
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