「立てぬと申すか、立香よ」
砂埃が舞う戦場で賢王は己のマスターに問うた。立香は礼装のあちこちを汚し浅からぬ傷をいくつも作っている。エネミーは半数程度に減ったものの、共にレイシフトした英霊も少なくなってしまった。キャスターギルガメッシュにジャンヌダルクオルタ。立香の側にはもう二人の英霊しか残っていなかった。今の戦力を考えるとカルデアに帰還しても致し方ない。それなのにギルガメッシュは立香を焚きつける。
ギルガメッシュの赤い瞳が立香を見つめていた。ジャンヌの嫌いな炎の赤だった。
「…いえ、いけます!」
そう言って立香は立ち上がった。傷だらけの体を無理やり鼓舞し、もう立てないという足に鞭打って歩き出す。キンという小さな音と共にジャンヌの体が熱くなる。立香が魔力を回したのだとわかった。
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