車内にて非常勤講師として雇われたものの、体術の授業を除いた空き時間は自由時間に近い。常であれば空き教室で昼寝に勤しむ頃合いともあり授業終了のチャイムと共に血気盛んな学生ら二人を追い払うかのように伏黒が片手を揺らした直後響いた校内放送は己の名を呼ぶそれだった。
大きく舌打ちを一つ零しはしても、授業以外の任務に関しては歩合制との契約を結んでいることもあり億劫な感情もそこそこに顔を出した教務室ではいつの間にか着いたのか、既に資料を手にしている孔が居て。此方を見遣るなり「遅ぇ」と一言のみ残して駐車場へと向かう背を追うのはもう幾度と繰り返した日常の一つだった。
「オマエが早いんだろ、暇かよ」
「オメェと違ってこっちは朝から晩まで駆けずり回ってんだ、暇じゃあねぇな」
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