(重大な)身体の異変について 恵視点体の異変「5.片手の暴走」
体は疲れているはずなのに、いつもより早く目が覚めた。
かけた記憶のない目覚ましが騒がしくなっていて、それを止めようとした時、腕に違和感を覚えた。
自分の意思とは離れて波打つその腕に呆然としていると、その腕は今まさに止めようとしていた目覚まし時計目掛けて拳を振り上げ、そのまま叩き潰す。
何が起こったか訳もわからず目をぱちくりさせていると、功李が部屋に駆け込んできた。
「なんだ今の音!?」
「え、あ……お、おはよう?」
「お、はよう?なんださっきの、後どうしたそれ」
おそらくさっきの音で起こしちゃったのか、眼鏡もかけずに部屋にはいってきた功李は部屋着のままだ。
まだ疲労が残る体を無理やり起こして、何事もなかったように振る舞う。
「あー…目覚ましが、うざくて」
「親でも殺されたのかよ」
「存命だわ、この前会っただろ
つか、起き抜けに私の部屋入ってくんな!!!」
「はぁ!?お前人がせっかく心配してやったのに」
「せっかくもハッサクもありませ〜ん出てけ〜!!乙女の部屋で〜す!!」
これ以上深入りさせないためにも、ベッドを降りて功李を部屋から追い出す。
ドアを閉めた手を、もう一度見直す。
何の変わりもない、いつもの私の手。
気のせいで済ませるには、少し無理があった。
体の異変「10.異物混入」
またライカに怒られた。
ライカの考えは、目の前の人命より将来の人類なんだろうけど、今まで身近な人を助けてばかりだった私からしたら、個を犠牲に群を助けることはできない。
私はどうすればいいんだろう。
帰ったらリビングは暗くて、ダイニングテーブルに功李の書き置きがあった。
「頭痛いから先に寝る。メシは冷蔵庫」
そういえば、ライカに巻き込まれてから二人でお夕飯食べてないなぁ。朝ごはんは一緒に食べてるけど。
一人で食べるご飯って、こんな寂しかったっけ。
朝、目を覚まして洗面所に向かう。
歯ブラシを口に含んだ時、猛烈な吐き気がした。
昨日のご飯は、正直あんまり食べれていない。戻すものもないのに、喉は酸っぱくて胃の中から何かが迫り上がってくる。トイレに駆け込むのも、間に合わない。
そのまま洗面所で吐こうとして、身を乗り出したけど、口から出てきたのは昨日食べたご飯でも、胃酸でもなかった。
ゼラチン質の、生き物の触手みたいな
恐怖と混乱で声を上げようにも、触手が邪魔で声が出ない。嗚咽は全て触手に吸収される。
呆然と鏡を見ていると、それはするすると口の奥に消えていった。
何、いまの。
重大な体の異変「4.両目の失明」
いつものように目を覚ました。まだ部屋は暗い。いつもより早く起きちゃったのかな、疲れが溜まると眠りも浅くなるっていうし。でも目覚まし鳴ったらから朝か。
時間を確認しようにも、暗すぎて何も見えない。
手探りで目覚まし時計を探していると、ドアの開く音がした。
「お、起きたか。なんだその格好」
確かに功李の声がする。ドアが開く音もした。朝なら、ドアが開いたなら、流石に明るくなってもよくない?功李が見えてもよくない?
まさか
冷や汗が噴き出るのを感じた。
「……功李、そこにいるの?」
「見えない。なにもみえないの」