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    XMASOG

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    お題ガチャ「大事故に遭ったものの奇跡的に軽傷で済んだわしが、セックスのやり方についての記憶“だけ”喪失していると発覚した」

    「……んぅ…」
    どこやここ。薬品の匂いがする。調合の途中で寝てしもたんやろか?
    「こはくっち! よかったァ、目が覚めて」
    「こはくちゃん心配したぜ…猫助けるためにあんなでかい木登ってよぉ…」
    「……。」
    「どうしたんだよこはくちゃん。まさか俺っちのことがわかんねーとか言い出すんじゃねぇだろうな? 俺はともかく、藍ちゃんのことは――」
    「こはくっち、おれたちのことわかる?」
    「……燐音はんと、ラブはん」

    どうやらわしは、事故にあったらしい。小さい猫はんが中庭の高い木に登って降りることができなくなっていたのを助けに行ったんやけど、天辺近くで猛烈な風が吹いてそのまま落ちてしまった。
    幸い、猫はんにもわしにも大きな怪我はないという。
    燐音はんはわしの具合をCrazy:Bのみんなに報告するために先に星奏館に帰ってしまった。病室はわしとラブはんの二人きりになった。
    「無事で本当によかったよォ〜…」
    「心配かけてえろうすんまへん。木登りには自信あったんやけどなぁ」
    「あんな風、いくら鍛えてても無理だよォ! もうすっっごい突風だったんだから」
    と言うラブはんの目元は赤い。
    「目ぇ赤くなっとる」
    「……そりゃ、そうでしょ。」
    ラブはんは椅子を座り直して、ベッドのすぐそばに来た。少し手を伸ばせばその赤い目元に触れられるくらいに。
    左手を布団から出したところでわしは逡巡する。
    わしはほんまにこの人に触れても良え人間なんやろか。記憶喪失にはなってへんみたいやけど、もし、記憶違いが起こっていたら。
    ラブはんはベッドのシーツの上に手を乗せてこう言った。
    「あのさこはくっち。おれたちの、その、ええと。関係…みたいなものって覚えてる?」
    「覚えとるつもりやけど…わしの勘違いやったらどないしょ。もしそうやったら、恥ずかしゅうて二度とおんもに出られへん」
    「ふふ…じゃあ、大丈夫だね」

    そして病室でキスをした。








    こはくっちは念のため一日入院して、次の日退院になった。
    こはくっちはすぐに練習を再開しようとしていたけど、燐音先輩が上手いこと休ませたらしい。

    二週間後、今日はこはくっちが事故にあってから初めてのデートだ。
    「それにしても記憶喪失とかになってなくてよかったァ。もし記憶がなくなっちゃってたら、あの子にもう一回おれのことを好きになってもらえる自信なんか無いよォ…。」
    「ラブはん♪ どないしたん?」
    待ち合わせ場所にこはくっちがやってきた。
    「わわっ! こはくっち。もう身体は平気?」
    「うん、ピンピンしとるよ。わし、今日のデートめっちゃ楽しみにしとってな? ずっと行きたかったお店やねん」
    以前からこはくっちが行きたいと言っていた和菓子屋さん。おれたちはその後ホテルに行く予定だった。寮ではあまり二人きりになれないから、って。
    でもそれは事故前のこはくっちとの約束だ。今目の前のこはくっちは、本当におれとそういうことしたいと思ってるのかな? もし、そうじゃなかったら――。悪い想像はいくらでもできた。
    大丈夫だよね。病室でキスもしてくれたし。こはくっちのことを信じよう。

    和菓子屋さんで食べたあんこは、少しだけ塩が効いていて甘じょっぱかった。




    お目当ての和菓子屋で新作団子を堪能したあと、次の目的地へ向かうラブはん。わしはどこへ行くのか知らされてない。
    「ラブはん!?こっ、こっ、ここ、ここは…!?」
    「ホテル。一緒に行こうって言ったの覚えてる?」
    「もちろん、覚え――」
    …あかん、なんでやろ。思い出せへん。なんでなんも覚えてへんの!?
    今まで順調やった記憶に陰りが見え始めた。

    『わしとラブはんは付き合うてる』これは絶対、揺るぎない事実や。
    『わしとラブはんはラブホテルに行くところまで進んでいる』これは知らへんかった――やるやん、わし。そんなこと言うとる場合かどアホ!!
    思えばこの二週間、違和感はあった。
    ラブはんとの妄想をすると急に頭にモヤがかかったようになったり、そういうことの記憶だけポッカリ穴が開いているような気分になったり。それはきっとわしとラブはんはまだその段階に至ってないだけやと思っていた。
    ちゃうかった。
    わし、忘れてもうてんねん。ラブはんとのセックスを。

    「……こはくっち、きみ、もしかして」
    「お、覚えとるよ。忘れるわけないやろ?わしがぬしはんのことを」
    「ほ、ほんと?! あ、あはは。良かったァ。もしこれでエッチなことだけ忘れられてたらどうしようかと思ったよォ〜」
    おっしゃる通りぬしはんとのエッチなことだけ忘れとる。
    わしは今、身体は非童貞、頭脳は童貞や――。

    「ふふっ、そっかそっか。良かった。……おれ、ずぅっときみとしたかったよ。いっぱい気持ちよくなろうねェ♪」

    ラブはんの甘い声が、全身に響いた。


    つづく
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