11052357-約束「――松田。……下で、待ってるから」
「……はっ。約束はできねぇな……」
11052357-約束
サングラスで曇っているにも拘わらず、視界に映る男以外、まっしろに見えていた。
目の前に腰を下ろした、警視庁警備部機動隊の出動服に身を包むひとりの青年。かつて、一緒に所属していた爆発物処理班の隊員で、切っても切れない関係――幼なじみだ。
そいつのことは、自分が一番よく知っていた。一番、なんて言うには過剰表現だろうか。なんて、警視庁刑事部捜査一課に転属して間もない刑事――松田陣平はぼんやりと、頭を巡らせた。
夢、だろうか。
それにしては思考がやけにはっきりしている。松田と青年の姿だけ色づいた視界は、スモークを焚いたようにまっしろだったが。松田の瞳に映る青年の姿は、至ってクリアだ。
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