彼シャツプチ…プチ…
月の光のみが差し込む薄暗い部屋にかすかに響く音。
「ふふっ…手が震えていますよ、ネロ」
「うるせぇ……」
長身の男の体を跨ぐように足を広げた男が身に纏うのは、身の丈に合わない黒いシャツ。
一方、跨られている男は何一つ乱れていない格好をしている。
――世界が寝静まっている時間に繰り広げられているのは、長身の男、ミスラの思いつきで始まったストリップショーである。
事の発端は、カラッとかわいた洗濯物を取り込む際に賢者が何気なく言った『彼シャツ』という言葉をミスラが聞いたことだった。
賢者から男のロマンなるものだという事を聞いたが、いまいちパッと良さが分からなかったミスラは恋人であるネロに実演してもらおうと考えたのだ。
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