秋澄む夕暮れに しつこく居座った夏の空の中に、少しだけ秋を感じる風が吹く。うだるような暑さに辟易としながらも気がつけば少しずつ空が藍に染まる時間が早くなり、季節が着実に移ろい始めているのを感じながら、人ごみの中で楊とジンジャーはその長い髪を揺らしながら歩いている。彼らのいる大きなショッピングモールは平日の夕方と言えど多くの人が歩いており、気の早いテナントの店先は秋の装いで客たちをもてなしていた。
「ね、ジンジャー。これはどうかな」
「いいね。きみによく似合ってると思う」
「ね、アタシもそう思う。……まあサイズは多分合わないんだけどさ。また今度他で似たようなのを探してみようかな」
苦笑しながら服を戻す楊に、ジンジャーは一緒に探してみようと声をかけた。休日前の食料品の買い出しの他に、気の早い秋物を物色しながら、せっかくだからと二人はあてどなくモールを歩く。時折目の止まった品々を他愛のない会話をしながら彼らは目的地へと向かっていた。
3576