ふみやの✕✕◯月◯日
面白い人に出会いました。
退屈な学校が終わり、家に帰る途中でした。いつものように公園の前を通りかかると、ベンチに一人の青年が座っていたのです。ワインレッドの髪に仕立ての良さそうな学生服。どこか名門校の学生じゃないかな。見覚えのある制服だったし。物憂げな雰囲気を漂わせていたので、声をかけてみました。
「どうしたの?」
青年は、戸惑ったように顔を上げ、困ったような笑みを浮かべ、こう返事をしました。
「何でもないですよ」
そりゃそうだよね。突然俺みたいな見ず知らずのガキに、そう簡単に悩みを打ち明けられるはずがない。それでも、もう一声かけてみた。
「悩みでもあるの?」
そうすると
「大した悩みじゃないです」
と。ここで引き下がることもできたけど、家に帰ったところで、母親はまだ帰らないし、暇を持て余すだけだろう。それになんとなく、もう少しつっつけば話してくれそうな気がした。
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