会長はキスがお好き会長はキスが好きだ。軽いバードキスも、ほっぺたにちょっと触れるだけのじゃれあい程度のキスも、ちょっと踏み込んだキスも。不意打ちでキスをしたときだって、口ではやめろと言いながらもちょっぴり赤くなった会長の耳は素直だった。拒絶の言葉も、本気ではなく軽口だった――はずだった。
「……すまない、今は、ちょっと……」
まさか、本気でキスを拒絶される日が来るなんて。
▽▽▽▽▽▽
「はあ〜……なんでなんだろ……」
「どうかしたの? ジンペイくん」
「またラントくんと喧嘩でもしたの?」
キスを初めて本気で拒絶された日のことは、ショックのあまり呆然としていた俺に「早く帰れ」と会長の部屋を追い出されたあたりから記憶にない。それからも軽いキスくらいなら許してくれたが、少しでも長くなるとそそくさと離れてしまい、これまでとは一転、恋人同士のふれあいがあまりできていなかった。特に思い当たる理由もないせいで、最近は四六時中頭の中がそのことでいっぱいだ。YSPクラブの活動中――といってもただお喋りしているだけだが――に無意識にため息をついていたのだろう、マタロウとコマくんの視線がこちらに向く。
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