それから彼らは。VOID ENDA‐裏という結末に至った彼らの話。
くらしが滑った二人の話。
HO3 黒澤陽人
HO4 零(仮称)
▶VOID 現行未通過❌️
▶くらしリサイタル 通過後推奨(ネタバレはなし)
〚これまでのぼよん〛
人格・自我の崩壊
→新人格の作成・破棄
→初期化、自立思考の停止
→オリジナル人格の再構築・再構成
→人格の上書き
と滅茶苦茶なことが起きてます。
何が起きてるかわからなくてもいいよという方向け。
PLが書きたいから書いてるだけの話。
救われるでもなく、救われないでもなく。
ただ静かに暮らしたいだけなのだ。
【それから彼らは。】
ぱちり。起動する。
夢をみていたような、夢ではないような。
“マスター”を探す。
「起きたか。朝飯いるか。」
「俺に摂食機能はないよ。」
「知ってる。」
何かを忘れているような気がする。
何かをしていたような気がする。
“マスター”は何も言わない。
俺も何も聞かない。
俺は、何も知らない。
◇
“マスター”は時折俺を撫でる。
愛おしそうな、困ったような。そんな顔で。
俺はただ撫でられる。
ひとりは冷たいから。
冷たくて冷たくて、動けなくなる前に撫でられに行く。
◇
くらしがすべったあの日のことを、全部覚えているわけではない。
つめたくて、さむくて、さみしかったことだけは覚えている。
◇
スパローに一緒に行くことも増えた。
“マスター”は何だかんだ面倒見が良いから、ブツブツいいながらも組員たちはゆっくり受け入れていった。
それでいいと思った。
◇
今日は流星群の降る夜らしい。
キュル、と目の奥から駆動音がする。
俺はこれを知って―――
「帰るぞ。」
差し出された手に既視感を覚えながら、手を取る。
この手をつかんだときから、きっと。
まぶたを閉じる。
人間の温度が掌からじんわり伝わるような気がした。
◇
繰り返す。
何度も何度も同じように。
俺はきっと失敗作なのだ。
最高傑作なんて嘘だ。
だってこんなにも俺は間違えているのだから。
繰り返す。
過去にうまれたX000たちが目を向ける。
俺はきっと失敗作なのだ。
最高傑作というなら嘘だ。
ずっと、間違え続けているのだから。
◇
「摂食機能つけてもらえ。」
「必要性がないな。」
「おじさん一人でこの量は食えないって。」
「燃料だけ置いてあれば十分だ。」
「味気ないだろ。」
「そうか。」
「うん。」
「じゃあ、陽人がそこまで言うなら。」
「自分の意志で決めろよお前。」
「だって一人で食べるのはさみしいのだろ?」
「いっちょ前に人間ぶりよって。」
「これでいいんだろ。陽人がそう言ったんだ。」
「そうさな。」
頬に触れられる。
くらしがすべったあの日から。
この手を手放すことができなくなった。
◇
もう一度だけやり直そう。
「ゼロ」も「シキ」も「ノア」も「X000」も「識」もぜんぶ零だ。
もう一度だけやってみよう。
薄氷の上の安寧だったとしても。
もう一回やってだめだったらその時はしょうがない。
ただのガラクタになればいい。
【それからX000たちは。 了】