アネモネに似た赤い花アネモネに似た赤い花
かつての地球の自然環境を再現したアナクトガーデンで見られる唯一の花。
花冠にしたり、とびきり綺麗な一輪を見つけて、特別大事な人に捧げることがチャイルドの間で流行していた。
ティルも例外ではなく赤い花を集めた。摘まれた花は幾日たっても萎れることがなく、ティルはゆっくりと時間をかけて花を集め、柔らかな花弁を傷つけないように丁寧に花冠を編んでいく。
同室のイヴァンは手伝いをするでもなく、ティルが編む姿をただ眺めていた。出来上がった花冠を捧げる相手は誰なのかと探りながら。
ある日の自由時間は女子部との合同プログラムがあった。それを知ったティルは寮棟へ駆け戻り、花冠を持って帰って来た。その様にイヴァンは胸の奥がずしと重くなる心地を覚えた。
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