ワフッ、とドッゴの声が聞こえる。
うつ伏せになった腕の中へと潜るように鼻先を押し付ける仕草に促され、浮奇は意識を浮上させた。ぼんやりと視界に写る時計はまだ昼前を差している。
「んん〜どうしたの?」
普段は寝室に入ってくることはないのに珍しい。主人が構ってくれず手持ち無沙汰なのだろうか。寝起きでぼんやりと纏まらない思考のまま、暖かくふわふわな巨体を撫でる。寝室には暖かな光が差し込んでいて、まだ微睡から醒めない浮奇は再び夢の世界へと戻ろうとした。
「!?」
と、纏っていたブランケットを何かに引っ張られ覚醒を強いられる。慌てて目を開ければドッゴが端を咥えているのが目に入った。
「遊びたいの?」
主人であるファルガーによって躾の行き届いたドッゴは、元来の大人しく穏やかな性格も相まって今まで浮奇に対して強く何かを仕掛けるようなことはしてこなかった。困惑する浮奇に気付いているのかいないのか、頬を舐めたと思えば再びブランケットを引っ張ってくる。
3194