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    はるみや

    イド沼に落ちて5年ぶりにコマ割りした。
    長年字書きをしていた大目に見てくれ。

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    はるみや

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    『この顔はお見せできません』
    泥酔モさんと絡まれるチェくんと巻き込まれるアロ。チェズモク。
    トんでしまいそうな例の顔を意図的にやってるか知らんが、ガチ照れしてる顔のほうが見せるの抵抗あるとかだと可愛いなって思いました。

    #ぼんど

     極東の宝石箱と謳われる島は夜が更けても尚活気づいており、得てして時間感覚を曖昧にさせるが、携帯端末の画面に刻まれた時刻は確りと丑三つ時を刻んでいる。
     しかしながらアーロンの表情を濁らせていたのは、現時刻でも、その時間まで長引いた仕事に対する疲弊や、それに付随する苛立ちでも無い。受話器のアイコンと共に表示される、煌々と光る“クソ詐欺師”の文字だった。
     “クソ詐欺師”とは、現在行動を共にしている仲間の内の1人であるチェズレイ ニコルズを指す。彼の名が表示されることは、アーロンにとっては煩わしい知らせであることと同義だ。スクリーンを睨めつけるも、コールが途切れることはない。携帯端末を投げ捨ててしまいたい衝動に駆られたが、どうにか堪えた。どうせ着信を拒否したところで何かしらの手段を用いて強引に連絡を取りつけるか、後々顔を合わせた際に散々嫌味を言われるかのどちらかであるのを知ってるからだ。
     舌打ちをし、アーロンは渋々受話器のアイコンをタップした。
    『怪盗殿』
    「ンだよ、こんな夜中に。切るぞ」
    『怪盗殿、お待ちを』
     アーロンは眉を顰めた。
     電話越しに聞こえるのは確かにチェズレイの声だ。多くの老若男女を欺き拐かしただろう蠱惑のそれは、アーロンにとっては耳元で囁かれでもすれば鳥肌の立つ代物だが、今日ばかりは受話器をぴったりと押し当て耳を澄ませた。
     というのも、声が妙に小さいのだ。
     昨今の携帯端末の集音技術は日に日に進化しており、多少距離があろうが地声が小さかろうがある程度はカバーされる。にも関わらず、繁華街の喧騒に掻き消されてしまいそうな程に小さい。
    「てめぇ、今どこに居るんだ?」
     表情を硬くし問いかける。
     聞こえる声が小さいのは、単純に携帯端末の不具合か、もしくは何か“トラブル”に巻き込まれ、大きな声を出せないかのどちらかである可能性が高い。

     例えばーー何者かに追われ身を潜めているだとか。

     チェズレイは、やはり妙に小さい声で答えた。
    『リビングです』
    「リビング?」
     思わず鸚鵡返しにする。
     リビングとは、オフィスナデシコ内にある共有スペースのことを指す。
     肩透かしを食らった気分になり、アーロンはバツが悪いのを誤魔化すよう吐き捨てた。
    「声が小せぇよ、聞き取り辛ぇ」
    『体の自由が利きづらい状況でして、端末に手が届かず……音声操作でようやくあなたに連絡ができたところなのですよ』
     どうやら、声は“小さい”のではなく“遠い”ようだ。
     疑問は一つ解消されたが、しかしながら“体の自由が利きづらく、端末に手が届かない”状況という新たな謎が浮上してしまう。
    「……怪我でもしてんのか?」
    『そういうわけではありませんので、ご安心を』
    「別に心配なんざしてねぇよ」
     身を潜めているわけでも、怪我を負っているわけでもないとくるといよいよ訳が解らないが、窮地に陥ったのではないらしい。勝手な想像をしたのはアーロンだが、なまじ緊張を覚えただけに途端に白けてしまう。
    「じゃ何の用だよ。さっさと要件言わねぇと切る」
    『初めからそのつもりだったのを、あなたが遮ったのでしょう』
     そう釘を刺してから、チェズレイは改まって言った。
    『意識を失い完全に脱力した身体は、存外重いものでして』
    「……急に何の話だ?」
     脈絡のない話に眉を顰める。
     チェズレイはそれに答えることなく、また唐突に言った。
    『リビングに来て頂けませんか』
     ひとつ前のセリフと繋がりのないセリフにアーロンが口を挟む前に、チェズレイは続ける。
    『動けなくなりまして』
    「……は?」
     どうにも様子がおかしい。セリフの一つ一つがちぐはぐで、要領を得ない。
     日頃より、間怠っこしい比喩や詩的情緒が多分に含まれる言い回しをしたかと思えば途端に本質を言い当てる、さながら蛇行しながら近づき隙を突いて噛み付く蛇のような話術を嗜む男であるが、会話に支障を来す程の頓珍漢な物言いはしなかった。思えば、普段であれば息をするように飛んでくる筈の嫌味も、今日は随分控えめだ。
     疑念が膨らむ最中、チェズレイはつらつらと言葉を続けた。
    『仕事終わりの一杯に付き合って欲しいと、モクマさんが言うものですから。たまにはと思い飲んでいたのです。普段よりもペースが速いことには気が付いていたのですが、止め時を見誤ってしまい』
    「……なるほどなぁ」
     アーロンは、電話を受けてからの違和感の正体の糸口を見つけ、ニヤリと口角を上げた。
    「ついついオッサンのペースに乗せられて飲みすぎちまったってか」
     酔っ払い特有の言語能力の麻痺となれば納得できる。
     しかし、チェズレイは即座に否定した。
    『まさか。この私がそんな些末なミスをするとでも?』
    「”どの私”だか知らねぇけど。じゃあ何なんだよ動けないっつーのは。つーか、一緒に飲んでたオッサンはどうした」
    『モクマさんは私の隣で眠っています』
    「…………」
     表情を消し、耳元から携帯端末を離す。
    『怪盗殿、通話を切ろうとしないでください』
    「聞きたくねぇっつってんだろうがよテメェらの話は!」
    『品性に欠ける早とちりはよしてください。今回はそういった意味ではありません』
    「今回はってなんだ、今回はって。やっぱてめぇ毎度毎度わざとやってやがったな」
     手に力が篭り、端末がミシミシと悲鳴を上げた。そんなことはつゆ知らず、チェズレイは心なしか気怠げに言う。
    『飲むペースが異様に速いことは察していたのです。空になった瓶を見て、モクマさんが新しいものを持ってくると言って席を立った途端にふらついたものですから、支えようとしたのですが……私も多少酔いが回っていたようで』
    「そのまま一緒に倒れ込んだってか」
    『ええ、床に転がされてしまい……枕とでも勘違いをされているのか、私に抱きついたまま眠ってしまって……身動きが取れないのです』
    「床ねぇ、そいつはお綺麗なこった!」
     普段は土足で使用する、しかも共同スペースの床ともなれば、潔癖症にとっては溜まったものではないだろう。
     揶揄ってやるつもりで大袈裟に笑うと、チェズレイは咎めるよう言った。
    『大声を出さないでください、モクマさんが起きてしまうでしょう』
    「はぁ? 叩き起こしゃ良いだろうが」
     話があっちこっちと散らかり、全容を把握するまでにやたらと時間がかったが、分かってしまえばなんてことはない。要するに、酔っ払いに絡まれ身動きが取れなくなっただけである。ならば解決方法も単純で、眠っているモクマを起こして拘束を解かせれば良い。何もアーロンが助けに入るまでもない。
     そんなこと、いくら酔っているとはいえチェズレイが気が付かないこともないだろうに。だがアーロンが指摘したきり、応答が無い。
    「おい、どうしたよ。なんか言ったらどーだ」

    ーーーーッくし。

     ふと、くしゃみの音がした。どうやらモクマのものである。もぞもぞと身じろぎするような衣擦れの音が続く。
    『……とにかく、早く来てください。風邪をひいてしまう』
    「だから、叩き起こせっつってんだろ。つーか、抱き着かれるくらい近距離でぺちゃくちゃ喋ってりゃ、おっさんのことだ。そろそろーー……」

    ーーーーちぇずれい……?

     受話器越しに、遠くからモクマの声がした。
     寝起き特有の薄ぼんやりとした揺蕩うようなそれが、覚束なく落ちる。

    ーーーーだれと喋ってんの、俺も混ぜて……ん? あらら?

     戯ばんだ口調で、笑う気配がする。

    ーーーーだめじゃん、床で寝ちゃ。綺麗好きなお前さんがどーしたの。ああ、ほら、髪がぼさぼさだ。起きて起きて。

     ぺしぺしと、布地をはたくような乾いた音がする。

    ーーーーんふふ。チェズレイってば、子供みたい。かわいいなぁ。

    『ーー……か』
     チェズレイが言葉を詰まらせたが、それに気づいているのかいないのか、モクマは愉快げに、それこそ子供をあやすように言う。

    ーーーーほーら、髪梳かして、埃も払って。よーし、いつもの別嬪さんだぁ。さてさて、綺麗になったとこで、もう一杯もう一杯。

    『あの……モクマさん……その、もう夜も遅いですし』
     常であれば鶴の一声で一刀両断しているだろうに、チェズレイの静止は珍しく及び腰に聞こえる。

    ーーーーあと一杯だけだからさぁ。ね? いいでしょ? 明日は仕事も無いしさぁ。

     対するモクマの反応も珍しかった。
     彼はよく酒を飲むし誘いもかけるが、無理強いはしない。下戸の人間に対しては尚更である。
     それがどうしたことか、強請るように食い下がっていた。

    ーーーーチェズレイと居るとさ、酒を飲むのが楽しくって。こんなこと久々で……なんだか、ずーっと、飲んでいたくなっちゃって。

     くすくすと、過剰に面白がっているような。酔っ払い然とした様子でモクマは笑う。

    ーーーー変だね。別に、嫌なこととか、何もないのに。たくさん飲む意味ないのにね。あはは。ほんと、変なの。

     ふぅ、と。ため息の音がした。

    ーーーーチェズレイ? どしたの。顔、赤くなってんね。

     舌足らずに言う。

    ーーーー酔っぱらっちゃった? 今お水持ってきてあげ……おわっ。

    『モクマさ……!』
     慌てた様子の声と、どすんと尻餅をついた音が重なった。

    ーーーーえへへ、上手く立てないや。あはははは。

     何が面白いのか、モクマはけたけたと笑っている。
     呆気に取られていたアーロンは、ようやく我に返った。
    「……まさか、おっさん。マジで酔ってんのか?」
     アーロンが驚くのも無理からぬ話だ。
     何せモクマは酔わない。
     正確に表すならば酔い潰れない。
     確かに酒を飲めばある程度は酔うし、素面の時より気分を浮つかせるには違いないが、例えば酒を飲んだ状態で何者かに攻撃を受けても危なげなく反撃ができたり、意識的に酔いを覚ますことができる。元々酒に強いのか、マイカの里の忍び故のスキルかは定かでないが、そういう酒の飲み方をする男でありーーそれがまさか、腰が立たなくなるほど酩酊するなど見たことが無い。

    ーーーーん? あれ? アーロン? アーロンも来てたの? なんだぁ、早く言ってよ。アーロン? どこ?

     モクマの気配が余計に遠ざかったので、半ば怒鳴るように呼びかける。
    「いや、そこにはいねぇよ。電話だ、電話」

    ーーーー電話?

     数秒の空白の後、声が急速に近くなった。携帯端末を拾い上げたらしい。
    『ありゃ、画面真っ暗。おーい、アーロン。見えてる?』
    「テレビ電話になってねぇよ」
    『あー、そっか、テレビ電話、テレビ電話ね。おっけー。任せて。オジサンはちゃんとやり方を覚えたからね。えっと、この辺りを押して、と……あ、映った! おーい、アーロン』
     弾んだ声と同時に、パッと画面が明るくなりーー……
    「ぶはっ」
     同時に、アーロンは吹き出した。
    『ん? どしたの? 急に笑い出して』
    「いや、確かに、おっさんの言う通りだ」
     くつくつと喉奥で笑いながら、アーロンは答える。
    「ご自慢の仮面が真っ赤になってら」
    『ーー……え』
     間の抜けた声と共に、画面に映る顔がきょとんと目を丸くし、
    『ッ……!!』
     弾かれるように、両腕で自らの顔を覆った。
     それから、なんとも怨みがましい低い声が呻く。
    『…………モクマさん。カメラが“逆”です』
    『逆? どーゆー意味?』
     くるりと、映像が逆さまになった。
     しばし「インカメに」「右下のボタンを」などと説明をしていたが、上手くいかなかったらしい。諦めたのか、顔を隠したまま端末に向かって告げた。
    『私は自室に戻ります。怪盗殿、さっさとモクマさんを回収してください』
    「何言ってんだ。もう一杯だろ? なぁ、おっさん」
     アーロンは通話を切ると同時に、目の前の扉を開いた。
     同時に、地べたに座り込む2人の男が振り向く。
     酷い有様だった。特にチェズレイに関しては、彼を知る者が見れば目を疑うだろう様相だ。床に寝転んだ所為で埃まみれ、髪はボサボサ、陶器じみた白い肌は真っ赤に染まっている。
     チェズレイは下戸だ。しかしながら顔に出ない体質らしく、飲酒をしたところでこうも赤くはならない。即ち、たった今顔を赤らめているのは酒ではなく別の要因ということになる。
     ブロンドの髪の隙間から覗く目玉がアーロンを捉え驚いたように見開き、それからほんの一瞬、悔しげに歪んだが、直ぐに普段の澄まし顔を貼り付け立ち上がった。
    「ご苦労様です。では、後はお任せしますね」
     それだけ言って、アーロンの横をすり抜け部屋を後にした。
     アーロンは一頻りけらけら笑い、モクマの前へ歩み寄る。
    「ほら、おっさん。あの野郎は部屋に戻っちまったぞ」
    「そっかぁ、ざんねん」
     如何にも寂しそうに言うので、アーロンはまた笑ってしまった。チェズレイが、何故モクマを起こしたくなかったのかが分かったからだ。
     相棒としての付き合いはアーロンより長いチェズレイのことだ。当然ながら気が付いていることだろう。
     モクマが酔い潰れた原因を。無理強いをしてまで引き止めようとした理由を。何かから逃げるためでも無いのに、深酒をした意味を。
     全てを理解してしまったから。その事実が堪らなく喜ばしい事であり――……同時に、酷く戸惑ったから。仮面は剥がれ落ちてしまった。
     そんな中でモクマに引き止められてしまっては突っぱねる自信がなかったのだろう。だから、無様を晒してまでアーロンに助けを求めたのだ。
     チェズレイに関して、アーロンが知ることはそう多くない。そもそも興味もない。だが――……渇望したところで手に入らず、叶う見込みがないと心の内に押し留め諦めていたものが唐突に差し出されてしまった悪党の心中は、ほんの少しだけ解るような気がした。
    「アーロンは? 一杯どう?」
    「やらねぇよ。何時だと思ってんだ」
     バッサリと切り捨て、アーロンは一息にモクマの体を担ぎ上げた。
    「ひゃあ」と間抜けな悲鳴が上がるが、構わずに歩みを進める。
    「あはは、ぐらぐらする」
    「吐いたら落とすからな」
    「はーい」
     調子の良い返事に、アーロンは苦笑した。
    「ーー……まぁ、なんも考えず飲める相手が出来て良かったじゃねぇか」
     相手があの詐欺師というのは理解に苦しんだが、深追いはしなかった。
     そう何度も馬に蹴られるのは癪である。
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    はるみや

    DONE『この顔はお見せできません』
    泥酔モさんと絡まれるチェくんと巻き込まれるアロ。チェズモク。
    トんでしまいそうな例の顔を意図的にやってるか知らんが、ガチ照れしてる顔のほうが見せるの抵抗あるとかだと可愛いなって思いました。
     極東の宝石箱と謳われる島は夜が更けても尚活気づいており、得てして時間感覚を曖昧にさせるが、携帯端末の画面に刻まれた時刻は確りと丑三つ時を刻んでいる。
     しかしながらアーロンの表情を濁らせていたのは、現時刻でも、その時間まで長引いた仕事に対する疲弊や、それに付随する苛立ちでも無い。受話器のアイコンと共に表示される、煌々と光る“クソ詐欺師”の文字だった。
     “クソ詐欺師”とは、現在行動を共にしている仲間の内の1人であるチェズレイ ニコルズを指す。彼の名が表示されることは、アーロンにとっては煩わしい知らせであることと同義だ。スクリーンを睨めつけるも、コールが途切れることはない。携帯端末を投げ捨ててしまいたい衝動に駆られたが、どうにか堪えた。どうせ着信を拒否したところで何かしらの手段を用いて強引に連絡を取りつけるか、後々顔を合わせた際に散々嫌味を言われるかのどちらかであるのを知ってるからだ。
     舌打ちをし、アーロンは渋々受話器のアイコンをタップした。
    『怪盗殿』
    「ンだよ、こんな夜中に。切るぞ」
    『怪盗殿、お待ちを』
     アーロンは眉を顰めた。
     電話越しに聞こえるのは確かにチェズレイの声だ。 5893

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    はるみや

    DONE『この顔はお見せできません』
    泥酔モさんと絡まれるチェくんと巻き込まれるアロ。チェズモク。
    トんでしまいそうな例の顔を意図的にやってるか知らんが、ガチ照れしてる顔のほうが見せるの抵抗あるとかだと可愛いなって思いました。
     極東の宝石箱と謳われる島は夜が更けても尚活気づいており、得てして時間感覚を曖昧にさせるが、携帯端末の画面に刻まれた時刻は確りと丑三つ時を刻んでいる。
     しかしながらアーロンの表情を濁らせていたのは、現時刻でも、その時間まで長引いた仕事に対する疲弊や、それに付随する苛立ちでも無い。受話器のアイコンと共に表示される、煌々と光る“クソ詐欺師”の文字だった。
     “クソ詐欺師”とは、現在行動を共にしている仲間の内の1人であるチェズレイ ニコルズを指す。彼の名が表示されることは、アーロンにとっては煩わしい知らせであることと同義だ。スクリーンを睨めつけるも、コールが途切れることはない。携帯端末を投げ捨ててしまいたい衝動に駆られたが、どうにか堪えた。どうせ着信を拒否したところで何かしらの手段を用いて強引に連絡を取りつけるか、後々顔を合わせた際に散々嫌味を言われるかのどちらかであるのを知ってるからだ。
     舌打ちをし、アーロンは渋々受話器のアイコンをタップした。
    『怪盗殿』
    「ンだよ、こんな夜中に。切るぞ」
    『怪盗殿、お待ちを』
     アーロンは眉を顰めた。
     電話越しに聞こえるのは確かにチェズレイの声だ。 5893

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