使用人は見た 侍女見習いの場合使用人は見た 侍女見習いの場合
レヴォネ家に仕える者にとって、美しく聡明な主人は自慢だった。
穏やかで心優しい主人はいつでも家人達に心を砕き、まるで家族の様に接してくれた。
そんな主人だからこそ、彼等は誠心誠意勤め、彼の幸せを心から願っている。
しかし、先代である父セオドアが身罷り、それを追う様に儚くなった母リュンヌの弔いを済ませた頃から、彼を取り巻く環境は悪化するばかりだった。
日夜仕事に追われ、食事も睡眠も疎かにする。倒れそうになりながらもそれでも必死で国の為に働き続けたというのに、ある日突然彼は謂れなき罪により断罪されてしまった。
彼がどんなに頑張ってきたのか見てきた家人達は皆セイアッドに対する仕打ちに憤った。しかし、その場では彼は反論する事もなく領地に帰ると言い出したのだ。
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