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    せなん

    地雷原(成人済) 誤字魔

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    せなん

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    ディアスタにしはじめるところ
    最後雑な感じでCPにハンドル切り始めた

    「ということで、家族旅行は中止だ。」
    はぁ〜と父は珍しく溜息をつく。ディアマンドとスタルークは父の執務室に呼ばれ身構えていたが、国や命に関わる一大事ではなく一先ず安堵した。しかし、数年ぶりともいえる全員揃った長めの休暇に家族全員で遠出ができる機会だったのにと三者三様で内心落ち込んでいた。父の前に開かれている手帳には、「旅行」と心無しか躍った赤文字と矢印に、ほぼ重なるよう矢印と共に「現場視察」と他の予定より乱雑に書かれていた。
    「しかし父上、私が行けば良い話なのではないですか?この付近であれば何度か私も行っておりますので私が――」
    「そ、そうです!僕もこの付近であれば自警団と害獣駆除で訪れたことがありますので僕が――」
    「二人ともわかっておらんな!」
    突然の父の怒号に二人は肩を震わせる。
    「視察はこちらに任せて、三人で旅行に行ってこいと言っている!」
    「そ、そんなこと……」
    ディアマンドが弁明を続けようとするが父の声が遮る。
    「大体ディアマンドもスタルークも部屋にここ数日籠もりきりではないか!」
    二人は確かにと顔を見合わせる。お互いそうなのか?という顔をしているが、実際執務なり勉強なりで籠っていたためお互い事実を知らない。
    「とにかく息抜きにでも休むように」
    「しかし」
    「言い訳は無用」
    こうなっては梃子でも動かないと知っている息子たちは、気をつかって休みをくれた父にお礼を伝え部屋を後にした。

    「結局二人旅になってしまいましたね」
    母に旨を伝えると、王都を空けておけないと留守番をつとめることを決め(母も頑固な人だったことを忘れていた)、結局数泊での二人旅となっていた。
    「それにしても本の冊数まで定められるとはな」
    ディアマンドの手には簡易的な地図、宿泊地のメモ、そして父親から渡された持ち物表だ。あの後、衣類にこだわりもない二人は荷造りをすぐに終えた。が、どうにもシトリニカ経由でスタルークが本を詰めていることがバレていたらしく、夕食後「休むことも仕事だ」と紙を渡されて釘を刺された。まさか、と睨む顔にディアマンドはそっと目を逸らした。留守にする旨を臣下に伝えると「俺もアルパカを連れていこうとして止められましたよ〜」とフォローになっているかわからないコメントが返ってきたが、数日留守にする点に関しては安心できそうだ。
    ともあれ旅行先は普段の石造りの城とは違う、観光地と避暑地を兼ねたような落ち着いた雰囲気の場所だった。スタルークが下調べでいくつか観光地や博物館、文学館に丸をつけており、普段机に向かっているときとは違う学びが得られそうだと、移動の多かった一日目の旅程通りそのまま二人は宿泊地へ向かっていった。

    「……で、夫婦寝室になると。」
    父上は宿泊先にお忍びで臣下の名前を借り四人家族と伝えていたらしい。受付にいた男性が床に膝どころか頭も付ける勢いで謝っていた。繁忙期だろうからと速達で二人キャンセルする旨と、返金不要の旨を伝えていたは良い。しかし兄弟で1つずつベッドのある部屋と、夫婦で1つのベッドの部屋、キャンセルをしたのは1つずつのベッドがある方だったらしい。確かに、普通は夫婦だけに譲ったとでも思うだろう。
    「私は構わないがスタルークは?」
    「僕も構いませんし、 僕のようなゴミは屋根裏でも床で構いませんので……」
    「こら、スタルーク。ともあれ問題はないので案内をお願いしてもよろしいでしょうか」
    は、はい…!と動揺のあまり何も無い場所で躓く男性に「部屋の鍵があれば大丈夫だから」とディアマンドは声をかける。半ばパニックになりかけている男性に首を刎ねたり、食べたりもしないからと落ち着かせ、男性の震える手から鍵を一つ貰った。壁にある部屋の場所を見ると、最も等級が高いだろう奥の部屋だった。

    「ほ、本当に僕が隣で寝て宜しいのですか」
    「だから構わないと言っているだろう」
    ディアマンドは苦笑いをしながら王城のものと変わらない大きさのベッドのマットレスを叩く。スタルークは恐る恐るふかふかの布団に登るとマットレスが沈み込む感覚はしたものの、男性二人が乗っても何の不安もなかった。
    「ではスタルーク、おやすみ」
    「お、おやすみなさい兄上」
    ベッドサイドに置いてある部屋唯一の灯りを消すと、窓の月光があるもののほぼ真っ暗になった。
    (さて…)
    ディアマンドは目を閉じ寝返りをうってスタルークに背を向ける体制にした。スタルークはもう眠っただろうか?身じろぐ音とともに布団を持っていかれた感覚がしたが、今のディアマンドには掛け布団の一つや二つなどどうでも良かった。
    (私はどう夜を過ごせと)
    ディアマンドは、実の弟であるスタルークに片想いをしている。幼い頃であれば一緒に眠っていたが、少なくともあれから五、六年は経過している。普段こそ平静を装えているが、四六時中一緒になるこの旅行中、いつ何が起こるかわからない。
    (何事もなく、終わりますように……!)
    こうして楽しい兄弟二人旅、もといディアマンドの修行が始まった。
    ――スタルーク「も」寝不足であることがわかったのは2日後のことである。
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