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    せなん

    地雷原(成人済) 誤字魔

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    せなん

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    アレセリピアノの日
    現パロ 色々捏造してる

    ――
    平日の昼間。午前で講義が終わったセリスは部屋でレポートと戦っていた。ふとイヤホンの音楽とは違う、ピアノの基礎練習曲の音にセリスは顔を上げる。
    「ピアノ!」
    CDなどではない、本物のグラウンドピアノの音だ。セリスは演奏を見に行こうとレポートを書くため開いていたノートパソコンを閉じた。

    数日前からアレスの実家にお邪魔している。二人で暮らしているマンションのエアコンが落雷と停電で壊れ、修理までが半月かかり冗談ではなく死んでしまいそうだとアレスは実家に連絡したのだ。アレスの父親は快諾し、加えてセリスの関係性も知っているから、来てくれる事を楽しみにしていると連絡を返してくれた。余談だが、セリスはアレスのことをあくまで「幼馴染」という関係で通しており、アレスの父親とも手を組んで恋人であることをセリスの父親へ秘密にしている。今回伝えても良かったが、万一を考えるとアレスの実家にお邪魔する方が良いかなとセリスは数日分の荷物を準備した。
    大学から少し遠くはなってしまったが通えない範囲ではない。モダンなセリスの実家とは異なる、おとぎ話に出てきそうな洋館を家と戻るには少し抵抗があるが、セリスは専用となりつつあるゲストルームで寛げるくらいには安心し始めていた。

    2階の少し広い部屋。サロンと呼ばれるような造りだろう部屋にグラウンドピアノがある。その前に座るのは恋人アレス。帰省の度に毎日練習をしているらしく、ここ数日もせっかく弾けるのだからと毎日練習をしていた。傍から見れば金髪に白肌の人形の王子様のような姿だが、実際は暇な講義で居眠りをし、数日の残り物で目分量の料理を作るような人だとセリスは知っている。
    ペダルの和音が消え、曲がひとつ終わったタイミングで拍手をする。セリスが来たことに気づいたアレスがピアノの前の椅子をとんとん、と叩き手で招いた。
    「弾くか?」
    「弾かない。聴いてる。」
    セリスはアレスの横にちょんと座った。曲目はセリスがここに来るまでに練習曲から自分の好きな曲になっているようだった。立っている譜面には「こう奏たい」とびっしりと書き込みがされている。
    「今日はクソレポートもあるしあと2曲な」
    「クソとか言わない」
    「はいはい」
    アレスは譜面を変える。セリスが前に「これすき」と言った、ゆりかごで揺られる心地の曲だ。普段のアレスに似合わない曲だが、アレスはテンポに囚われない自由に歌うような曲の方が得意らしい。
    眠りに落ちるような和音のハーモニー、子守唄を優しく歌うようなメロディ。セリスは、頭をそっと撫でることを思い出す繊細な指先や、曲を囁き歌うような彼の優しい表情を、曲が終わるまでそっと盗み見た。

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