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    せなん

    地雷原(成人済) 誤字魔

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    せなん

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    アレセリ現パロ全年齢クリスマス
    普通の日常してる

    ――
    リビングにあるアドベントカレンダーはクリスマスまであと少しと、穴が空いてない部分は片手で数える程になってきた。今日もひとつ穴を開け、中に入っているチョコレートを取り出す。去年の入浴剤のカレンダーも良かったが、有名チョコレート店も悪くないなと銀の包装をめくる。
    「準備できた〜?」
    洗面台に声をかける。相変わらず朝が苦手なアレスは出発ギリギリまで忙しいらしい。出かける服は予め選び朝の準備は最小限にしているが、当日の寝癖の具合で準備の時間が相当ぶれることをセリスは知っている。もう少し、と声がかかるが、出かける前のアレスのもう少しは信用できないと暖かいコーヒーを入れ始めた。

    「すまん」
    マフラーを巻いて二人は街路を歩く。予定はあくまでも予定だからとセリスは予定の30分ほどになった腕時計を見る。映画などチケットで時間が決まっているものなら引き摺ってでも出すが(まずそんな予定は朝から入れないのが常だ)今日は買い物が大半だ。時間が遅れるのも興だと、冷水をかける真似はせずお互い口を出さない。どうせ帰りもぐだぐだと遊んで帰るのだ。
    電車を乗り換えて数駅、レンガの街並みが美しい街に到着する。クリスマスのイルミネーションで建物が飾られており、積もるほどではないがうっすらと雪も降ってきた。寒いがロケーションは最高だ。
    「まだクリスマスじゃないのに混んでるね」
    「むしろクリスマスの直前だから混んでるんじゃないか?」
    「意外とみんなクリスマスの方が出るものだよ」
    アレスは意外かもしれないが、クリスマスは伝統に則り自宅で家族と過ごす人だ。クリスマスイヴは料理の仕込みをしながらゆっくり過ごし、クリスマス当日は出来上がったケーキを食べつつ家族で映画を見たりしてまたゆっくりと過ごす。セリスは去年初めて2日間を共にしたが、ミサやハンドベルの演奏を聞いたりもし、随分とクリスマスの印象が変わったものだ。特に何も説明せずアレスが恋人としてセリスを連れていったため、家に着くや否やアレスの叔母や父方の祖父(だった筈だ)に紹介され突然の家族顔合わせとなったのはよく覚えている。そして当たり前のよう恋人として扱いを受けプレゼントも貰っていた。
    一年前はそうだったなと思い出しつつ歩いていると突然ずるりと地面を踏み外した。一瞬心臓がキュッとする浮遊感とともに左腕が引かれる。
    「あ、ありがと……」
    「地面よく見ろ、考え事か?」
    レンガの間の氷で滑って踏み外したようだ。ごめん、去年のこと思い出してたと言うと、そうか、と一言返ってくる。
    「ん」
    アレスが右手を差し出してきた。左手を差し出すと、手袋の上からぎゅっと手を握ってくれる。
    「足元、気をつけて歩けよ」
    「大丈夫。次は気をつけるよ」
    二人はクリスマス前で混むマーケットのゲートへ向かった。

    入場のゲートを潜れば別世界だった。クッキーの匂いと焼けたお肉の匂い。ほの暗い雪雲の中黄色の電飾は星屑の輝きのよう美しく、中央でコンサートを行っているのか、雑踏の音に混じりアンプを通した音が聞こえる。
    「あの店見ていい?」
    入場しても二人は手を繋ぎっぱなしだった。セリスは右手を進行方向とは別の方向に引っ張る。シナモンの香りが美味しそうなチュロスの店だ。
    「俺ここのは初めて食うな」
    「たしかに店多いもんね」
    二人で一本ずつ買い、一口食べるとじゅわっと砂糖とバターの味が広がる。アレスは毎年違う店で買っていたらしく、来年もこの店に来るかとチュロスの写真を撮っていた。
    セリスは御伽噺のようだと思いながら更にマーケットの奥へ進む。ここ良いんじゃないか、と止まった店でアレスの母親のプレゼントのレース、角にあった大きめの店でアレスの叔母にドライフラワーとポプリを買った。アロマキャンドルは随分と種類があり、色んな店を回った結果ジャスミンの香りが一番良いと決めた、ある一店舗で大量に買うことになった。アレスの実家用に加え、自宅用にガラス瓶に入った小さいものを選ぶ。ロウソクは腐らないからしばらく思い出として飾らせて欲しいと言うと、もうひとつ追加でとキャンドルを包む店員さんに話しかけていた。

    一休み、とソーセージとグリューワインを買ってテーブルにマグカップを置く。ソーセージはパリッという音とともに広がる胡椒とスパイスの濃い味が買い食いには美味だった。グリューワインは一口飲むとスパイスと共にアルコールが広がり、冷えたからだが中から温まるようだ。
    「すまん、随分連れ回したけどどうだった?」
    元々はクリスマスを家で過ごしたいアレスが、クリスマス前にマーケットを回りたいと言ったことが始まりだ。家族用のプレゼントと、家に帰って食べようと買った肉料理、シュトレンやクッキーとギリギリまで片手が埋まっていた。
    「すごい楽しかった。マーケットってこんな感じなんだね」
    アレスは自分ばかりがと言っていたが、セリスもセリスで満足していた。家に帰ったら飾る用のオーナメント、合鍵に付けるストラップ。アロマキャンドルをセリスの家族に渡せたらとも買った。加えてアレスにこれはまだクリスマスプレゼントじゃない、普通のプレゼントとお揃いの金細工が美しいリボンのヘアカフスをアレスに贈った。どうだ?と軽く縛った襟足に早速リボンを付け、セリスもじゃあ僕にもとローポ二ーにリボンを付けてもらった。
    「来年もここに来たいね。楽しかった」
    「そうか」
    アレスは微笑むと、ワインは飲み終わったかと聞いてくる。何かあったかと空のコップを見せると、グリューワインを買った店にまた足を運んだ。
    「これ。クリスマスプレゼントじゃないからな」
    先程のマグカップを返却し、店員さんとやり取りしたかと思えばアレスは新品のマグカップを買っていたらしい。
    「これは今年限定だからな。また来年来たら貰って帰ろう」
    「いいね、ありがとう」
    食器棚に色違いのマグがまた一組増える事を想像した。いつか入らなくなるまで貰い続けそう、いや入らなくなっても別の棚に入れて飾ろう。
    「もう少しだけ回りたいな」
    「コンサートの方もいいんじゃないか?」
    「すごい回った気がするのに中央南の方まだじゃない?」
    二人は紙袋を片手いっぱいに、そしてもう片手は二人で手を繋いでマーケットの奥へと歩みを進めた。

    クリスマスイブからアレスの実家で過ごし、クリスマスの夜に二人が住むマンションに戻ってきた。25日は自主休講が許された科目だったが、26日は奇しくも一限必修の最終日ということで泣く泣く実家から帰宅したのだ。
    マーケットの楽しさ、クリスマスの温かい雰囲気。夢のような二日間を思い出すようアレスは風呂上がりにグリューワインを作った。マグカップはもちろんマーケットで買ったものだ。
    「グリューワイン、気に入ったか?」
    「うん。アレスのグリューワインが1番おいしくて好き」
    あのマーケットの日、結局アレスが止めるまでセリスはグリューワインを飲んでいた。ジュースじゃないんだぞと、マフラーに埋める頬がぽやぽやと赤いと感じた時は時すでに遅し。水を飲ませつつ上機嫌で少し不安定な足取りのセリスを引き摺って帰宅した。(セリスは酒が残らないのか次の日も元気だった)
    「あーあ、明日もクリスマス続かねぇかな」
    「アレス今日三限捨てたでしょ」
    クリスマスはあと数時間で終わってしまう。名残惜しく飲み終わったカップを食洗機に入れ、セリスに明日一限だし寝るよ〜と色気のない声で洗面所へ押しやられる。
    「明日、これつける?」
    「勿論」
    アクセサリーフックには、セリスが贈ったヘアカフスと、アレスが贈ったブレスレットが2つずつ並んでいた。
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