俺だけのたんぽぽちゃん「よーし、準備できた―!さぁ食べようー!」
見渡す限りの野に咲き誇る黄色いたんぽぽと愛する手持ちたちとなになにと寄ってくる野生のポケモンたち。そして世界一愛おしい人と囲むのはレジャーシートに所狭しと並べられたサンドウィッチ。
久しぶりのワイルドエリアデートに繰り出していたダンデとキバナは、朝からたっぷりバトルをして今はランチタイム。
強いトレーナーしか近寄ることができないため滅多に人が来ることはない逆鱗の湖の奥にある一面たんぽぽが健気に美しく咲き誇るたんぽぽ畑は、幼い頃に二人で見つけた二人だけの秘密の場所であり、見つけて以来お決まりのキャンプ場である。
流行のパルデア式ピクニックをしてみたい!というダンデの願いで作りに作りまくった様々なサンドウィッチのおかれたレジャーシートをお決まりの定位置であるたんぽぽ畑の中にあつらえたようにぽっかりと空いているスペースに敷いたものの、作りすぎたせいでサンドウィッチに占領され、座れるスペースが無くなってしまったため、芝生に座って手を合わせた。
「いただきまーす!」
大きなパンにレタス、ハム、チーズ、トマト、ピクルス、ベーコン、オリーブ、ソルトにペッパー、そしてビネガーとマヨ。
これでもかと具材を詰め込んで作った大きなサンドウィッチを切り分けて大口でかぶりつけば、口の中いっぱいに広がる幸せ。
「うまー」
君は本当に人間なのか?というくらいの大きな口で一気に半分くらいの量を口の中に収めてしまったキバナの横顔を眺めつつ、ダンデもぱくっとかぶりついた。
「うまい!」
ハムやベーコンの塩気とシャキシャキ野菜のバランスが調度よくて美味しい。
お気に入りのベーカリーで買ったパンも具材たちとよく合っている。
「ダンデ、顔にパン屑ついてる」
外で食べるご飯はおいしいなぁと、楽し気に食べる手持ちや、いつの間にか集まってきて一緒に食べている野生のポケモンたちににこにこ笑いながら頬張っていると、優しく笑うキバナに頬を撫でられ、びっくりして噛んでいた口の中のものをごくっと飲み込んでしまった。
二人揃っての休みは久しぶりだった。
故にキバナは、本当は家に篭もって二人きりでいちゃいちゃしたそうだったけれど、ワイルドエリアに行きたい!とジム仕事に追われてストレスが限界のダンデを気遣い、行こうよと笑ってくれた。
おれも、きみのために何かしたい。
世界でたった一人の愛おしい人。
優しい優しい旦那様。
ダンデのためにその優しさの全てを注いでくれるキバナのために何かしたくて、今日はちょっとだけ頑張ってみようと心に誓って家に帰ったらサプライズを決行するためにいろいろ準備してある。
上手くいくだろうか…喜んでくれるだろうか…。
そんな気持ちを抱えながらもぐもぐしていると、不意に降り注ぐ花びらの雨。
「え?」
「キュワワ~」
サンドウィッチを貰って嬉しそうに食べていた野生のキュワワーやフラージェスが、突然ダンデの頭の上に広がる風景と同じたんぽぽの花を散らし始めた。
「サンドイッチのお礼?」
美味しいサンドウィッチをありがとう!と言わんばかりくるくると回り、にこにこ笑うポケモンたちにダンデが笑い返せば、どこから出てきているのかわからない不思議な花の量が増した。
という光景を真横で見ていたキバナは、あまりの可愛さと尊さに、内心涙を零しながら手を合わせて拝み倒していた。
俺様のたんぽぽちゃんがかわいすぎる…!ポケモンたちグッジョブ!!!
サンドウィッチに降り積もってしまっている多量のたんぽぽも気にならないくらい、愛らしく、幸せいっぱいの光景だった。
降り注ぐたんぽぽたち。
愛おしい人の周りを飛ぶ、愛らしいポケモン。
その真ん中で瞳をキラキラ輝かせて、己を彩る花々を見上げる最愛の人。
かわいい。すき。すきだ!
今日は久しぶりの休みだったから家でたくさんいちゃいちゃしたかったのだけれど、ワイルドエリアに行きたそうにしていたから、我慢してでも願いを叶えてやりたいと思ったしそうした。いつだってきらきら笑っていてほしいと思う唯一無二の人。それがダンデだ。
だから己の欲は頭の片隅に追いやってライバルモードでいたのだけれども。
あまりの可愛い光景に、無意識に身体が動いていた。
降り注ぐ花びらを見上げるダンデの頬に手を掛けると己の方を向かせ、きょとんとしてるダンデの薄いピンク色をした艶やかな唇にそっと己の唇で触れた。
一度ちゅっと音を立てて口付けると、サンドウィッチを食べていたのになんだか甘くて、キバナは夢中になって何度もちゅっちゅと啄ばんだ。
「ん…きばな…」
「ダンデ…すげぇかわいい…たんぽぽの妖精みたい…」
「おれはフェアリータイプじゃないぜ…」
そっと手を握って耳元で囁くと、思ったよりも甘くなってしまった声にダンデがくすぐったそうに肩をすくめるから、キバナは己の頭にぽとんと落ちてきたたんぽぽを一つ輪手に取ると耳に掛けてやった。
菫色に柔らかいイエローのコントラストが愛らしい。
「俺だけのたんぽぽちゃん。あまいミツを吸わせてくれよ」
たんぽぽで彩られた耳にちゅっと口付けてから顔中に口付けを落とせば、とろりと蕩けるあまいミツのような美味しそうな瞳。
ああ、今すぐ全部食べてしまいたい。
キバナはたまらなくなって、溢れてくる愛おしさのまま、芝生にダンデを押し倒した。
「キバナ!?」
押し倒され、自分の置かれた状況に慌てるダンデが可愛くて再び口付ければ、顔を押し返される。
「キバナ…!ここがどこだと思ってるんだ!外だぞ!」
押し返す手を取って顔の横に押しつけ、障害がなくなった唇にちゅっと吸い付きながら、キバナはダンデの言葉で思い出した。
そういえば外だった。というかいつの間にか脳内ラブラブモードになっちまって、こんなところであんなことを…。
あいつらに見せるのもよくないし、名残惜しいけどこの辺で止めなくては…と思って周りを見渡せば…あれれ?近くには誰もいない。
いつの間にか手持ちたちは、遠くで野生のポケモンたちと遊んでいた。
凶暴な野生ポケモンが襲ってこない様に護衛しつつ遊びながら二人きりにしてくれたらしい、愛するパートナー達。
みんなに気を遣わせてしまったのは申し訳ないけれど、だめなら止められるはずだし、止められなかったってことはダンデと二人きりの時間を満喫してもいいってことだよな?
突如舞い込んできた夫婦の甘い時間に喜びが止まらないキバナは、己の下でじたばた暴れるダンデに笑みを濃くし、口付けを深めた。
「んんっ…こらっ…やめ…」
「やーだ」
じたばた暴れるダンデに構わずに服に手を掛ければ、ダンデがなにやら焦って押し返してくる。
脳内お花畑なキバナにとっては慌てふためく姿も可愛くて、我慢していたいちゃいちゃ欲に抗えず、強引に愛おしい身体を暴いた。。
今日のダンデはリザードン印のオレンジ色のウインドブレーカーにグレーのパーカーと黒のジャージというワイルドエリア探索にぴったりのアウトドアスタイル。
その分ボタンとか余分な装飾品がなくて脱がしやすいのである。
しかもダンデが暴れたところで力ではキバナの方が上だ。
難なく抑え、ウインドブレーカーから袖を抜かせると、焦るダンデのパーカーに手を掛けると、勢いよく脱がせた…ところで、中から出てきたものにキバナは目を見開いて固まってしまった。
中から出てきたのはキバナの大好物だった。
偶然だろうか…ダンデが横たわっているたんぽぽ畑のような、たんぽぽを主とした花々がたっぷり咲いたベビードール…えっちの時にダンデに着て欲しいアイテムナンバーワンのえっちな下着である。
えっなんでこんなえっちなの着てんのー!?!?!
突如現われた極上の花畑に、頭がくらくら。
白いレースで出来た肩紐が繋がる先、大きなおっぱいを覆う白地の布は前が開いているフロントオープンタイプのベビードール。
裾にもたっぷりレースがあしらわれたそれと、真顔で引き下ろしたジャージの下に鎮座する同じく白地のシンプルな紐パンもこれでもかと花々の刺繍が施されていてどこからどう見てもキバナだけのお花畑だ。
ダンデにアピールし、愛を伝えるためにありとあらゆる対策をしてきたキバナは、花と花言葉にも詳しい。
メインで至る所に施されているたんぽぽの花言葉は…いろいろあるけれど、ダンデが与えてくれるものが一番ふさわしいだろう…『幸福』
鮮やかなピンクの小さな花びらが愛らしいハナキリンの花言葉は『早くキスして』
小さなひまわりみたいな黄色のサンビタリアは『私をみつめて』
存在感を放つピンクのベラドンナリリーは『私の裸を見て』
紫色のパンジーは『あなたのことで頭がいっぱい』
至る所にさり気なく散らされたナズナの花言葉は『あなたに私の全てを捧げます』
意図して選んだのか、偶然なのか…ダンデの事だから偶然だと思うけれど、色とりどりに散らされた華やかな花々たちが持つ意味に対して、こに世界で一番の幸せを詰めたのでどうぞ召し上がれ…と誘われていると捕らえてしまったも致し方ないだろう。
こんなセクシーで可愛くてえっちなものを着ていたダンデが悪い。
勝手に盛ったキバナが悪いのだけれど、理性を失わせたダンデが悪いと理不尽にもダンデのせいにしたキバナは、レースに包まれた胸をがしっと掴み、揉みしだいた。
「こーんなえっちな下着付けて俺とバトルしてたんだぁ」
「こっ、これは…夜に…っ♡やめ」
「夜に見せてくれるつもりだったの?」
「…だって、きみ…今日おうちデートがよかったんだろ?でも、俺がワイルドエリア行きたいっていったから…叶えてくれたお礼…したくて…んっ♡」
なんという健気な理由だ…。
ダンデは俺のこと気にせず、自由にしていいんだ。
俺はお前が元気に笑っていてくれるだけで幸せだから。
でも、ご褒美を…見返りなんて求めてないけれど、何かを返そうと思ってくれるのならばこんなにも嬉しいことはない。
しかもそれがキバナの大好きな『えっちな下着姿のダンデ』を与えてくれるのなら、ハチャメチャにうれしい。
俺のためのえっちな姿なら堪能しないのは男が廃る。
あまりの嬉しさと興奮で自分がどこにいるのかも忘れたキバナは、たんぽぽを身に纏い、たんぽぽ畑に横たわる愛らしい最愛の自分だけのたんぽぽちゃんの、カップに寄せられてできた胸の谷間に思い切り顔を埋めた。
「ダンデだいすき♡世界一可愛い俺だけのたんぽぽちゃん♡」
「ふぁ♡だから、ここ、そとだからだめだ…!」
「ダンデ♡ダンデ♡」
柔らかなミルクテー色の肌にいくつも赤い花を咲かせば、ダンデが甘い吐息を漏らして身悶える。
こんなワイルドエリアの真ん中…健康的なたんぽぽ畑の真ん中で明るいうちから服を剥かれ、秘密裏に準備していたえっちな下着姿にされて、明るい日差しに照らされながらキバナの所有の印である花を咲かされて恥ずかしそうに身体をくねらせるダンデのいやらしいことよ。
「んんぅ…キバナ!やめてくれ!シたいなら家帰ろう?外は勘弁してくれ…!」
恥ずかしくてたまらないのか、真っ赤な顔をして身体を隠そうと脱がされた服を引っ張るダンデだけれど、その手にはあまり力が入っていないような…。
「大丈夫だって。あいつらが人が来ない様に見張っててくれてるみたいだしさ」
「だからって…こんな、昼間の…しかも外でなんか絶対だめ…」
だめといいつつ、うるうるさせて見上げてくるダンデは、ベッドの中でキバナを欲しがる時と全く同じ瞳をしていた。
なぁんだ、満更でもないんじゃん。
キバナに口づけられ、身体に触れられてスイッチが入ってしまったのに、恥ずかしさと欲望との狭間で揺れ動くダンデもとびきりえっちで愛らしい。
「だめじゃないくせに。さっきから抵抗してるようにみせて全然力入ってねぇけど?」
「う…」
「俺と今すぐえっちするの、満更でもないんじゃない?」
「ううっ…だって…ちゅーしたら…そういう気分に…なってしまったんだ…キバナのせいだぞ」
にんまり笑って身体を覆う花畑に触れるキバナの大きな手に、身体をぴくんと跳ねさせながらも羞恥が抜け切れずに恨めしそうに睨んでくる可愛い、可愛い、キバナだけのたんぽぽちゃん。
「俺のせいでいいから…もう黙って」
「んっ…♡」
もう一度口付ければ、キバナの服を掴んで強張っていた手から力が抜けるのを感じ、キバナは明るい太陽の下でよーく見える愛らしい格好の最愛の人を、余すところなく味わった。
「俺だけのたんぽぽちゃんの可愛い姿…じっくり見せてくれよ」
「ひぃん♡や、やっぱり恥ずかしいからここじゃだめだ…!きっきばなぁ…!!」
そして、外という場所により普段よりもそれはもう恥ずかしがるダンデが可愛すぎてどっぷりと辺りが暗くなるまでそれはもうねちねちじっくり可愛がることを止められなかったキバナは、陽が落ちて少し寒くなったせいで寒そうに肩を震わせたダンデを見てやっと止まってやることができたのだけれど。
ダメって言ったと怒るダンデに服を着せつつキバナが謝り倒していると、やっと終わった?と二人きりにしておいてくれた愛するパートナーたちも戻ってきてキバナに冷ややかな視線を浴びせる。
甘んじて責めを受けつつぎゅーっとダンデを抱きしめて離さないキバナの腕の中、キバナからのたっぷり特大級の愛情をこれでもかと注がれてなんだかんだ言いつつもダンデがふにゃりと幸せそうに笑っていたことは、咲き誇るたんぽぽだけがみていた。