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    1usaco1

    @1usaco1のらくがき置き場

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    1usaco1

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    ユリアシュのSS。
    フライングジューンブライドを考えようとして出来上がったのが、この暗いお話。

    《紅で粧して》「私は、お前の想いに応える気はないよ」

    ぶつかる度に何度も聞かされた、俺を強く突き放す言葉。
    それは冷たくて、寂しくて……とても、淋しい。

    「何でですか。俺が、先に死ぬからですか」
    「種族が違うんだ。共に居るべきではない」
    「種族が違うから何なんですか。俺はそんなこと、気にしません」
    「そもそも私は男だ。分かっているのか」
    「そんなこと分かってます。それでも、あなたと一緒に居たいって思ったんじゃないスか」
    「…………」
    「………………………」

    ああ言えば、こう言う。いつもそうだ。
    この人は分かりきっている建前の問題を並べ立てて、壁を作って、それ以上踏み込まれないように心を固く閉ざして。
    沈黙の中、小さく囁く「諦めてくれ」と。逸らした瞳は弱々しく揺れていた。
    くるりと背中を向け、扉に向かって歩き始める。
    逃したくない、今日こそ、お願い

    俺を、見て欲しい……!

    机の上、先程まで彼が使っていたペーパーナイフを手に取って、躊躇なく手首を引き裂いた。

    「……! お前!! 何をして」
    「俺の!! 俺の全てを、あなたに捧げます。だから……逃げないで」

    血の滲んだ手首を口元に近づける。固く閉ざした唇の奥、歯を食いしばる音が鳴って、弱々しかった瞳は、どくどくと鼓動に合わせて収縮を繰り返す。
    ああ、欲しい。あなたのその、俺を求める欲を剥き出しにした感情全て、しまわないで。

    「私は……お前が自由に駆け回る姿が、愛おしくてたまらない」
    「……はい」
    「だから、私に囚われて欲しくない………」
    「…………」
    「頼むから、私の傍に居ようとしないでくれ」

    震える声が、愛おしい。
    馬鹿な人だ。俺は囚われたりしない。俺は……自分で選んで、あなたと言う檻に飛び込みたい。

    「あなたが望むなら、俺はどこまででも自由に駆け回ります……けど、最期に還る場所は、あなたの元がいい」

    指先まで垂れた血で紅を引く。
    誘うように鼻を擦り付ければどちらからともなく唇が重なった。

    死がふたりを分かつまで、静寂の中、愛を誓い、愛を呪った。
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    1usaco1

    DONE2PのユリアシュのSS
    白ユーリ×青アッシュ
    白が青を拾ってから、結ばれる少し前くらいのお話。

    拾った経緯についてはpixivのサンプル参照
    https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=24561501
    《まだ知らない感情》 ページを捲る度に、ぎしりと革張りのソファーが小さく鳴く。背もたれと肘掛で体を支えて片手で持つには少々重たい厚みの本をピントの合う高さに合わせて、文字の海へ没頭する。
     数ページ読み進めて、ふぅと溜め息をついた。そんなに重いならテーブルを持ってくるなり机に移動するなりすればいい。出来るものならそうしたい。出来ないのだ。ちらりと膝に視線をやる。組んだ脚の上に頭を乗せて心地良さそうに眠る仔犬が、その原因であった。

     その日の朝早く、屋敷の門の前に置かれていたのは大きさの割にずっしりとした荷物。何が届いたかは検討がつく。薄い包装紙をぱりぱりと慣らして開けると、掠れた表紙が見えて、側面を見ればコーヒーが染みたような古びた色合いになった紙は、湿気を含んで歪んでいた。どうやら、偽物ではないようだと確信して口端を少し上げた姿を、音が気になって後ろから覗いた青年が見つめていた。それはロドが取り寄せた、吸血鬼に関する伝承を綴った本であった。
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