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    hsx_au

    @Ageha__akitu

    主に彰司と冬類のえっちいの載せてます

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    彰司Webオンリー「あきらめがつかない!」で展示した無料公開小説です。既にオンリーイベ終わったので、パスを外して公開します。全年齢なので誰でも見れます。写真家を目指す司と画家を目指す彰人のシリアス皆無な恋愛小説となります。是非ともご覧下さい

    あなたに捧げる向日葵(えがお)をこの手に季節は夏。オレ天馬司は今日から夏休みという最高の日常を謳歌しようと、色々計画を立てていた。というのも開いているのはスケジュール帳ではなく、自身が撮ってきた写真の数々だ

    オレは昔から父の影響で、写真を撮るのが大好きだった

    父は写真家で、よく仕事やプライベートで写真を撮ってきては、オレや妹に見せてくれた。一緒に撮りに行った日もあった。オレはそんな父が大好きで、いつもその背中を追いかけていた
    だがそんな父は、志半ばで病に倒れ、この世を去った。その日からだった。オレはよく遠くに行って、写真を撮り続けた。父のような綺麗な写真はまだ撮れないけど、それでもオレは写真を撮った。いつか天国にいる父に見せられるような最高の写真が撮りたくて、休みの日に、宿題が終わったその後に、色々な景色をカメラに収めた

    オレの夢は立派な写真家になって、父が撮れなかったものを撮る事だ。写真家になることは前々から決めていたけど、この夢は父を失ってから自分で立てた目標だったのだ。だからその夢が崩れぬよう、オレは腕を磨き続けた

    そして迎えた高校生になって最初の夏。この季節がオレは一番好きだ。夏は色々なものが移り変わるように撮れる。だからこの季節が来るのをずっと待っていたのだ。オレは今日やると決めた課題を終えて、カメラと財布、水分補給用のドリンクをカバンに入れて、外へと出た。外はとても清々しく、綺麗な青空が広がっていた。流石は夏だ。この綺麗な青空が撮れるのも、夏の良い所だ

    オレは家を出て暫く歩いた先にある小さな公園へと入った。最近は公園よりも広くて楽しいテーマパークが近くに出来たから、すっかり寂れてしまったが、オレはこの公園が昔から好きだから、ずっとここに通い続けてる。オレはすっかり古くなったブランコに座り、カバンから父が使っていたカメラを取り出し、写真を撮り始めた。囀る小鳥、風に靡く木々。そのどれもが美しく、等しく被写体となる。何枚か撮って、次の場所へと向かうか。そう心の中で決めながら写真を撮っていた時だった


    「…あの…!」


    突然話しかけられた。何か失礼でもしてしまったのだろうか。そう思い、ゆっくりと声が響いた方へと振り向いた

    絵の具で汚れた服。大量の画材道具が入ってるであろう大きめの鞄。そして左手には束ねられたスケッチブック。明らかに画家であることが分かるような服装の少年が立っていた。見た目的に自分と同じくらいだろうか。そう思いながらも、恐る恐るオレは彼に言葉を返した

    「…えっと…どうされましたか…?」
    「あの…いつもここで、写真撮ってる方ですよね?」
    「あー…そう、だが…」

    ここで写真を撮ってた事を知ってるなんて。もしかしてこの子もまた、オレに見えない位置で絵を描いていたのだろうか。そう思いながら言葉を返すと、思いがけない言葉を彼の口から聞くことになった

    「…その姿が、綺麗で、躍動感があって、ずっと描きたいと思ってたんです」
    「…それは…オレ、を?」
    「そう、あなたをです」

    どうかあなたを描かせてはくれませんか?


    オレは絶句した。まさか人生でそんなこと言われることになるとは思ってもなかったからだ。まさか自分が絵の被写体になるとは思いもしないだろう。しかも初対面の男の子に
    まぁ、特に怪しげでもなければ普通に純粋に絵を描いてるだけだろうし…全然いいだろう

    「ふむ、構わないぞ?そう言って貰えるのも嬉しいしな」
    「…!?ありがとう、ございます!」
    「…ただ、一個条件いいか?」
    「条件、ですか?」
    「あぁ、最高の写真が撮れるように、手伝いをして欲しい。というのも、実を言うと人を撮るのが苦手でな…」

    そう言うと、少年はゆっくりとこちらに近付いては、オレの隣へと座った。そしてしばらくしてから唇を開いた

    「いいですよ、あんま写真撮られるの好きじゃないけど、お願いしてる側ですし、フェアじゃないから。オレで良ければお手伝いします」

    少年はそう言いながら、手を差し出しながら、こう言った

    「オレ、東雲彰人。画家志望の、中学三年生です」
    「オレは天馬司。写真家志望の高校一年生だ。そうか、一個下だったのか。宜しくな、東雲」

    差し伸べられた手を取るように反対側の手を差し出し、ゆっくりと握った。少年ーーーー東雲も答えるように握り返す

    「苗字じゃなくて、名前で呼んでください。オレその方が嬉しいんで」
    「む?そうか?ならお前もオレの事は名前で呼ぶといい」

    オレがそう言うと、彰人は少し驚いた顔をするも、すぐににこやかな表情に戻り"宜しくお願いします、司センパイ"と返してくれた。少しくすぐったい気がしたが、まぁ歳上なのには変わりないからいいか。そう思いながら、オレもにこりと微笑んだ

    まずはお互いのことを知ろう、と他愛のない話をし始めたオレ達。そこで彰人の事を少しだが知ることが出来た

    彰人は有名な画家の息子で、自身も父に憧れて絵を描いていたそうだ。だがそれは趣味程度に留めていたらしく、最初は画家を目指すつもりはなかったらしい。だがある日、姉と父が言い合いをしている場面を見つけてしまったらしく、そこから更に起こった悲劇を機に、彼は画家を目指すことを決めたそうだ

    その内容を聞こうか悩んだが、駄目元で聞いてみた。すると彰人はポツリ、ポツリとだが、答えてくれた

    どうやらその言い合いの内容は、絵に関する事だったらしい。彼の姉もまた画家志望だったらしいが、父親に"お前には画家になれるような才能はない"と突っぱねられてしまったそうだ。どうやらそのお姉さんは、絵の学校がどれがいいのかを聞きたかったらしい。それなのに冷たくそう言われてしまい傷付いたからなのか、癇癪を起こしてしまったようだ。それが原因なのかなんなのか、お姉さんはそれから意気消沈してしまい、やがて何もしなくなってしまったそう。言わば植物状態らしいのだ

    他人が聞けば酷い話だ、と言えるが、その人が有名な画家なのであれば、技術で判断した上の発言なんだろうと、オレは理解出来た。出来たけれども…

    「…そのお父さん、もう少し言い方考えられなかったのか?」
    「…センパイの言ってること、分かりますよ。オレもそう思いましたから」

    彰人は溜息を吐きながら、こう続けた

    「親父の言ってることは分かる。才能のないやつは這い上がるのを覚悟に努力を重ねなきゃならねぇ。正直オレの姉がそれに耐えられる精神をしてるかなんて、家族からしたら一目瞭然だ。親父に突っぱねられて、意気消沈して、植物状態になるんだ。アイツにそれを受け止める覚悟はなかったということ。だけどさ…そんなになるくらいまで言わなくても良かっただろって、オレも思った。オレの親父、言葉選ばないから。それはオレも一緒だけど…姉は今も入院したまま。目が覚める気配はない。それを見たオレは親父を責めたよ。お袋も責めてた。親父も自分を責めた。あんな言い方しなければ良かったって。嫌いで言ったわけじゃない。ただ画家として言った言葉。だけどその一言が姉を傷付けて、あんな風になるまで追い込んだ。オレはその日から親父と会話を交わしてない。そしてその日からオレは画家になる事を決めたんです。いつかデカいコンクールに絵を出展して、金賞取って、親父を見返してやるって」

    彰人は真剣な表情で語った。なるほど、そういうことか。つまるところ彼は、自分の為に、そのお姉さんの為に、そして何より父親を見返してやる為に、絵を描き続けてるということか。実際に賞は幾つか取ってるらしいが、そこで満足はしてないらしい。まぁ、芸術は探究心があってこそだからな。ジャンルは違えど、オレも芸術のみちに属する者だ。気持ちはよくわかる

    「そうだったのか…だがスケッチブックを見ればわかる。お前には相当な才能があるみたいだな。だが才能以外にも努力が見える。これなんかそうだ。同じ猫の絵だが、一つ一つのタッチが違う。生半可な気持ちでその世界に居ないってことは伝わってくるぞ」
    「それを言うならセンパイだって。この写真なんて、きちんと主役が映えるように撮られてる。ほんとに写真が好きなんだなって思える。でもなんでセンパイは写真を撮り始めたんですか?」
    「…オレはな…色々複雑なんだ。こう見えても」
    「オレは理解して欲しくてあそこまで話しましたけど…無理に話さなくていいですよ。何でも話せる仲でもないんですから、オレ達は」
    「それもそうだな…もう少し仲良くなったら話してやる。すまないな」

    オレは少し眉を落としながら呟く。すると彰人は慰めるように首を横に振った

    「いいんですよ。オレもかなり重い話ぶっ込んだのもいけなかったし。それよりも先のこと考えましょ!最高の写真と絵、完成させないとですし」

    それもそうだな、とオレは微笑んだ。今はそんなことは置いておこう。きっと話す日が来るかもしれないから


    という感じで、その日から、オレと彰人の共同作業が始まった


    夏休みは長い。少なくともオレのところはそうだ。彰人は中学生だし、受験生だから勉強もしないといけない部分もあるだろうが、それはオレが面倒を見てやろうと思った。少なくともオレは勉強は出来る方なので

    どうやら彰人は勉強が苦手のようだ。連絡先を交換し合った後にやり取りをしてて、たまに課題が終わらないと入れてくることがあるから、相当苦手らしい。詳しく話を聞けば、テストの点が取れなさ過ぎて、補習を受けたこともあったそうだ。まぁ…なんか、だいたい想像は出来たが…

    それでも、とても楽しい日常を送った。一日交代で、毎日会って、オレ達はそれぞれの目標を達成しようと切磋琢磨した。たまにお休みして、夏休みの勉強をしたりした。オレは一日の目標を立ててたので最初の方でほとんど終わらせてたが、前述の通り、彰人は遅れていた。なのでオレが勉強の面倒を見る日も作った。解き方などを教えてやったり、色々した。その間も他愛のない話をしたりと、実に有意義な夏休みを送っていた

    彰人はカッコイイし可愛い。そして歌が上手い。この間休憩と題して行ったカラオケで歌ってる姿がとてもかっこよかったし、何より上手かった。その姿を素直に褒めたら、恥ずかしそうに"ま…まぁ…趣味程度ですけど…歌も極めてるんで…"と微かに頬を朱に染めながらそう言った。その姿はとても可愛かった(その後オレも歌ったけど、ひたすら"可愛いし上手い"としか言われなかった。何故だ)

    そんな彰人と送る日常は、とても楽しかった。夏休みで終わらせるのは勿体ないから、お互いの目標が達成しても仲良くしよう。彰人からそう言ってくれたのも嬉しかった。まぁ、ちょっと悪戯っ子なのが玉に瑕だが

    それでも、なんだかんだとても可愛がりがいのある後輩だ。予想以上に懐いてくれたし、まぁ、たまに文句は言われるけど。声がうるさいとか、なんだとか。それはあるけど、それ以上に、オレを描いてる時の彰人が物凄く好きだ。真剣なのが伝わってくるし、何よりその時の表情は、本物の画家だ

    そんな彰人に、オレは恋をした。だが男同士であり、彼は夢を追いかける人。この想いはきっと邪魔になる。だから永遠に閉じ込めようと決めた。悟らせないようにしようとも決めた

    そう決めた次の日。この日は彰人のターンだったので、オレは彼に言われるがままのポーズをとった

    「…」

    オレはなるべく動かないように、黙って彰人に言われた先を見つめる。その先は青空が広がっており、とても綺麗だ。太陽もオレを照らしてくるため、とても暑い…が、被写体になってるオレが動く訳にはいかないので、じっとしていた

    「…ほんとに、綺麗だ。オレの思った通り」

    ポツリと、彰人がそう呟いたのが聞こえた。オレは気になって、動かないまま聞き返してしまった

    「ん?何がだ?」
    「アンタが、ですよ。オレが想像してた通り、いや、それ以上のモデルですよ。初めて描く人間が、アンタで良かった」

    手を動かしながら、眉一つ動かさずに、彰人がそう語る。オレ自身、褒められるのはとても嬉しいので何か返そうかと思ったが、何故か恥ずかしくなってしまった。そんな真っ向から褒められたことなどなかったからだ
    確かに容姿を褒められる事は多かった。だけどそんな頻繁でもない。顔が良い人間など、この世には沢山いるから。そう、目の前にいる彼みたいな。というか…初めて描く人間、と言ったか?もしかして、今まで人を描いたことないのか?

    「な…なんか恥ずかしいな…というか、初めて描く人間?まさか今までヒトを書いたことがないのか?」
    「ないですよ。というか、上手く描けない気がしたから、今まで風景とかしか描いてこなかったんです」
    「…な、なるほど…」
    「でも、アンタは描きたくなったんです。というか描かないとって思った。初めてだよ、そんなふうに思ったの」

    そう言いながら彰人は筆を止めて、オレの近くまで来た。沢山の絵の具に汚れた手と顔をオレに近付けてくるので、オレは思わず彰人の方を向いてしまった

    視線と視線が合う。彼の綺麗な瞳が、オレの瞳を捉えて離さない。その呪縛に捕らわれるかのように、オレは彼から目線を反らすことが出来なかった。ゆっくりと顔が近付き、スレスレのところで止まった。きっとオレの顔は、誰にも見せられないくらい恥ずかしがってる顔をしてるのだろう。頬もきっと赤いに違いない

    「きっとそれは、アンタに恋をしたから」

    彼の唇から零れた言葉が、オレの心に深く刺さった。え、まさか、そんな、ことが、?

    「信じられないかもしれないし、男同士って思うかもしれない。けどオレはずっと、アンタに惹かれてました」

    あの公園で写真を撮り続けるアンタが眩しくて、綺麗で、凄く真剣だった。その姿に惹かれた。描きたいと思った

    「好きです、センパイ。どうしようもなく好きなんです。どうかアンタの夢、一緒に追わせて欲しい。ずっとその隣にオレを置いて欲しい」
    「あ、きと…」

    この目は本気だ。たった数週間だが、それなりに深く関わってきたオレならわかる。この目は本気の時の目だ。この男は本能で、そして本気で、オレを欲している。それに抗うことなんて、出来ない。だって、オレも…同じだから

    「…ありが、とう…彰人。オレも、好きだ。この絵の具まみれの手も、絵を描く時に浮かべる表情も、歌声も、全部好き、でも…彰人はそんな前からオレの事好いてくれてたんだな、嬉しいぞ」

    ゆっくりと、彰人の手に自身のを重ねる。彰人は少し驚いていたが、すぐに元の表情へと戻った。ふわりと笑いながら、ゆっくりと額と額をくっつけてきた

    「嬉しい。オレ達両思いなんですね。めちゃくちゃ嬉しい」
    「オレもだ。凄い、満たされた気持ちだ」

    オレはそう言いながら、瞳に涙を滲ませた。本当に、嬉しい。こんな事が起こって本当にいいのだろうか。こんな幸せもらっていいのだろうか

    そのままの状態で、彰人がオレの唇に自身のを重ねた。オレはそれを受け入れた。しばらく触れ合っていただけの唇は、やがて深みに入るように舌と舌が絡み始めた

    …その日は絵なんてそっちのけで、ただただ触れ合っていた


    それから、オレと彰人の生活は変わった
    毎日会って、お互いの目標を達成するのは勿論のこと、そこにデートが追加された。出来る限りで行ける場所に、二人で行った。そこでちょっとした口喧嘩をすることもあったけど、それでも最後には仲直りして、笑い合った

    とても充実した夏休みを送ってると、自分でも思っている。彰人と会ってから毎日が楽しい。これらはきっと彼が教えてくれたことだ。彼とだったらどんな困難も乗り越えられる。そうオレは確信していた

    彰人の勉強も見ながら目標に向かって突き進んでるとき、ついに彰人の方で進展があった

    「司、司!コレ見てくれ!」
    「ん?これは…?」
    「ここら辺で一番デカいコンクールだよ!レベルの高いヤツらが多く出展するって有名な!しかもお題は自由!今日参加希望出したんだ。作品は今描いてる絵を出そうと思ってる」
    「凄いな!そこで金賞なんて取れたらもっと凄いぞ!!頑張れ!!」

    オレはそう言ったあと、彰人はこう呟いた

    「…これで、もし、金賞取れたら、絵名に見せようと思うんだ」
    「それがいいだろうな…お前の希望だもんな」
    「…気付いてくれるかな」
    「気付いてくれるさ。憎まれ口を言っても、お前の大事な姉なんだから」
    「そうだといいな…」

    珍しく弱気な彰人の背中を押すように、オレはゆっくりと彰人に抱きついた。一年違えど背丈は彼の方が大きい為、腰周りに腕を回して、擦り寄るようにオレは彰人に抱きつく。彰人はそんなオレの頭を優しく撫でながら"ありがとう…"と言ってくれた

    オレはゆっくりと彰人から離れた後、よく使ってる古いカメラを取り出し、ポツポツと語り始めた。それはオレの昔の話。オレが写真家を目指すことになった本当のきっかけ

    「このカメラ、よく見てるから分かるだろ?これ元々は父親のなんだ。死んだ父親がオレに託してくれたカメラなんだ」
    「そうだったんですか…」
    「実はな、オレ、両親どっちもいないんだ。母親は妹が幼い時に病気で亡くなって、それから父親が一人でオレと妹を育ててくれたんだ。このカメラを持って風景とかを撮りに行ったり、時には危険な場所にまで行った。そうして撮れた写真はみんなオレ達を養うためのお金に変えられていった。オレの父親は有名な写真家だ。テレビや雑誌にも多く取り上げられたくらいには有名だ。だからうちには多くのお金がある。それらは全て父がオレ達にって残してくれたお金だ。そのお金は少しずつ、大切に使ってる。沢山の写真を残した父だけど、唯一苦手にしてるものがあった。それは人を被写体にした写真だ。それだけは父さん、凄く苦手にしてた。そんな父に言われたんだ」


    『司、このカメラをお前に託す。お前なら十分使いこなせるだろう。お前達を残して先に逝く事を許してくれ。いつか最高の写真が撮れたら、オレの墓前にでも見せに来てくれ。父さんいつでも待ってるぞ』


    ポタ、ポタ、と…オレの瞳から雫が溢れる。嗚咽を零しながらも、オレは話を続けた

    「その言葉を残して、父はこの世を去った。オレは残されたカメラの中を見た。そこにあったのは仕事用で撮ってた写真なんかじゃなくて、オレや妹を写した物が多くあった。苦手だって言ってたのに…まるで…成長日記のように…それを見たあと、オレは写真家になる事を決めたんだ…そして、父さんみたいになるんだって…人を被写体にした写真を…最高の写真を撮ってやるんだって…でも…でも…中々それが上手くいかなくて…未だに父に見せられないのが腹立たしくて…父が死んだあと、オレ達は奇異の目で見られた。誰もが父が残した財産に目をつけた。それが怖くて、毎晩妹と怯えてた。誰もが敵だった。信用出来なかった。怖い、怖いんだ、今も誰かに狙われてるかもしれない、奪われるかもしれない。母さんも奪われて、父さんも奪われて、妹までも奪われるなんてことがあったら…オレはそんなの耐えられない…!」

    涙を流しながらそう言った瞬間、彰人に後ろから抱きしめられた。優しく頭を撫でながら、彰人はこう言ってくれた

    「司、大丈夫。今そんなことするやつ居たとしても、何とかしてやるよ。怖くなることなんかない。もう何も奪わせねぇよ」

    だから泣くな。オレは司の笑顔が好きだから。泣いてる顔は見たくない


    そう言われた瞬間、オレは大粒の涙を零しながら泣き続けた。その間も、彰人は静かに頭を撫でながら傍に居てくれた


    今までこんなこと誰にも話したことは無かった。いざ話すとなった時、拒まれるのも怖かった。笑われるのも怖かった。けれどそれは杞憂に終わった。彰人はそれでもオレの傍にいてくれた。それが何よりも嬉しかった


    だから絶対、彼ならいい賞が取れる。オレも最高の写真を撮る事が出来る。そう確信した日だった


    そんな事があり、月日が流れていった日のこと。彰人の絵がついに完成した

    「…よっし!完成!!!!!」
    「おぉ!!いい絵だな!!」
    「当たり前だろ、モデルが良いんだからいい絵になるのは当たり前だろ?」
    「お前の腕もあるだろ?」
    「とーぜん!」

    そう言いながら、無邪気な笑顔で彰人は作品の完成を喜んだ。そんな彰人を、オレはカメラに収めた。彰人はそれに恥ずかしがりながらも"いい感じに撮れたか?"と聞いてきたので、オレはこう答えた


    「あぁ、最高の写真だ。オレはこういうのが撮りたかった」



    その後、彰人はその絵をコンクールに出展し、見事金賞を獲得した。そしてその報告を入院中のお姉さんに報告しにいった。最初は反応すらしなかったのに、段々と指を動かしたり反応を示すようになり、最終的にはゆっくりと意識を取り戻した。彰人はそれを見れば涙を流し、憎まれ口を叩きながらも喜んでいた。その姿が凄く嬉しくもあり、ちょっぴり羨ましかった

    オレ達は互いの目標を達成はしたが、それでも交流は絶えなかった。それもそうだ。オレ達は恋人同士なんだから。そのあと、彰人は美術系の高校に進学すると思いきや、まさかのオレが通ってる高校へと志望したらしい。その為に猛勉強してると、メッセージが来た。たまにオレが勉強を教えに行ったりと、あの日とはまた違う日常を、オレ達は共に送っていた


    なぁ、彰人。あの時お前がオレに話しかけてくれなかったら、今の日常は絶対になかったよ。オレも最高の写真を撮ることなんか出来なかったし、彰人も金賞なんて取れなかっただろう。だからあの時のお前に感謝したい。勇気を出して声を掛けてくれてありがとう


    オレの未来はお前のものだ。だって、今のオレがあるのはお前のおかげなんだから



    『何見てんだ?』
    『ん?あの日撮った写真と絵だ』
    『あー、あの日のか。懐かしいな、てかもう…この日から八年も経ったんだな』
    『そうだな…本気でオレと同じ高校に入学してきた時は心底驚いたがな。お前はてっきり芸術科のある高校に行くのかと思ってたから』
    『最初から専門学校に行く予定だったから、せめて高校は普通のところに行きたかったんだよ。あんまり詰め込みすぎても、だろ?それに画塾も近くにあったし、それで高校通ってる間はどうにかしてやろうと思ったから』
    『そうだったんだな、だから部活には入らなかったのか』
    『まぁ、美術部に幽霊同然で入ってはいたけどな。司は写真部に入ってたんだろ?』
    『まぁ、写真部と新聞部兼用みたいなものだったけどな。あの時にも説明したけど、新聞書く人と写真撮る人に分かれてて、オレは写真撮る側だったからな。まぁほとんどオレのしか採用されなかったが』
    『お前の腕はその頃からプロ並みだったからな』
    『恥ずかしいな』
    『…にしてもさ、ここから八年も変わらず傍にいてくれてんのか…なんか、よく考えたら嬉しいもんだな』
    『それはオレも同じだ。それぞれ本当の夢を叶えたからこそ、共に居られるんだと思うがな』
    『じゃあ…この手がしわくちゃになる前に、司の事描かないとな。また描かせてくれよ、ありのままのお前を』
    『じゃあ彰人も、また撮らせてくれ。オレの手がしわくちゃになる前に』



    なぁ、彰人、大好きだ




    ーーーーオレは愛してるよ、司




    これからも、一緒にいような
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