ソファに座っていた九門に、キッチンから十座が声を掛ける。
「九門、シュークリーム食わねぇか? 一つ残ってるんだが」
「いいの? 食べる食べる、ちょうどお腹すいてたんだ〜。 あ、でもシュークリームって生クリームが入ってるのが多いよね。それだと俺、食べられないし……」
「いや、大丈夫だ。これはカスタードクリームしか入ってねぇ」
兄が好きなものを否定したくないと、九門はずっと十座には生クリームが苦手なことを隠していた。だが九門が認めてからは、弟に苦手なものを食べさせるわけにはいかないと、逆に十座の方が菓子に使われている材料を気にするようになっている。
「兄ちゃんも食べたの?」
「ああ。さっき生クリームだけのと、生クリームとカスタードが合わさったのを食った」
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