シャワー 土砂降りが、浴室から聞こえてくる。
ファングは、僕を抱いた後、僕が寝てからシャワーを浴びる。気を遣ってるのか、一人になりたいのか、ナニカを洗い流したいのかは分からない。聞く気もない。僕は、寝たふりをしてそれを待つ。
「起きてたのか」
「んーん。寝てたよ」
「嘘つけ」
彼には何でもお見通し。それでも僕は嘘をつく。枕の下に忍び込ませていたチョコレートを食べながら、ファングに腕を伸ばした。
「一人で寂しかった」
「嘘つけ」
ビターなキスをひとつ。せっかく綺麗になったファングの唇をぺろりと舐めて汚す。
「ファングは? 寂しくなかった?」
「バカ言え、たかがシャワーくらいで」
「だって、シャワーの音って、なんだか物悲しいじゃない」
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