おいつづける。「.......それで、どうして1人で突っ込んでいったんだ」
「いや~、行けると思ったんだって!」
懲戒チームメインルーム。俺はいつもの通り、ケガをしたジュリアンの手当てをしていた。
「いつも言ってるだろ、俺が守るから無茶するなって」
「無茶じゃないって。私が一番近くにいたんだから、私が行くのが最善だったでしょ」
「だとしても、1人で行く必要はなかっただろ。なんで俺や他からの増援を呼ばなかったんだ。1人で無理に鎮圧するのがチーフ様の最善手だったとでも?」
「そういうことじゃないって。1人で行ける量だと思ったから呼ばなかっただけ!」
「ていうかどんだけ大ケガしたって、リアクターが動いてれば死なないし。アンタが心配しすぎなだけじゃない?」
「…は」
思わず手当をする手をとめ、顔を上げる。何でもないような顔をするジュリアンと目が合った。
「え、なに」
「……お前は」
「お前は。どうしていつも自分の身を大事にしないんだ」
「...え、だって死ななければそれでじゅうぶ_」
「どうして、1人で先に行ってしまうんだ。こっちの気も知らずに、俺が」
「俺が毎回どんな気持ちで手当してるかも知らずに」
包帯を巻く手に力がこもる。じわじわと、包帯に血が滲む。薬が染みるのに文句をいうジュリアンを無視して、話を続ける。
「ちょ、痛い、痛いってば」
「俺たちはいつ死ぬかも分からないのに。再生リアクターだって完璧じゃないんだ。回復が間に合わなければ、あと一撃喰らっていれば死んでいたかもしれないのに。どうしてお前はそんなに平気でいられるんだ」
「もちろん俺はお前を死なせる気はないし、何かあったら真っ先に行くつもりだよ。それでも間に合わない事だってあるかもしれない。そうしたら、俺は」
「なぁ、お願いだからもっと俺を頼ってくれないか」
「お前が死んだら、俺は___」
「ちょ、わかった、分かったから!分かったから、離して!痛いってば」
気が付いたら、ジュリアンの腕を強く掴んでしまっていたらしい。腕には傷跡のほかにうっすらと赤いあとが残ってしまっていた。はっとして、すぐに手を離す。
「……ごめん、」
「ううん、大丈夫」
あはは、と笑う姿に安心と、どうしようもない不安が渦巻く。今日は大丈夫だったけど、明日はそうじゃないかもしれない。また、自分のせいで大切な人を失ってしまうのかもしれない。分かっているが、もしものことを考えずにはいられなかった。
「だーいじょうぶ、大丈夫だよ。アンタがいるうちは、私は死なないと思うからさ」
「思う、じゃなくて死なないっていう断言がほしいんだよ」
「え~、いつ死ぬかわかんないって言ったのはそっちでしょ!」
「だから、極力死なない努力をしろって何度も」
「あー分かった!分かったから!」
「大丈夫だよ、本当にマズいと思ったらその時はちゃんとアンタのこと呼ぶから」
「……はぁ。本当に、お前はいつも、」
心臓に悪すぎる。その一言が口から出ることはなかった。結局コイツが反省しているとは思えないが。……まぁ、「何か」が起こる前に俺が何とかすればそれでいい。ただそれだけの話だ。